雑誌「小学一年生」2019年12月号では、プログラミングで動かせるロボット工作のキット「embot(エムボット)」を紹介しています。
誌面でも工作をつくってくれた、工作作家の佐藤 蕗さんファミリーにインタビューしました!
夫の佐藤ねじさんはクリエーターとして、YouTubeチャンネル「ピカいちCHANNEL」で公開中のembot動画を手がけています。
そして、工作が大好きな小2の息子くんも加わった3人に、「embot」に触れた感想などについて聞いてみました!
ダンボールと電子部品を組み合わせて作るロボット。
サーボモーター、ライト(LED)、ブザーなどをコア(基盤)に差し込むだけでよく、組み立てが簡単。
子どもでも、タブレットやスマートフォンから専用アプリ(無料)を用いてプログラミングで動かすことができます。
embot公式ホームページ
目次
“文系ママ”が初めてのプログラミング工作に挑戦!
プログラミング初心者でも、これならできるかも!?
―――embotを作ってみた感想はいかがでしたか?
蕗さん 私にとっては初めてのプログラミング工作でしたが、 タブレット上で作ったプログラミングが、実際にロボの動きで確かめられることが新鮮でした。
そもそも私は文系で、プログラミング自体に苦手意識があったんです。でも、embotはまずダンボールでできた基本形があり、プログラミングもわかりやすく、「これなら私のような初心者でもできるかも」と思いました。
制約が少なく適度な自由さがあり、やっているうちにアイデアがどんどん湧いてきちゃいました。
<小学一年生で紹介中! 佐藤 蕗さんの工作動画を見てみよう!>
蕗さん お気に入りは、この「クネクネへび」。ダンボールを使わず、サーボモーターをむき出しで使っています。
2つのモーターの動く角度をプログラミングで変化させることで、なんともヘンテコな動きを生み出せるんですよ。数値を入力しては動きを確かめる作業が楽しい。しかも、製作時間はたったの5分(笑)。
また、羽を大きく開閉する「くじゃくロボ」や、目がキョロキョロ動いて表情を変える「雪だるま」も試作しました。
工作の動き自体は昔ながらのおもちゃにあるようなアイデアですが、それを手動でなくプログラミングとモーターを組み合わせて動かすというのが、工作作家としても興味深かったですね。embotの構造がシンプルだからこそ、発展させやすいのだと思いました。
▲蕗さんの試作品のひとつ。「クネクネへび」は、
モーターに厚紙のへびを貼り付けたシンプルな作り。
▲「くじゃくロボ」は、
ビニールの羽をバサッと開く動きが大胆!
▲顔の後ろに円形の厚紙がある「雪だるま」。
モーターで厚紙の角度を変えることで、表情がクルクル変化。
▲「大人でもembotを充分楽しめました」と語る蕗さん。
小学2年生も夢中!ダンボールでできるプログラミング工作
動きがすごい! 息子くんの “力作” embot
―――息子くんも何か作ったんですか?
息子くん 電子レンジを作ったよ。おにぎりを入れて扉を閉めると、LEDが光ってトレイがくるくる回るんだ。トレイの動きが止まったら、ブザーの音が鳴って完了!
蕗さん ブザー音を工夫してたよね?
息子くん そう! 実際のレンジから出る「ピーピー」という音を聞いて、音階や回数を本物ソックリにしたんだ。扉は磁石でピタッと閉じるよ。
▲レンジ内部でランプが点灯し、モーターの上でおにぎりをのせた紙皿のトレイがくるくる回転する「電子レンジ」。
息子くんが本物をじっくり観察して仕上げました。
▲作っている最中、レンジの扉がうまく開かなくて、その原因を探る過程があったといいます。
「そんなときは『重すぎるのかな?』などと、大人が一言アドバイスしてあげるといいですよね」と蕗さん。
▲電子レンジのプログラミング画面。どんな手順でどんな処理を行うかが
ひと目でわかるフローチャート(流れ図)式になっています。
蕗さん 息子は、思いついたアイデアをたくさん書き出すんですが、アイデアが湧き出てきすぎて(笑)。スイッチが入って集中しているときは、なるべく邪魔をしないようにしているんですが……その日は「もう寝るよ」という時間まで次々と考えていましたね。
ねじさん 最初は「エスカレーターを作りたい」って言ってたよね。それで、どんな機構にすればいいか、どこにモーターを取り付ければいいか、あれこれ親子で話し合って。
アイデアを出してみても、実際に動かすのは難しいこともあります。結局、外側にモーターを付けなくてはいけない、作るのは難しいということがわかったけれど、そうやって考えて話し合う作業自体にすごく意味があったと思うんです。
▲息子くんが短時間で描き上げたembotのアイデアスケッチには、
電子レンジ以外にもカマキリ、ドラゴン、リニアモーターカー、ルーレットなどのアイデアが満載!
「分類してファイルしておくのに便利」という、ねじさんのアドバイス通り、表紙までついています。
―――レンジは、息子くんがプログラミングもしたんですか?
蕗さん 私と息子と2人で考えながらやってみました。ただ、トレイの動きが止まるのとブザー音の鳴るタイミングがどうしても合わなくて、丸一日2人で悩みました。そこで、プログラミングに詳しい夫に聞いたら、5分で解決しました(笑)。
ねじさん プログラミング的思考の基本でもあるんですが、どんな動きをさせたいのか、まず具体的に紙に書き出して整理するといいんですよ。
蕗さん 作ったembotが動き、喜んでいる私の様子を見た夫から「プログラミングを学び始めた子どもみたいな反応をしてるね」って言われました。
プログラミングには今まで何度かチャレンジしていて、詳しい人に聞いたりもしたんですけど、どうにもハードルが高いと感じていました。その点、embotは初めてでもなんとなくわかる取っ付きやすさがあって、楽しかったです。これ、大人もやったほうがいいんじゃないかなぁ。
embotの枠組みを外して考えることもできる
自由な発想が実現できるのも楽しい!
―――ねじさんが「ピカいちCHANNEL」のために考案したembot動画のアイデアが斬新です。
ねじさん 「無限ネコじゃらし」は、サーボモーターの力でネコじゃらしを左右に振る、勝手に動くネコじゃらしです。ネコが追いかけて……これは、かわいい動画になりました。
ほかにも、2台のタブレットに挟まれた2台のembotが、それぞれ相手を操作するというアイデアもあります。embotを2台、タブレットも2台用意します。embotが動いて、もう1つのembotを動かすためのボタンを押し、また、そのembotが相手側のボタンを押し……無限にループするわけです。
embotで「こんなこともできるんだ」というアイデアを動画で見てほしいですね。
▲「ピカいちCHANNEL」内の動画の解説をしてくれる、ねじさん。
▲無限ネコじゃらしに対するねこの反応は……? 「ピカいちCHANNEL」でチェックを!
プログラミング的思考、論理的思考が身につくメリットとは
大人にも子どもにも、社会全体にとっても大事な知識
―――プログラミングの知識が、今後必要になるのはなぜでしょう?
ねじさん プログラミングを作る基礎になるアルゴリズムの考え方が世の中に行き渡ると、技術によって何ができるかできないかがわかるようになります。すると、使い方はわかるけど内部の動作や原理が不明な状態を表す、技術などの「ブラックボックス化」も少なくなっていくでしょう。
それによって、プログラミングのリテラシー、つまり当たり前の知識レベルが底上げされることにもなり、それは子どもにも大人にとっても、社会全体が良い方向に向かうために大事なことだと思っています。
今、広く使われているパソコンだって、昔に創始者が部品を組み合わせて作り出したもの。ダンボールやモーターなどの部品からなる電子工作とプログラミングが組み合わさって、そこから生まれるアウトプットが今後どんなものになるのか? 楽しみですね。
例えば学校で学ぶ算数も、ドリルや計算問題をやっていると「何に役立つんだろう?」と思うかもしれません。でも、プログラマーにとって、3Dやアニメーションを作るうえでも、算数はものすごく大事なんです。
プログラミング教育も算数と同じで、条件分岐(プログラミング上の命令)とかそういう理論から学ぶより、「ロボットが動いた!」とか、アウトプットが楽しいほうが大事だと思うんです。
embotみたいにアウトプットが楽しい教材があれば、「まず実践して、その次に理論」というふうに、勉強と思わず〝何となく〟学んでいくことができますよね。
▲「プログラミング工作では、アイデアを出し、モノを作って検証する、という仕事の原型が体験できますね」と、ねじさん。
大人こそプログラミングをやってみるべき!
親子で取り組むと、楽しさがわかるはず
―――プログラミングと子ども、そして大人の関わり方はどうあるべきでしょう?
蕗さん 息子も私もこれまでに画面の中でアニメーションなどを動かせるプログラミングは体験したことがありますが、画面だけでなく実際のものを動かすことにプログラミングを応用できたのは、わくわくする体験でしたね。
ねじさん これからの子どもにとってプログラミング教育は重要ですが、学校の先生や大人など教える立場の人が学ぶことが先じゃないかな、と実は思っています。
それにはまず、大人もやってみることです。概念と実行することは違います。サッカーのやり方をボールを蹴らずに本で学んでも、子どもにうまく教えられませんよね。
同じように、プログラミング教材に取り組む場合は、子ども向けのものであっても、親もやってみるのが大事だと思います。実際に動かしてみると、プログラミングの楽しさがきっとわかると思いますよ。
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「embot(エムボット)」をもっと知りたい!
写真/金田幸三 構成/村重真紀