「化石燃料」は電気やプラスチックの元になる大切な資源です。しかし、化石燃料が自然環境に与える影響は大きく、また有限な資源であることから、新たな燃料の開発も進んでいます。化石燃料の特徴と注目の次世代燃料を紹介します。
化石燃料とは
地下にある燃料資源の総称
化石燃料は「石油」「石炭」「天然ガス」といった、地下にある燃料資源の総称です。はるか昔に地球上に存在した、植物や微生物の死がいで作られています。
地中深くに埋もれた死がいに強い圧力や高熱がかかり、変質したものが化石燃料の正体です。石炭は、植物の死がい、石油や天然ガスは微生物からできているのです。
化石燃料の種類
石油・石炭・天然ガス以外にも、メタンガスが氷状になった「メタンハイドレート」や堆積岩層に眠る「シェールガス」などがあります。特に、メタンハイドレートは日本近海にも多く眠っており、資源の乏しい日本にとって貴重な化石燃料として期待されています。
なお化石燃料は、そのままではエネルギーとして利用できません。発電所で電気にしたり、製油所で灯油やガソリンに精製したりして使うものです。化石燃料のように加工が必要なエネルギーを「1次エネルギー」、電気やガソリンなどの加工されたものを「2次エネルギー」といいます。
化石燃料のメリット
化石燃料は使用量が多く、世界のエネルギー源の9割近くをまかなっているといわれています。それは、他の燃料にはないメリットがあるためです。化石燃料の主なメリットを見ていきましょう。
発電量が安定している
私たちの生活になくてはならない電気は、ほとんどが化石燃料による火力発電でまかなわれています。
発電には「火力」「水力」「風力」「太陽光」「原子力」など、さまざまなエネルギー源が使われます。中でも火力発電はエネルギー不足の心配がなく、安定して発電できるのが特徴です。
化石燃料は地下に豊富に埋まっているため、太陽光や風力のような天候に依存する発電方式と異なり、必要な量をいつでも確保できます。
また化石燃料は、自動車や飛行機の燃料やライフラインを支えるガス、プラスチック製品の材料にもなります。生産量が安定していて、多くの用途に利用できる点も、化石燃料のメリットです。
コストが抑えられる
化石燃料は、他の燃料に比べてコストがかかりにくい傾向があります。安く手に入る上に大量のエネルギーに変えられるので、大変重宝されています。
化石燃料自体のコストだけではなく、運搬や貯蔵コストが低いほか、発電所の建設場所における制約が少ないため、建設費を抑えて建物を作ることも可能です。
ただし、世界のエネルギー消費量の増加と共に、燃料価格は大きく値上がりを見せています。
エネルギーの多くを海外に依存している日本においては、コスト面でのメリットが大きいと言えなくなる可能性も出てきています。
化石燃料のデメリット
世界中で使われている化石燃料ですが、近年はデメリットが指摘されるようになり、使い過ぎを見直す動きが広がっています。化石燃料を使うと、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
地球温暖化の要因に
近年、地球温暖化が原因とみられる気候変動が、世界中で起こっています。地球温暖化の大きな要因が、化石燃料を燃やすときに排出される「二酸化炭素」です。化石燃料が出す二酸化炭素は、大昔に植物や微生物が取り込んだもので、排出されると地上の二酸化炭素濃度が高くなります。
二酸化炭素には温室効果があるため、濃度が高くなれば温暖化を進行させてしまうのです。人類が化石燃料を使い始めてから、地上の二酸化炭素量は増え続けており、今後どのように減らしていくのかは世界的な問題です。
世界各国で二酸化炭素の排出量を削減する努力が進められ、「京都議定書」や「パリ協定」といった国際的な枠組みも作られています。
将来的に枯渇する
日本を始め、多くの国で化石燃料を大量に消費していますが、経済発展に伴って今まで化石燃料を消費していなかった国も今後たくさん使うことが予想されます。
しかし化石燃料は、長い時間をかけて地球が作り出した資源です。たくさん埋まっているといっても量には限りがあり、新しく作ることもできません。
このため現在採掘中の化石燃料は、早ければ数十年後には枯渇すると考えられています。採掘技術や地中探査技術が進歩して採掘量は増えていますが、このまま消費を続ければ、化石燃料はいつかはなくなってしまうでしょう。
化石燃料に代わる次世代の燃料
地球温暖化を防ぐために、また枯渇したときのために、化石燃料に代わる「次世代燃料」が続々と開発されています。特に注目を集めている燃料を紹介します。
バイオマス燃料
「バイオマス」とは、動植物から生まれる有機性資源のことです。バイオマスは「廃棄されるもの」「未利用のもの」「資源作物」と大きく3種類に分けられます。
廃棄されるものは生ごみ・紙ごみ・家畜のふん尿などです。未利用のものは稲わらや麦わら、伐採後に残った材木などが挙げられます。
資源作物とは、食用ではなく資源利用を前提に栽培された作物です。トウモロコシや大豆、サトウキビなどが知られています。また、海草やプランクトンも、バイオマス資源として期待されています。
このようなバイオマス資源を利用して作る燃料が、バイオマス燃料です。燃料の種類は固体・液体・気体とさまざまで、それぞれ化石燃料と同じように発電や乗り物の燃料、プラスチック製品などに使えます。
バイオマスの大元となる植物は、現在地上にある二酸化炭素を吸収して育ちます。バイオマス燃料を燃やしても、地球全体の二酸化炭素量は変わらないことから、二酸化炭素を排出する化石燃料よりも環境に優しいとして、近年注目されているのです。
GTL
「GTL」は「Gas to Liquids」の略です。天然ガスを液化したもので、石油から作る「軽油」と同じ性能を持ち、ディーゼルエンジンの燃料として使います。
GTLには、石油に含まれる硫黄分や金属分などの不純物が一切含まれておらず、排気ガスがとてもクリーンです。
二酸化炭素の排出量も、軽油に比べて8.5%削減できます。軽油よりもコストが高いのが課題ですが、今後大量生産が可能になれば価格が下がり、普及が見込めるでしょう。
暮らしを支える燃料について考えよう
化石燃料は、私たちの暮らしに多くの恩恵をもたらしてくれます。
しかし、便利な暮らしを享受すればするほど地球環境は破壊され、資源もなくなってしまいます。化石燃料への依存を見直し、他の手段を考える時代が来たともいえるでしょう。
エネルギーの確保は、未来を生きる子どもたちのためにも、避けては通れない問題です。暮らしを支える燃料について、普段から意識してみると新たな気づきがあるかもしれません。
構成/HugKum編集部