1ページに12マスしかないノートなど「合理的配慮のためのノート」は、なぜ学習現場から生まれたのか?

先日、とてもマス目が大きい方眼ノートを見つけました。このノートは、「合理的配慮」というものに対応した学習帳だということなのですが…「合理的配慮したノートってどんなもの?」気になったので少し調べてみました。

実際に学びの場で起きていた困りごとから生まれました

学校の現場に耳を傾けてみると

ノートメーカー大手の日本ノートが「スクールラインプラス 合理的配慮のためのノート」として10種類のノートを作りました。監修をしたのは、専門作業療法士の鴨下賢一先生です。

支援級などでお子さんが学んでいる現場での声に耳を傾けてみると「大きなマス目でのびのび書きたい」「マス目や罫線が細くて見えづらい」「従来のノートではどこに文字を書くのかがわかりづらい」などの学習帳に関する声が上がってきたそうです。

そこで、方向性として、
 「従来の学習帳よりも大きく書けるように設計」
 「罫線を太く、書くスペースだけを白くすることで、一目で文字を書く場所がわかる」
という工夫をしました。ノートのサイズは一般的な学習帳と同じくB5(セミB5)サイズです。

まずは、実際にどのようなページになっているのかをまずはご覧ください。

実際のノートのフォーマット(写真は日本ノート提供)

マス目大(書字練習用)50㎜

5cm×5cmのイメージと実際に見た印象、どちらが大きいですか?

一つのマスが50mm、ページ全体で縦4マス×横3マスのノートには、中心リーダーと呼ばれる十字が入っているものといないものがあります。発達障がいなどを持つお子さんが使うノートでは中心リーダーが入っている方が書きやすいと感じる場合も、中心リーダーがない方が書きやすいと感じる場合も、両方あるそうです。

同じマスの大きさで2種類のノートがあるのは本当にお子さんに寄り添っていないと実現できない大切なことだと思います。

マス目小(書字練習用)25㎜

これが、小学一年生の国語のマス目と同じくらいの大きさです

また、一つのマスが25mm、ページ全体で縦8マス×横6マスのノートにも、中心リーダーと呼ばれる十字が入っているものといないものがあります。日本ノートの小学一年生国語用のノートのマス目を調べると26mmと記載されていました。おおよそ同じ大きさですね。

漢字れんしゅう大・小

学年ではなく、お子さんに合わせて選ぶことが大切です

大はマスが35mmで縦6マス×横2マス。小はマスが24mmで縦9マス×横3マス。中心リーダーと呼ばれる十字がどちらにも入っています。また、ふりがなを書く欄が、広めにとってあります。

🔸横開マス目22㎜ タテ方向あみかけ

算数で桁がずれてしまうのは交互のあみかけで防げることが多いです。

列に色を薄く付けることを「あみかけ」と言います。このノートは交互にあみかけあり・なしとなっているので、大きな数字の位やひっ算のときに桁がずれにくくなっています。

マス目15㎜ タテ方向あみかけ

小学校も折り返しが近づくと算数の桁数やひっ算の式が長くなります

縦列が交互にあみなし・あみかけありとなっているので縦書きの文章も書きやすくなっています。そして学年が上がってくると長いひっ算も授業に出てきます。これなら最後まで書けそうですね。

連絡帳

連絡帳はみんな分け隔てなく使うノートの一つですね

9つある列にも中心リーダーが入っていて、1マス16mm(高さ)×15.5mm(横幅)です。

英習罫

アルファベットが書きやすくなっています

1ページに4行の記入スペースがあります。上下の白い行は10mm。アルファベットの小文字の特徴が出る真ん中の行(あみかけあり)が15mmになっていて、小文字を書く位置がわかりやすくなっています。

日本ノートが考えた合理的配慮をしたノートとは?

このノートシリーズは発達が気になるお子さんへの教育現場での合理的配慮のためのノートです。従来よりも大きくのびのび書くことができるのでまだしっかり鉛筆を握れないお子さんの文字練習にもおすすめです。

マス目の大きさをどのように選ぶか

手の発達によりまだ指先をうまく動かせず、手首とひじの動きで書くお子さんには大きなマス目を、鉛筆を3本の指で持つことができて、うまく指先を動かして書けるお子さんには小さなマス目を選ぶことを基準にすればよいのだそうです。

お子さんの成長の度合いはそれぞれです。発達の段階に合わせてこのようにさまざまな大きさのマスがあることは、必要としているお子さんにとってとても心強いでしょう。

みんなで使えるユニバーサルデザインのノート

消しゴムをかけたときにシワになりにくく、めくりやすいように、従来よりも厚めの本文用紙(同社従来品比)を使用しています。

もちろん、どのようなお子さんでも使えるユニバーサルデザインの学習ノートとして作られているので、お子さんにピッタリと思った方はぜひ詳しくご覧ください。

表紙のデザイン

学年や性別を限定しないシンプルでカラフルなデザインにし、中を見なくても中の罫線がわかるような工夫がされています。

UDフォントの活用

本文に書かれている文字にはUDフォント(ユニバーサルデザインの思想に基づいて開発されたフォント)が使われています。

まとめ

「障がい」と言っても一つではありません。例えば弱視の児童・生徒の方にも記入欄がわかりやすいという点で視覚支援学校で使用されるなど、困っているお子さんの元に寄り添うように広がっているそうです。

筆者は娘の成長を思い返してみました。そうすると「小さい頃にはとても大きな字」を書いていました。筆者の娘が小学校に入りひらがなを習ったときには「25mmくらいの方眼ノートに」練習をしていましたが、現在小学4年生。大学ノートの7mm罫線に文字を書こうとしています。

これは娘の成長がこうであるというだけで、クラスのほかのお子さんはもっと早く小さな字を書いているかもしれません。逆にお友達は枠内に文字を収めるのが難しいのかもしれない……。だからこそ、お子さんひとりひとりが使いやすいノートを提供することが求められていて、その答えの一つとしてこのノートが誕生したのではないでしょうか?

「合理的配慮」少し難しい言葉ですが、これからも意識して見ていきたいです。

日本ノートの「スクールラインプラス 合理的配慮のためのノート」については
詳しくはこちらをご覧ください

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文・構成:ふじいなおみ

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