カレーは加熱しているため日持ちしそうなイメージですが、実は間違い。食中毒のリスクと背中合わせだったことを知っていましたか?ここでは注意したいカレーの保存方法や、正しい保存方法をご紹介します。
実は注意したい! カレーの保存にはルールがある
いまや、日本人の国民食ともいえるカレー。子どもも大人も大好きですよね。大量に作ってストックしておきたくなる気持ちは分かりますが、チョット待った! カレーの保存って、本当はきちんとしたルールがあるのです。
カレーは日持ちしない食べ物
カレーは、加熱しているため、日持ちがしそうなイメージがしますよね。ここが大きな間違い。いつも食中毒のリスクと背中合わせなんです。
食中毒菌にもたくさんの種類があり、カレーやシチューなどに生じるのは、ウェルシュ菌と呼ばれるもの。別名、偏性嫌気性菌(へんせいけんきせいきん)といいます。特徴は、酸素があると増殖できない菌。逆をいえば、酸素がないと増え続けてしまいます。
さらにウェルシュ菌は、耐熱性の芽胞と呼ばれる胞子のような構造体を作ることも。一度、芽胞ができてしまうと100℃で数時間加熱しても死滅しないという…とっても怖い菌なのです。
食中毒のサインを見逃さないで!
ウェルシュ菌の潜伏期は、8~20時間で平均12時間といわれています。夜食べて朝にお腹の調子が悪いという症状が出たら、食中毒の可能性があります。何となくお腹が張るような腹部膨満感から始まり、水溶性の下痢と腹痛などが主な症状です。通常は、1~2日で回復しますが、免疫力の低い子供やお年寄りなどはリスクが高まります。
カレー保存でやってはいけないこと
カレーの保存状態によっては、ウェルシュ菌を増殖させることにつながるので要注意! ここでは、避けたほうがよいNG保存の仕方について説明します。普段の保存法を改めてチェックしてみましょう。
常温保存はNG
例えば、週末の朝にカレーを作って昼ご飯に食べるとします。次の保存法に心当たりはありませんか? 「鍋ごとコンロの上に放置する」「ご飯にカレーを盛ってラップをかけ、食卓へ置いておく」…。実は、このどちらもNGです。
通常のカレールウには粘度があるため、ウェルシュ菌が大好物の無酸素状態になりがち。よく冷たいままのカレーを食べるのが好きという方がいますが、これも絶対に避けてください。ウェルシュ菌は、12℃~50℃程度で最も増殖しやすいことが分かっています。常温保存は、目に見えない菌が増殖している可能性が高く、とても危険です。
鍋ごと冷蔵庫で保存はNG
それでは、作ってまだ温かい状態で鍋のまま冷蔵庫へ入れるのはどうでしょうか? これも答えはブブー! NGです。「食べる時は鍋ごと加熱すればいいからラクなんだもん」その気持ちは、よく分かりますが…。ひと手間でも別容器に移してから保存するようにしましょう。
偏性嫌気性菌のウェルシュ菌は、特に鍋底で繁殖しやすくなります。すぐに食べない場合は、数個のタッパーなどに小分けに。または、氷水などで冷やすのも効果的です。すぐに中心部まで冷やすのが大切なんです。粗熱がとれたら速やかに冷蔵庫で保存しましょう。
はちみつ入りカレーは保存不可
カレーに甘さを加えるために、はちみつを入れる方もいるかもしれません。ご存じの通り、はちみつはボツリヌス菌が繁殖することがあります。乳児ボツリヌス症の影響から1歳未満の子どもに与えないように、と警告されていますよね。
ここでの注意点は、はちみつのボツリヌス菌は、ウェルシュ菌と同じく偏性嫌気性菌ということです。つまり、酸素がないところを好むため、カレーの中で菌を一緒に育ててしまうことにもなりかねません。「うちの子はもう1歳以上だから大丈夫」と、安易に考えないことが大切。保存状態が悪いと菌を増やしてしまいますので、特にはちみつ入りのカレーは保存しないようにしましょう。
カレーの冷凍保存をおすすめしない理由
カレーを冷凍保存することはありますか? その場合は、冷凍用保存袋などに入れて保存していませんか?
ウェルシュ菌の特徴から、10℃以下で冷凍するのが条件ですが、保存状態が悪いと菌を増やしてしまう場合も。また、ウェルシュ菌は、空気がない場所を好むため密閉した袋は避けましょう。家庭用の冷凍用保存袋では、それほど気密性が高くありませんが、最近人気の真空パックなどで保存するのは禁物です。
カレーの冷蔵保存方法
それではカレーを冷蔵で保存するやり方をご紹介します。
保存容器は平らなものを選んで
カレーは、鍋ではなく別の容器に移し替えましょう。保存容器は、なるべく平らなものがおすすめ。厚みがある容器だと、どうしても酸素が入りにくくなるためです。薄い容器では、あまり量が入らないかもしれませんが、基本は“作り立てを食べ切る”ということが大前提です。
食べる時には、しっかり再加熱!
冷蔵庫で保存したカレーは、よく火を通すことが重要。再加熱の温度は、中心温度が75℃で1分以上が目安です。鍋底まで火が通らないことがあるため、全体をしっかりとかき混ぜて空気を入れるようにして再加熱をしてください。
冷蔵保存の保存期間
冷蔵庫保存で1~2日程度。食べる時には、75℃で1分以上の加熱は必須条件です。
正しいカレーの保存法 まとめ
カレーの保存法は、いかがでしたか? 意外とNGな保存法をしていたという方も多いのではないでしょうか。
5つのルールにまとめたので、正しい保存法をもう一度、チェックしていきましょう。
ルール1)
カレーは、ウェルシュ菌を増殖させない・作らない
ルール2)
はちみつはポツリヌス菌の影響もあるため、カレーに入れた場合は早く食べきること
ルール3)
再加熱は、75℃で1分以上。鍋底からしっかり空気を入れるように混ぜながら加熱する
ルール4)
鍋のままや皿ごと放置など、常温保存は絶対に避ける
ルール5)
密閉度の高い保存袋での保存はしないこと
このようにルールさえ守れば、食中毒のリスクを減らすことは可能です。食中毒による健康被害は、家庭の場合は保健所で事件数を把握することは難しいもの。きちんとした正しい保存法を知り、大切な家族の健康を守るように心がけましょう。
撮影・文/川越光笑(たべごとライター・発酵食スペシャリスト)
食べきり!アレンジカレーレシピ
上でご紹介してきたとおり、カレーはなるべく早めに食べきってしまうのがいちばん。そこで、ここでは残ったカレーをおいしく食べ切るアレンジレシピをHugKum編集部からご紹介します。
【1】カレーソーセージピザ
子供が大好きなカレーを使ったピザ。お好みの辛さのカレーを使って。好きな具を載せたら、いつものカレーもまた違った味に。
◆材料
(1枚分)
ピザ生地 1枚
レトルトカレー(甘口) 1袋
ソーセージ 4本
ピザ用チーズ 1/2カップ
ベビーリーフ 適宜
※レシピでは手作りのピザ生地を下焼きしたものを使っています。市販の生地でも代用可。そのまま焼いてください。
◆作り方
【1】ピザ生地にカレーを塗り、縦半分に切ったソーセージを放射状に並べ、チーズをのせる。
【2】220~230℃のオーブンで7~8分焼き、お好みでベビーリーフをのせる。
教えてくれたのは
飛石なぎささん
3人のお子さんのママ。個人でギャラリーも経営しており、その忙しい生活から生まれた、簡単で、パパッと作れて、子どもが喜ぶレシピが人気。
『めばえ』2013年12月号
【2】焼きカレードリア
かぼちゃの甘みを加えたカレーが新しい。チーズを載せて焼くだけでカレーがドリアになって、いつもと違う味わいに。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
豚ひき肉 250g
玉ねぎ 1/4個
にんじん 1/3本
かぼちゃ 1/8個
サラダ油 大さじ1
【A】
小麦粉 大さじ1
カレー粉 小さじ2
水 150cc
【B】
トマトケチャップ 大さじ2
塩 少々
ピザ用チーズ 大さじ6
ご飯 茶碗3杯
◆作り方
【1】玉ねぎはみじん切り、にんじんは5mm角、かぼちゃは1cm角に切る。
【2】フライパンにサラダ油を熱して玉ねぎとにんじんを炒め、玉ねぎに色がついたら、ひき肉を加えて炒める。肉の色が変わ ったら【A】を加えて炒め、香りが立 ったらかぼちゃと水を加え、【B】で調味し、汁けがなくなるまで煮詰める。
【3】耐熱容器にご飯を敷き、【2】のカレーをかけて、チーズを散らす。温めておいたオーブント ースターで10分ほど焼く。
教えてくれたのは
鈴木薫さん
シンプルで、おいしくて、センスのいいレシピが人気。双子の女の子と男の子のママ。
『めばえ』2014年4月号
【3】根菜カレーパン
4種類の野菜を混ぜ込んだカレーを包んでカレーパンに。おやつやランチにパクパク食べられます。
◆材料
(8個分)
【A】
ホットケーキミックス 200g
水 大さじ6
【B】
玉ねぎ(薄切り) 1/4個
れんこん(1cm角切り) 80g
ごぼう(小口切り) 1/4本
にんじん(細切り) 2cm
バター 大さじ1
【C】
カレールー 大さじ2
トマトケチャップ 大さじ1
塩 少々
溶き卵 約1個分
パン粉・揚げ油 各適量
◆作り方
【1】フライパンにバターを熱して【B】を炒め、水150ccを加えて5分ほど煮、【C】を加えて煮汁がなくなるまで煮る。
【2】ボウルに【A】を入れて混ぜ、まとまったら8等分して丸め、楕円にのばす。中央に【C】を等分にのせて半分に折り、端をフォ ークで押さえて閉じる。
【3】【2】に溶き卵、パン粉を順にまぶし、油を深さ1cmほど熱したフライパンに入れ、中温で上下を返しながら揚げる。
教えてくれたのは
鈴木 薫さん
身近な食材で簡単に作れて、おいしくて、センスのいいレシピが人気。双子の女の子と男の子のママ。
『めばえ』2015年10月号
【4】カレー豆乳うどん
純和風なうどんの具在はカレーとあわせてもよく合います。マイルドな豆乳の甘味も絶妙です!
◆材料
(3人分)
【A】
めんつゆ(3倍希釈) 150ml
水 700ml
わけぎ 60g
しめじ 100g
油揚げ 2枚
豆乳 250ml
カレー粉 小さじ1
冷凍うどん 80g×3玉
◆作り方
【1】鍋で【A】を温めて、1cm幅に切ったわけぎ、ほぐしたしめじ、1cm角に切った油揚げを加えて中火で3分ほど煮る。
【2】豆乳、カレー粉、冷凍うどんを加えて温める。うどんがほぐれたら器に盛り付ける。
教えてくれたのは
牛尾理恵さん
うしおりえ/料理研究家。フードコーディネーター。栄養士の資格ももつ。病院での食事指導、料理研究家の助手、料理専門の制作会社を経て独立。おいしく、作りやすく、体にやさしい家庭料理が人気。
『めばえ』2018年2月号
【5】チキンココナッツカレーうどん
ココナッツミルク、クミンでほんのりエスニック風に。辛みはなく、風味だけなので子供でもおいしく食べられます。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
鶏ひき肉 200g
【A】
玉ねぎのすりおろし 1/6個分
塩 小さじ1
カレー粉 小さじ1
クミンパウダー 小さじ1
ココナッツミルク 1と1/2カップ
赤パプリカ 1個
ゆでうどん 3玉
◆作り方
【1】パプリカは横に細切りにする。
【2】鍋にひき肉と【A】、【1】を入れ、混ぜて火にかけ、煮立ったら中火で5~6分煮る。
【3】うどんをサッとゆでて湯をきり、器に盛る。【2】をかける。
*ココナッツミルクは同量の牛乳または豆乳に替えても。
教えてくれたのは
藤井 恵さん
簡単に作れて、栄養バランスがよく、おいしさのセンスが光るレシピが人気。藤井家の毎日のごはんを綴ったブログも参考になります。
『ベビーブック』2014年9月号
構成/HugKum編集部