「人事を尽くして天命を待つ」はどんなシーンで使う?「果報は寝て待て」との比較、意味や語源、英語表現まで解説!

座右の銘やマンガ・アニメのセリフとしても耳にすることがある「人事を尽くして天命を待つ」という言葉。どんな意味を持ち、どんなシーンで使えるか、正しく把握できていますか? 今回は「人事を尽くして天命を待つ」の意味や語源、使い方の例文、関連語までを解説していきます。

「人事を尽くして天命を待つ」とは?

まずは、「人事を尽くして天命を待つ」の読み方と意味をチェックしていきましょう。

読み方と意味

この言葉は、「人事を尽くして天命を待つ」と書いて「じんじをつくしててんめいをまつ」と読みます。

人間ができる限りのことをすべてやり尽くしたら、あとは運命にまかせること」を意味します。努力を重ねてきた自分自身をねぎらったり、試験などの結果を待つ相手を励ましたりするシーンで用いられることが多い表現です。

語源は中国の儒学者・胡寅による著作の一文

「人事を尽くして天命を待つ」の由来は、中国南宋初期の儒学者・胡寅(こいん)による著作「読史管見(とくしかんけん)」であると言われます。

本書内には、東晋王朝時代の中国に異民族が攻めてきた際に、将軍の謝安(しゃあん)ができる限りの作戦を全うした結果、異民族の撃退に成功したという描写があります。全力を尽くした謝安の姿が「人事を尽くして天命に聴(まか)す」と言い表されており、この一文が「人事を尽くして天命を待つ」の元になったと考えられています。

使い方を例文でチェック!

では、実際には「人事を尽くして天命を待つ」はどのように使うことができるのでしょうか。例文を通して使い方をチェックしていきましょう。

1:できるだけのことは全てやってきた。試験を終えた今、【人事を尽くして天命を待つ】というように、後はただ結果を待つだけだ。

自分の全力を尽くしたものの、結果がどう転ぶかわからない状況ってありますよね。そんな際に、自分をねぎらうようなニュアンスで使えるのが「人事を尽くして天命を待つ」。全力を尽くすことにこそ意味がある、といった意味合いも含むことができます。

2:結果は誰にもわからないが、君はここまでたくさんの努力を重ねてきたのだから、あとは結果を待つだけだ。まさに【人事を尽くして天命を待つ】だよ。

「人事を尽くして天命を待つ」は、自分自身だけでなく、他人を励ますときにも使われる言葉です。ベストを尽くした試験後に不安がっている方が近くにいたら、こう声をかけてみてはいかがでしょうか。

3:【人事を尽くして天命を待てる】ように、最後まで気を抜かずに頑張りきろう。

「人事を尽くして天命を待つ」は、このように、自分の決意表明のようなニュアンスで使うこともできます。もちろん、チームや仲間と励まし合う際に用いてもOK。

類語や言い換え表現は?

「人事を尽くして天命を待つ」には、類語と呼べる表現も存在します。ここでは、言い換えに使える類語をご紹介。

1:果報は寝て待て(かほうはねてまて)

「人事を尽くして天命を待つ」の代表的な類語としては、まず「果報は寝て待て」が挙げられます。「良い報せは人間の力ではどうすることもできないから、焦らずに待っていれば良い」という意味のことわざです。

「幸運はただ寝ていればやってくる」と捉えられやすいことわざですが、「果報」とは仏教用語で「前世での行いによって、現世で受ける報い」の意であり、「自分の行いに対する結果」を指します。自分の行いに対して「やるだけやったのだから、その努力の結果は寝て待つだけ」とねぎらうニュアンスがあり、「人事を尽くして天命を待つ」の言い換え表現として使うことが可能です。

2:運を天に任せる(うんをてんにまかせる)

「運を天に任せる」とは、「成り行きは天に任せる」ことを意味する言葉です。成り行きを運命に委ねている点においては「人事を尽くして天命を待つ」と同じ意味を持つ類語と言えます。

しかしながら、「自分の力を尽くす」というニュアンスは含まれないので要注意。

3:能事畢る(のうじおわる)

「自分のなすべきことを全て終わらせた状態」を表す「能事畢る」。「人事を尽くして天命を待つ」と同様に、やることを終わらせて結果を待つだけの状況でも使えますが、言葉そのものに「待つ」ニュアンスは含まれません。

対義語は?

「人事を尽くして天命を待つ」の反対の意味を言い表したい場合には、どのような言葉を使えば良いのでしょうか。対義語にあたる表現を探してみました。

1:棚からぼたもち(たなからぼたもち)

「予想もしなかった幸運が偶然訪れること」を、棚からぼたもちが落ちて下で寝ている人の口に入った様子に喩えた「棚からぼたもち」。努力とは無縁の状況で幸運を手に入れるというニュアンスがあるため、「人事を尽くして天命を待つ」とは対照的な言葉と言えます。

2:運を待つは死を待つに等し(うんをまつはしをまつにひとし)

「運を待つは死を待つに等し」とは、「何もせずに幸運が訪れるのを待つことは、自らの死を待つことに等しい」という意味の言葉です。自分の力を尽くしつつもことの成り行きを運命に委ねるニュアンスを持つ「人事を尽くして天命を待つ」とは、待つことを奨めていない点において、反対の意味を持つ言葉と言えます。

3:蒔かぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ)

「蒔かぬ種は生えぬ」とは、「原因がないのに結果が生じることはないこと」を、蒔いていない種は生えないことにたとえたことわざです。「努力もせずに良い結果を待つことは無駄」というニュアンスがあるので、「人事を尽くして天命を待つ」とは反対の意味を持つ言葉として覚えておきましょう。

英語表現は?

最後に、「人事を尽くして天命を待つ」の英語表現もチェックしておきましょう。

1:God helps those who help themselves.

“God helps those who help themselves.”は、「天は自ら助くる者を助く」と訳せる英語のことわざです。「神は自分自身で努力する人に手を差し伸べる」という意味があり、「人事を尽くして天命を待つ」と近い英語表現といえます。人に頼る前に、まずは自分の力で努力しようという戒めのニュアンスがあります。

2:Do the best you can and leave the rest to God.

“Do the best you can and leave the rest to God.”は「ベストを尽くして、残りは神に委ねよう」と直訳できることわざです。「人事を尽くして天命を待つ」とほぼ同義の言葉といえるのではないでしょうか。

努力をし尽くした人をねぎらったり、励ましたりできる言葉

今回は、「人事を尽くして天命を待つ」の意味や語源、使い方、関連語をご紹介してきました。

ここまでお伝えしてきたとおり、「人事を尽くして天命を待つ」は、努力をし尽くした人をねぎらったり、励ましたりする際に用いられる言葉です。全力で挑んだ受験や試験の結果待ちをしている人が近くにいたら、この言葉を投げかけてみては。

あなたにはこちらもおすすめ

ことわざ「石の上にも三年」は誤用に注意! 「なぜ三年?」の由来や同義語、対義語、英語表現までご紹介
「石の上にも三年」とは? まずは、『石の上にも三年』の意味をおさらいしておきましょう。 読み方と意味 このことわざは、『石の上にも三年...

文・構成/羽吹理美

編集部おすすめ

関連記事