12月の別名「師走」とは
12月を「師走(しわす)」と呼ぶと知っていても、なぜこのような呼び方をするのか疑問に感じる人は多いでしょう。師走の由来や、新暦と旧暦の違いについて解説します。
師が走り回るほどに忙しい説が有名
師走の「師」は、先生や恩師ではなく「僧侶」のことです。師走の由来は、僧侶が走り回るほどに忙しい年末を迎えるためとされています。
年末には多くの寺院で、1年間の罪を懺悔するための「仏名会(ぶつみょうえ)」という法要が営まれます。3昼夜にわたって仏名を唱え続ける盛大なもので、この準備に追われる僧侶の姿を示しているとする説が有名です。
師走の由来には諸説あり、しわすの「し」を「師」とするのは当て字だという説もあります。元々は「しはつ」「しはす」と呼ばれ、四季の終わりという意味の「四時の果てる月」や、12月で1年が終わる「年果つ(としはつ)」などが由来ともいわれています。
旧暦の12月は新暦の1月ごろ
旧暦の12月は、新暦では12月下旬から2月上旬ごろに該当します。このようなずれが生じているのは、旧暦と新暦では暦の種類が異なるためです。
旧暦では、月の満ち欠けによって月日を決める「太陰太陽暦」が使用されていましたが、明治時代に太陽の動きを基にした太陽暦の「グレゴリオ暦」が採用されました。
旧暦での行事をそのまま現代の暦にも当てはめているので、季節感のずれを感じることがあるのです。立冬や立春などの季節の節目を表す言葉は、古くから使われているものを引き続き使用しています。
「師走」以外の別名一覧
12月の別名は師走だけではありません。さまざまな呼び方を知っていると、日本の四季の移ろいや文化を理解するのに役立ちます。師走以外の別名をチェックしていきましょう。
1年の最後の月を表す別名
12月は「極月(ごくげつ・ごくづき)」「窮月(きゅうげつ)」など、1年を締めくくる月という意味を持つ別名が豊富です。
「極」には「それ以上先がない」という意味があり、極月は1年の終わりの月であることを表しています。「窮」は極と似た意味があり、奥深くまで行きづまることを表す漢字です。
12月の古い月が終わりに近くなるので、「暮古月(くれこづき)」と呼ぶ場合もあります。また、旧年を払い除く意味の「除月(じょげつ)」も12月の別名の一つです。
ちなみに、大みそかを意味する「除夜」も、旧年を払い除く夜であることを示しています。
厳しい寒さを思わせる別名
12月には冬の厳しさを連想させる別名もあります。
旧暦の12月は現代の12月下旬から2月上旬ごろにあたり、冬らしさを格別に感じる時期です。そのため、「雪月(ゆきづき)」「氷月(ひょうげつ)」など、雪や氷が見られる様子を表す別名も多くあります。
またこの時期には、1年で最も寒い日とされる「大寒(だいかん)」を迎えます。旧暦が使用されていた時代は、現代のような暖房器具や防寒着などがなく、寒さもひとしおだったはずです。
そのような厳しい寒さを表す、「苦寒(くかん)」という別名もあります。ちょっとした寒さではなく、耐え難い寒さに震える様子が伝わってくる別名といえるでしょう。
春への期待や花の様子を意味する別名
旧暦では1〜3月までを春に分類しており、年が明けるとすぐに、春を迎えます。1月の別名の中に「新春」があるのも、昔は年が明ければ春が来るという感覚だったからでしょう。
12月は春が待ち遠しい月であることから、「春待月(はるまちづき)」とも呼ばれます。寒さが厳しいさなかに、春を待ち望む人々の様子が伝わってくる月名です。
また、梅の花が色づき始めることから、「梅初月(うめはつづき)」とも呼ばれます。品種によって異なりますが、梅の花が咲き始める時期は1月下旬ごろです。
多くの植物が活動期に入る春とは違い、冬に見られる花の数はそれほど多くありません。まだ寒い時期に咲き出す梅の花の貴重さが感じられる、風流な別名といえます。
12月の主な行事
12月といえばクリスマスや冬休みを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、日本古来の伝統行事もあります。「冬至」「大みそか」などの行事の意味や、過ごし方を見ていきましょう。
1年で最も日が短い「冬至」
2024年の冬至(とうじ)は12月21日です。冬至は季節の節目を表す二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、太陽が出ている時間が1年で最も短くなる日を指します。
冬至には、「ん」が付く食べ物を食べると縁起がよいと伝えられています。冬至の食べ物として有名なものはカボチャです。カボチャは昔「かんぼちゃ」「なんきん」などの呼び方をされていたので、縁起を担ぐ意味で食べられるようになったのでしょう。
他にも、小豆を食べるとよいとされています。小豆の赤い色が邪気を払うとされ、古くからお祝い事の席や季節の節目などに、無病息災を祈るために食べられてきました。地域によってさまざまな行事食が食べられており、小豆と米を一緒に水で煮る「小豆粥」を食べる家もあります。
▼関連記事はこちら
1年の最後の日「大みそか」
大みそかは1年の締めくくりの日、12月31日のことです。その月の最後の日を「みそか」といい、1年が終わる日という意味で大みそかと呼びます。
大みそかには、「年越しそば」を食べる家庭も多いはずです。年が明ける前にそばを食べる理由は、そばのように細く長く生きられるようにと願いを込めるためです。
大みそかには、やってはいけないこともあります。大みそかの当日に大掃除をすると、正月の神様である年神様が家に入りにくくなるとされます。
また、一夜限りの準備が葬儀の準備を連想させるため、「餅つきをする」「正月飾りを飾る」などの行動もよくありません。29日の準備も、「二重苦」を連想させるので避けたほうがよいと考えられています。
縁起を担ぎたい場合は、余裕を持って26~28日ごろから準備を始めるとよいでしょう。
▼関連記事はこちら
12月の別名を知り新しい年を迎えよう
12月の別名といえば師走が有名ですが、他にもこの時期の特徴を押さえた多くの別名があります。例えば12月が1年の最後の月であることから、終わりを意味するものが多くなっています。
冬らしく、氷雪に関連する呼び方や春への期待を感じさせるものもあり、四季を意識したい場面で使うと風流な人だと感じてもらえるかもしれません。
また、年末は何かと忙しくなりがちな時期です。冬至や大みそかの意味や過ごし方をチェックしておくことで、余裕を持って新年を迎える準備を整ことができるほか、縁起を担ぐこともできるでしょう。
こちらの記事もおすすめ
構成・文/HugKum編集部