黄道って何?言葉の意味を分かりやすく解説
「黄道は太陽の軌道」と覚えている人もいるのではないでしょうか。しかし、それだけだと子どもには伝わりにくいかもしれません。まずは図を参考にしながら、黄道の全体像を確認しましょう。
黄道は「太陽の天球上での通り道」
黄道(こうどう)とは、太陽が地球の空(=天球)上を移動していく軌道をいいます。天球とは、天体の動きを表すときに便利な、実在しない球形の天井のことです。
「地球は太陽の周りを回っている」ことを知らなかったとしたら、太陽の動きを研究するとき、多くの人は自分が立っている地球を中心に考えるのではないでしょうか。
実際には地球が太陽の周りを回っているのですが、古代の人々は、太陽が地球の周りを回っていると考えていました。つまり、黄道は「地球から見たときの、太陽の見かけ上の軌道」なのです。
「赤道」「白道」との違い
黄道と似た言葉に、「赤道」「白道(はくどう)」があります。
・黄道:太陽の天球上の通り道
・赤道:地球の自転軸に対し直角な平面と、地球の地表が交わる線
・白道:月の天球上の通り道
地球から見ると、太陽と月が順番に、同じ軌道を通って空に昇ってくるように見えるでしょう。しかし、天球上の黄道と白道の通り道は同じではありません。
図にすると、黄道・赤道・白道は地球を中心とした円を描いています。この円が作る面を比べてみると、黄道面は赤道面に対して約23.4度傾いており、白道面は黄道面に対して約5度傾いています。
また月は太陽とは異なり、地球の周りを回っているので、白道は見かけ上の道ではありません。
実際の太陽の見え方を理解しよう
太陽が天球上をどう動いているのか、その目印となるのが黄道付近にある星座です。地球は1年かけて太陽の周りを回っており、この地球の公転により太陽・星座との位置関係が変わるのです。
例えば、夏に太陽の方角にあるのはおうし座、冬に太陽の方角にあるのはさそり座です。昼間は明るいので星座は見えませんが、太陽の後ろにある星座は1年でちょうど1周します。
星座がある黄道付近、具体的には黄道を中心として上下8度ずつ、合わせて16度の範囲の帯を「黄道帯」といいます。黄道帯には動物をかたどる星座が多く存在することから、「獣帯(じゅうたい)」という別名があります。
このように、太陽が黄道上を1周することを「太陽の年周運動」といいます。なお、黄道上で太陽は反時計回りに回り、西から東へ動いている点にも注目しましょう。
黄道と季節の関係
何気なく口にする季節の言葉にも、黄道から作られたものがあります。春分や夏至もその一つです。これらが含まれる「二至二分(にしにぶん)」「二十四節気(にじゅうしせっき)」について見ていきましょう。
季節の節目となる二至二分
季節の節目を表す言葉に「二至二分」があります。二至とは夏至・冬至のこと、二分は春分・秋分のことです。二至二分は黄道と赤道を基準に決められています。
地球の自転軸は約23.4度傾いています。そのため、黄道と赤道も同じく約23.4度の傾きがあり、2点で交差しているのです。これを踏まえて、黄道上での二至二分の位置を見ていきましょう。
・春分点:黄道と赤道が交わる2点のうち、太陽が南から北へ通過する位置
・秋分点:黄道と赤道が交わる2点のうち、太陽が北から南へ通過する位置
・夏至:黄道上で春分点から秋分点の中間位置
・冬至:黄道上で秋分点から春分点の中間位置
二至二分とは、太陽の動きによって決まる季節の変わり目になる日なのです。
黄道から作られた二十四節気
カレンダーの日付の脇に、「立春」や「小暑」など季節を表しているような言葉を見かけることはないでしょうか。これらを総称して二十四節気(にじゅうしせっき)といいます。
黄道を描く円を真上から見たとしましょう。360度の円を15度ずつ分けると24個の枠ができ、春夏秋冬がそれぞれ六つに分けられます。
・春:立春・雨水・啓蟄(けいちつ)・春分・清明・穀雨
・夏:立夏・小満・芒種(ぼうしゅ)・夏至・小暑・大暑
・秋:立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降(そうこう)
・冬:立冬・小雪・大雪・冬至・小寒・大寒
二至二分も二十四節気の一つです。なお、立春・立夏・立秋・立冬の四つを「四立(しりゅう)」といいます。
黄道と星座の関係
「つい、星座占いをチェックしてしまう」という人はいませんか? この誕生星座にあたる黄道十二星座と、星座の起源について解説します。
黄道十二星座と黄道十二宮
オリオン座や北斗七星など、夜空には数多くの星座が瞬いているのに、なぜ誕生日で決まる星座は12個しかないのでしょうか。実は星座占いで使われるのは、黄道帯にある星座なのです。
黄道帯には12個の星座があり、まとめて「黄道十二宮」と呼ばれています。英語でいうと「zodiac sign(ゾディアック・サイン)」です。
「黄道十二星座」は、太陽が地球の周りを回っているとする天動説を唱えた、プトレマイオスによる星座の見方です。専門的に見れば、黄道十二宮と黄道十二星座は微妙に異なるのですが、ほぼ同じようなものと考えて問題ありません。
黄道十二星座は本当は「十三星座」だった?
黄道帯にある星座は、厳密にいうと13個あります。黄道十二宮にない星座は「へびつかい座」です。将棋の駒に似た五角形を描く星座で、さそり座といて座の間にあります。
黄道十二宮から外されてしまった理由は、2,500年以上前にさかのぼります。当時、古代の人々はすでに1年を12カ月に分けたカレンダーを作っていました。
黄道帯にへびつかい座があることは分かっていましたが、星座が13個あると暦に不都合が生じるため、あえて十二星座から外したとされています。
現代に伝わる星座の起源
星座の原型を作ったのは、古代メソポタミア文明です。紀元前3000年ごろ、シュメール人やアッカド人が、近くにある星を結んで動物や道具、神様などに見立てたのが始まりではないかとされています。
古代バビロニアへと受け継がれた後、やがて星座の概念はギリシャへ伝わりました。星座にまつわるエピソードにギリシャ神話の神々が登場することからも、星座の起源がうかがえます。この知識を元にしたのが、現代の西洋占星術です。
この説を事実とすれば、今から3,000〜4,000年以上前の人々は、すでに高度な天文学の知識を持っていたということになります。
黄道は古代から現代へ伝わる道でもある
「黄道」の考え方は、太陽が地球の周りを回っていると考えられていた時代に考案されたものです。数千年も前の人々が考案した概念が、現代の天文学にも欠かせない知識となっています。
黄道を意識すると、いつも見ていた空も新しい発見に満ちたものになるかもしれません。子どもと、太陽と星座の位置を想像してみたり、星座や暦にまつわる本を読んでみたりするのもよいでしょう。
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構成・文/HugKum編集部