呼吸の基本とは?
息を吸って吐いて……。昼間も、夜寝ているときも、私たちが無意識に行っている呼吸。そんな呼吸の基本から見てみましょう。
なぜ私たちは息をするのか?
そもそも、なぜ私たちは呼吸をしなければならないでしょうか。その理由のひとつが、酸素を得ること。
酸素を取り込むと、それが体内でエネルギーを作り出します。そして、からだの中で生まれた二酸化炭素をからだの外に吐き出しているのです。つまり、「酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出する」ことが、呼吸で行っているガス交換なのです。
呼吸の種類: 浅呼吸と深呼吸
呼吸と言っても、ゆっくり息を吸って、ゆっくり息を吐き出す「深呼吸」と、逆に短時間で吸うと吐くを繰り返す浅い呼吸があります。
その違いは、からだに取り込める酸素の量。深呼吸すると、空気をいっぱいからだに取り入れていることが実感できるでしょう。それに対して、浅い呼吸では十分な酸素をからだにとりこめないという違いがあります。
また深呼吸すると、心身がリラックスしたり、血管が広がって血流がよくなったりと、からだにとっていいことが多いのです。だからこそ、浅い呼吸よりも深い呼吸がいいと言われているのです。
胸式呼吸と腹式呼吸
また、呼吸方法にも「胸式呼吸」と「腹式呼吸」の2つの種類があります。
肺は、心臓のように筋肉がないため、自分でふくらんだりしぼんだりすることができません。そこで、胸のまわりの筋肉を使って肺を膨らませる呼吸方法が胸式呼吸。これは、ふだん私たちが行っている呼吸方法です。
それに対して、肺の下にある横隔膜を上下させて呼吸するのが腹式呼吸。腹式呼吸は、意識しなければ行うのが難しい呼吸法です。腹式呼吸を行うと、リラックス効果があり、便通の改善や代謝の向上などのメリットがあることが知られています。
鼻呼吸と口呼吸
本来、呼吸は鼻で行うもので「鼻呼吸」が基本です。でも、口で行うのが「口呼吸」。
鼻の中には鼻毛があり、それがフィルターの役目をはたして、外から侵入する花粉、ホコリ、細菌などをブロックしてくれるのです。ですが、口で呼吸するとそのようなブロックがされないし、口から呼吸して口内が乾燥すると、細菌などが繁殖しやすい状態になってしまいます。口呼吸は虫歯や口臭の原因にもなりやすいと言われているのです。ところが、現代では口呼吸の人が多くなっていると言われています。
呼吸の仕組み: 体の中で何が起こっているの?
酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出している呼吸。では、酸素と二酸化炭素はからだの中でどうなっているのでしょうか? 呼吸に関わるからだの器官について見てみましょう。
鼻と口: 入り口と出口
基本の呼吸は、鼻を使ったもの。鼻から息を吸って、鼻から息を吐きます。口を閉じた状態でも息が苦しくならないのは、そんな鼻を使った呼吸を行っている証拠です。
ただ最近では、口も使って呼吸する人が増えていると言われています。口呼吸は、細菌やウイルスなどの外的を直接からだに取り込んでしまうリスクがあります。
肺: 呼吸のメインステージ
呼吸を行っているメインの器官が、肺です。肺は、空気中から取り込んだ酸素を体内に取り入れて、逆に体内で出た二酸化炭素を外に出す働きがあります。肺は、左右の胸に1つずつあり、2つあわせて500gほどの大きさです。
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気管と気管支: 空気の道
気管は、のどの奥から続く約10㎝ほどの半円筒状の管。この管は、心臓の後ろあたりで左右の気管支にわかれます。2つの気管支は、さらに細かく枝分かれして、肺胞(はいほう)につながります。
鼻から吸った空気は、気管と気管支を通って肺まで流れていき、二酸化炭素もここを通って、体外に排出されます。つまり、気管と気管支は呼吸するときの空気の通り道になっているのです。
肺胞: 酸素と二酸化炭素の交換所
気管支が枝分かれした先には、肺胞がついています。肺胞とは、ブドウの房のようになった小さな袋のこと。1つの肺胞の大きさは、1㎜の10分の1ほど。そんな小さな肺胞が、肺の中には3億から6億個ほどあると言われています。
そして、肺胞には毛細血管が網目のようにはりめぐらされていて、肺まで到達した酸素は、この毛細血管の中の血液に取り込まれて体内に運ばれているのです。二酸化炭素も同じように、血液中にのって運ばれて肺胞を通じて、体外に排出されます。
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なぜ呼吸は生命にとって必要なのか?
水中にもぐって息ができないと、すぐに苦しくなってしまいますよね。なぜ私たちは呼吸が必要なのでしょうか?
酸素: 体のエネルギー源
呼吸で大切なのは、空気中にある酸素をからだに取り込むこと。では、なぜ酸素が必要なのでしょうか? それは、食事でとりこんだ食べ物をエネルギーにするため。
食べ物はからだの中で消化されて、吸収されやすい栄養素になります。エネルギー源となる栄養素はブドウ糖で、このブドウ糖などの栄養素は、酸素と結びついてはじめてエネルギーになるのです。
二酸化炭素: 廃棄物の排除
エネルギーを作るために必要となる酸素ですが、その後には二酸化炭素が生まれるのです。二酸化炭素は体内にそのままあると、からだにとって有害。そこで、生まれた二酸化炭素を呼吸でからだの外に吐き出しているのです。
呼吸と健康: 正しい呼吸の方法
私たちが生きていくのに、必要不可欠な呼吸。せっかくなら効率的に酸素を取り入れて、健康になっていきたいですよね。ここで正しい呼吸方法について確認してみましょう。
深呼吸の効果と方法
私たちが始めやすい正しい呼吸方法には、深呼吸があります。大きく息を吸って、大きく息を吐き出す。そのシンプルな行為だけで、心身がリラックスできる効果があります。
息を吸ったら、吸い込んだ息をお腹に入れるイメージでお腹を膨らませて、吐き出すときにはお腹をへこませるようにしてみましょう。これが腹式呼吸になります。
お腹に手をそえて、お腹がふくらんだりへっこんだりするのを確認しながら行うとやりやすいですよ。そして「吸って、吐いて」という行為に集中していくと、頭の中の雑念が消えていき、自然と瞑想(マインドフルネス)を行うことができます。
深呼吸は、場所を問わずどこでもできますから、思い出したときに行ってみるといいでしょう。
呼吸を整えるための簡単なエクササイズ
また、呼吸を整えるエクササイズもあります。簡単なのは、息を吸いながら両肩を上に上げ、息を吐きながら肩を後ろの方向にぐるっと大きく回すストレッチ。「吸って、吐いて」という呼吸のタイミングにあわせて、ゆっくり何度か繰り返してみましょう。自然と肩の力が抜けて、呼吸も整えられますよ。
私たちを支える「呼吸」の大切さ
私たちのからだの中で、呼吸を通して、いつも行われている酸素と二酸化炭素のガス交換。息を止めるとすぐに苦しくなるのは、体内で生まれた二酸化炭素を外に吐き出したくなるからと言われています。もちろん、酸素を体内に取り込む必要もあります。
また、呼吸の仕方を変えるだけで健康効果が上がるなど、うれしいメリットも多くあります。ふだん無意識で行っている呼吸について、1日に1度など、あらためて見直してみることも大切かもしれませんね。
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文・構成/HugKum編集部