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3月5日は産後ケアの日!
妊娠期の女性について身体的・精神的サポートが必要であることは広く知られていますが、出産後の女性についてもさまざまな面からケアが必要とされています。しかし産後は赤ちゃんのお世話に追われて、ママのケアが後回しになってしまうことも少なくありません。
産後の女性のケアを広め、またその重要性を多くの人に知ってもらおうという機会が、3月5日「産後ケアの日」なのです。
由来と意義
産後ケアの日は、産後のトラブルを改善し、その予防と健康のために産後ケアの大切さを知ってもらうことを目的にしています。「3月5日」→「さん・ご」→「産後」の語呂合わせで、ケア用品の会社により制定されました。
出産を経験した全ての女性が産後トラブルから解放され、それによって産後の女性とその家族が安心して過ごせる社会への願いが込められています。
産後ケアの重要性
出産は体に大きな負担をかけ、さらにホルモンバランスの急激な変化を伴うものです。産後ケアでは助産師や看護師などが身体的な回復をサポートし、栄養指導や休息の確保、心のケアを行います。これによって産後うつなどのリスクを軽減し、精神的な安定を促します。
また産後ケアを充実させることで育児不安や孤立感の解消、ひいては虐待予防にも繋がります。産後の心身の不調や育児不安は虐待のリスクを高めるといわれるため、これらの要因を軽減することは虐待予防の観点からも社会として重要な意味があります。
社会が積極的に産後ケアを行う環境づくりは母親と新生児の健康を守り、安心して育児を行うために不可欠な支援といえます。
産後ケアの基本
産後ケアの重要性は強く認識されており、各市町村において産後ケアの整備に努めることが法律でも定められています(「母子保健法」第17条の2)。具体的にどのようなケアが用意されているのか、以下に紹介します。
産後ケアの種類と内容
産後ケアは大きく分けて3種類あります。
産後ケア施設に宿泊する「宿泊型ケア」、日帰りで施設に通う「デイサービス型ケア」、助産師などが利用者の自宅に赴く「居宅訪問型(アウトリーチ型)ケア」です。内容は形式によっても異なりますが、基本的には母親の心身のケア、新生児のケア、育児相談を中心に行います。
産後ケアを受ける時期・タイミング
とくに産後1ヵ月、母親の状態は心身ともに不安定です。そのため産後1ヵ月内に利用されることが多いですが、この期間に限らず産後1年以内を目安に産後ケアが利用できる場合もあります。必要なタイミングでサポートを受けられるよう、自治体の窓口や保健センターなどに相談しましょう。
産後ケアを受ける場所
産後ケアを提供している施設は多岐にわたります。助産院や産婦人科医院、産後ケア専門施設や自治体の保健センターなど、さまざまな場所が活用されています。また居宅訪問型では、利用者の自宅でケアを受けることができます。
産後ケアを受ける方法
産後ケアを受けるためには、基本的に事前相談や申し込みが必要です。自治体や病院、民間企業などの利用したい施設に相談しましょう。
産後ケアは具体的にどんなことをするの?
施設の種類にもよりますが、産後ケアではさまざまな支援を受けることができます。
母乳育児のサポート
母乳育児ではつきものの乳房の張りや痛み、乳腺炎などのトラブルにも対応しています。必要であれば乳房マッサージや搾乳指導などのケアを受けたり、母乳育児を続ける上での悩みや困りごとを専門家に相談できたりします。
育児相談やアドバイス
授乳方法や抱っこの仕方、あやし方など、育児に関する具体的な指導を受けられます。月齢によって育児の悩みも変わってくるため、経験豊富な専門家に現在の不安や悩みを聞いてもらえると心強いでしょう。さらに赤ちゃんの体重測定や健康状態の確認など、赤ちゃんの健康管理についてもサポートが受けられます。
身体的なケアと回復サポート
出産でダメージを受けた身体・育児による疲労からの回復をサポートします。助産院や病院であれば、子宮の回復状態や悪露の確認といった専門家によるチェックも受けられます。また赤ちゃんのお世話をサポートし、母親もしっかりと休息できるような環境が提供されます。
産後うつの予防・対策
産後はホルモンバランスの変化や育児の不安から、精神的に不安定になりやすい時期です。カウンセリングや相談を通じて心のケアやアドバイスを行い、産後うつのリスク軽減、必要があれば専門機関での対応に繋げます。
産後ケアサービスの利用方法
産後ケアの提供施設や利用方法は多岐にわたり、自治体や民間企業などさまざまな窓口があります。ここでは産後ケアサービスをスムーズに利用するための具体的なステップと、知っておきたいポイントを解説します。
サービスを選ぶ
まずは近隣の産後ケア施設の情報を集めましょう。自治体の保健センターや子育て窓口などに相談したり、インターネットで情報を集めたりできます。利用施設の選択は、宿泊型などのサービスの種類、サービス内容、費用、自宅からのアクセスなどを評価基準にするといいでしょう。
ここで注意しておきたいのが、公共サービスと民間サービスの違いです。
公共サービスでは基本的には居住地域に合わせた施設利用に限られますが、助成制度により費用負担が軽減される場合もあります。民間サービスでは費用は基本的に自己負担のため高額になりやすいですが、地域やサービスの種類が自由に選びやすく、マッサージなどの追加サービスが選択できる場合もあります。それぞれのメリットや使いやすさに応じて選びましょう。
予約する
希望の産後ケア施設で予約申し込みをします。予約方法は施設によりますが、電話やウェブサイトで受け付けているところが多数です。
施設によっては事前に利用登録が必要な場合もあるため、可能であれば妊娠中から確認しておきましょう。
当日の準備
利用当日に向けての準備をします。予約時に伝えられたことやウェブサイトに提示されている情報に従って、持ち物リストを用意してください。できれば消耗品は少し多めに用意し、持ち物に記名をしておきましょう。
当日の移動方法も確認し、必要であればタクシーを予約したり、家族に付き添いを頼んだりしておきましょう。
サービス施設を訪れケアを受ける
予約時に指定された時間に、赤ちゃんと一緒に産後ケア施設に入ります。その後はリラックスして過ごせるよう、スタッフの方に従ってケアを受けましょう。
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産後ケアサービスを利用する際の注意点
産後ケアサービスの利用にあたっては、いくつかの注意点があります。サービスを適切に活用するためにも、以下の点を確認しておきましょう。
サービス内容の確認
サービス内容が、自身のニーズと合っているかの確認は重要です。とくにケアの内容、食事内容、授乳サポート、精神的なケアなど、重視したい点を明確にしておきましょう。また利用時間、利用回数、対象地域などの利用条件も確認します。
料金と助成制度の把握
サービス利用にかかる費用は、施設の種類やサービス内容によって大きく異なります。宿泊型、デイサービス型、居宅訪問型といった形態の違いだけでなく、提供されるケアの内容によっても変動します。
また各自治体では産後ケアに対する助成制度を設けている場合がありますので、助成額や利用条件を事前に確認しておきましょう。
サービス提供者の資格と経験
利用する産後ケア施設で、どのような資格や経験を持つスタッフが在籍しているかを確認しましょう。とくに母乳育児サポートなど専門的なケアが必要な場合は、対応可能なスタッフがいるかをチェックします。
施設のウェブサイトやパンフレットなどでスタッフの資格や経験を確認したり、直接問い合わせたりすることも可能です。
産後ケアを実際に体験したママの声
「産後ケアをすると、どういいの?」そんな疑問を持つ方も多いでしょう。ここでは、実際に産後ケアを利用したママたちの声を抜粋してお届けします。
出典:鳥取市産後ケア利用者アンケートまとめ|鳥取市
:【報告】浜松市産後ケア事業の利用実態調査結果について|浜松市
産後ケアを受けた理由や効果
・地元は県外で、知り合いもいない中での子育てがスタートしました。産後ケア事業を利用することで、大人と話をすることができ、産後うつの予防になったと心から思っています。
・久しぶりに夜に睡眠がとれて少し元気になりました。ありがとうございました。
・身内に頼まずに自分の時間を取ることができるので、気兼ねなく過ごすことができた。
産後ケアの実体験談
・退院してすぐ利用できるように、妊娠中から知っておきたかった。
・私の場合、市が無料で提供していることで、ハードルが下がり利用に踏み込めました。
・サービスを利用していない日でも、助けを求める場所がある、息抜きができる場所があることを知ることが、気持ちの安定剤となりました。
・夫と一緒に指導を受けることができ、育児の困りごとを共有できた。マタニティブルーでどのように苦しいのか助産師さんが説明してくれたことで、夫の理解が得られた。
産後ケアの日をきっかけに利用促進、健やかな育児を
産後ケアは出産後の女性が心身ともに回復し、母子ともに安心して生活を進められるよう支援する重要な足掛かりです。
この記事で紹介したように、産後ケアにはさまざまな支援やサービス内容が提供されています。また自治体の助成やサービスの拡充なども進められ、利用者対象者への周知や利用者からのフィードバックも求められています。自分に合った産後ケアを活用することで、健やかな子育ての第一歩を踏み出しましょう。
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記事監修

医療法人愛光会せきレディースクリニック理事長・院長
1973年12月12日生まれ。2002年に東京医科大学卒業後、金沢大学病院、金沢医療センター、福井県立病院、札幌マタニティ・ウイメンズホスピタル、荒木病院、いずみレディスクリニックに勤務。2018年ひろレディスクリニック副院長に就任。2019年医療法人愛光会せきレディースクリニックを設立、理事長兼院長に就任。
日本産科婦人科学会認定専門医、日本生殖医学会員、日本産科麻酔学会員、母体保護法指定医。著書に「妊娠期間を楽しく過ごす マタニティハッピーブック」(幻冬舎)がある。
文・構成/HugKum編集部