光の速度とはどれくらいでしょうか?物理の授業で習ったことがあっても、光の性質や速さについて説明するのが難しいと感じる人は多くないかもしれません。ここでは、光とは何なのかを簡単に解説するとともに、光の速度が測定された背景を紹介します。
そもそも光ってなに?
光(可視光)とは、電磁波と呼ばれる空間を伝わる「波」の一種で、電波や赤外線、紫外線などの仲間です。
電磁波には波長と呼ばれる周期的な長さがあり、おおよそ380~780nm(ナノメートル)の範囲が目に見える光の領域です。波長によって光の色が変化し、この範囲から外れた波長は人間の目には見えません。つまり、私たちが目視できる範囲の電磁波を「光」と呼んでいるのです。
現在では「波」以外の性質もあるとされています。光の性質や速度について、より詳しく見ていきましょう。
波でもあり、粒でもある
光は電磁波の一種なので「波」の性質を持っていますが、同時に「粒」としての性質も持ち合わせています。光の粒としての最小単位を「光子(フォトン)」といい、波長が短くなればなるほど、一つ一つの光子のエネルギーが大きくなるのが特徴です。
絶えずゆらゆらと動く波の性質と、光子のまとまりである粒の性質を同時に満たしているので、私たちが日ごろ見ている物体のように、具体的にどういうものかをイメージするのがとても難しい存在です。
実際、「光が波か粒子か」の問題は20世紀まで多くの学者たちを悩ませてきた歴史があり、量子力学という学問が確立される中で、「光とは波でもあり粒でもある」ということが判明しました。二重性を持つこの性質はそれぞれの分野で研究が深められていくことで、この世界の成り立ちの解明にも役立つでしょう。
光の速度
光の速度は1秒間に約30万kmで、これは地球を1秒間に7週半もできるほどの速度です。17世紀にデンマークの天文学者オーレ・レーマーが世界で初めて光速を計算したときには、1秒間に約22万kmとされていました。
その後、多くの学者の研究を経て、1926年にアメリカのアルバート・マイケルソンという物理学者の実験から光の秒速は約30万kmと導き出され、現在に至ります。科学の発展とともに、より正確な測定方法が確立されてきた結果といえるでしょう。
昔は無限大だと考えられていた
多くの科学者の研究や測定のおかげで、現代を生きる私たちは光の速度を知っていますが、実は17世紀に入るまで光の速さは無限大だと考えられていました。
太陽の光は暗い場所を一瞬で照らし、火は周囲をすぐに明るくしてくれます。人間の目には光が到達する時間に違いがあるように感じられないことから、当時の科学者も含めて、ほとんどの人が光は無限大の速さを持っていると考えていたのです。
しかし、有名なガリレオ・ガリレイをはじめとした数々の科学者たちが行った測定によって、徐々に光には決まった速さがあると信じられるようになりました。
光速測定に関わった主な人物
ここで、光の速さの測定に関わった主な科学者たちを整理してみましょう。
光の速さを測ろうと考えたガリレオ
ガリレオ・ガリレイは歴史上、初めて光の速さを測定しようと考えた科学者だといわれており、その著書『新科学対話』の中にはランプを用いた光速測定法について書かれています。
彼は遠く離れた2つの地点でランプを持った人が信号を送り合うことで、光が往復する時間を測定しようとしました。しかし光があまりにも高速で、人間の目には信号と同時に光が到達したように見えてしまったため、計測は失敗に終わっています。
最初に測定した天文学者レーマー
ガリレオの死後、デンマークの天文学者レーマーが天体の動きから光の速度の計算を試みました。
彼は1675年にガリレオの発見した木星の衛星イオの「食※」を計測していたところ、イオが木星に隠れるタイミングが当初の計算よりも遅れることを発見しました。その原因として、レーマーは光が木星から地球に到達するのに時間がかかっているためと推測し、光には速さがあることを導き出したのです。
その後、彼は地球が公転する軌道を光が通り過ぎるのに22分程度かかることを発見し、そこから光の速さは秒速約22万kmと結論づけました。
(※天文学における「食」とは、天体が別の天体の動きによって隠される現象のこと)
地上での測定に成功した物理学者フィゾー
天体の動きをヒントに光の速度の計算を行ったレーマーに対して、フランスの物理学者アルマン・フィゾーは反射鏡と歯車を用いた実験装置を作り、歴史上で初めて光の速さの測定に成功しました。
彼は、光源から出た光が9kmほど先にある反射鏡にぶつかって戻ってくるまでの時間を計測し、光速を秒速約31万5000kmと計算しました。実際の光の速さはおおよそ秒速30m(秒速29万9792.458km)なので、かなり正確に測定できていたことがわかるでしょう。
フィゾーの光に関する実験は世界中に大きな影響を与え、現在の高校物理の教科書にも登場しています。
光の速さの測り方
このように、科学の発展にともなって光の速度の測定方法も進化し続けており、現在はレーザーを用いた光速測定も可能になりました。先人たちが苦労して光速を導き出していた時代に比べ、かなり正確に光の速さを導き出せるようになっています。
どうやって測れるの?
私たちにも試せる光の測定方法としては、鏡と歯車を使うものが挙げられます。これはフィゾーが19世紀半ばに行った実験と同じ方法です。
光源と反射鏡の間に光の一部を反射する半透明鏡と回転する歯車を設置し、歯車の回転速度と反射鏡までの距離によって光の速度を計算します。これよりも正確に速度を測る方法として、現在ではレーザーを使って光の速度を測る技術も生まれました。
いま使われている値はレーザーで計測
いま現在、光の速度は秒速29万9792.458kmとされていますが、これは20世紀の後半に開発されたレーザー光を用いた実験装置によって求められた値が使われています。
さらに最近では、特殊な計測装置を用いることで小さな実験室の中でも光の速度を簡単に測れるようになりました。天体の動きから光の速度を測定していたレーマーの時代と比較すると、測定装置も大きな進化を遂げています。
光の速さは意外と最近発見されていた
「光とは何なのか」という基本的な問いの解説から、光の速度が正確に測定されるに至った歴史について紹介してきました。人類が光の速さについて考え始めてから、実は300年ほどしか経過していません。意外と最近発見されていたことに驚いた人もいるのではないでしょうか?
当初は無限大だと思われていた光の速さが、科学の発展と測定装置の進化にともなって徐々に明らかになってきた経緯を見ると、科学者たちの未知の現象に対する情熱がうかがえます。科学に興味のある方は光の測定方法の変遷について、より詳しく調べてみてください。きっと新しい気づきがあるはずです。
文・構成/HugKum編集部