【沖縄県・あおぞらこども園】自然と人間の中で育つ子ども本来の力【子供の未来を支える場所5】

日本の保育実践を研究する東洋大学ライフデザイン学部准教授の高山静子先生が案内する、豊かな保育環境の世界。

「乳幼児期の子どもは、環境に働きかけ、遊びという形で、何ども同じ行為を繰り返すことによって、環境の性質を理解し、環境に合わせて能力を獲得します。そのため、幼稚園・保育園・認定子ども園では、子どもたちが自発的に環境とかかわりをもち、豊かな学びを得ることができるように環境を構成します」(高山静子先生)

子供たちの学びを支える環境づくりに取り組む、先進的な保育園、幼稚園、こども園をご紹介します!

あおぞらこども園・あおぞら第2こども園(沖縄・南城市)

自然と身体感覚を重視した保育の活動

沖縄・南城市にある「あおぞらこども園・あおぞら第2こども園」では、子どもが自然と人間との中で育つことによって、子ども自身が本来持つ力を伸ばし、子ども時代を子どもとしてゆっくりと生きることを大切にしています。

園庭や保育室には、子どもを自然と人間との中で育てよう、本物の文化と出会わせようといった保育者の思いが感じられます。

また、絵本、歌、リズム運動、描画や造形活動など、教材として選ばれているものには専門性の裏づけがありました。

家庭や地域では体験できない経験を優先し、子どもの発達段階に合ったものを選び、保育の専門家として子どもの文化を提供する姿勢が見られます。

この園の環境には、子どもをひとりの人間として見つめる深いまなざしが感じられます。また専門的な環境づくりの背景には、学び続ける園長と保育者の姿勢がありました。

さらに、園庭でも室内でも、子どもの発達に合わせて、主体的な遊びと保育者が主導する集団の活動とが、とてもバランス良く組み入れられていました。

特に年長児では、粘り強さが必要な活動を選択していることが特徴的です。

子供の多様な体験を想定した豊かな園庭

園で飼っているヤギに子ヤギが生まれました。お世話をするのは年長さんです。

園庭には、集団遊びができる平らな地面や、斜面、でこぼこ、子供の回遊を促したり止めたりする工夫など、多様な空間が意図的に組み込まれています。

砂・土・水・泥・草・木などの自然物も意図的に配置。遊びの中で、思い切り体を動かし、さまざまな学びが得られる環境です。

 

感覚を統合し粘り強い体を育む「リズムあそび」

家庭や地域で減少した運動量をカバーできる活動量の多い「リズムあそび」を取り入れています。「さくら・さくらんぼ保育」の斎藤公子先生の提案する「リズムあそび」は、感覚統合理論とも合致し、障がい児の療育でも注目されています。一人ひとりの発達に合わせて行うことが「リズムあそび」のポイントです。

開放的な室外やテラスでの昼食

木のお皿など食器も自然の素材を使用し、子供が準備しやすいように配膳台を配置しています。

 

ルソーが「エミール」で描いた世界。子ども時代の主人公は子ども

自然と人間との中で育つ

保育では、文化をつくりあげてきた人間の進化の過程を体験することができます。地域で遊ぶ子どもの姿がなくなった現代では、自然と人間との中で育つ体験ができる園での時間は貴重です。

摘める草花を園庭に準備しておけば、子供はすぐに遊び始めます。

みんなで土砂運びをしながら砂場を整備。これも遊びのひとつになります。

本物と出会う、本物で育つ

子どもが出会うものは、本物を選択。その場限りのお楽しみの活動ではなく、地域の伝統文化の伝承や、子どもの発達に合っていること、子ども自身が必要性を感じていることなど、保育のプロとしての根拠がある「本物」が選ばれています。

こま回し、まりつき、縄跳びなど、子供の文化を伝承しています。

シーサーのお面やたこ作りも本格的!

 

体験を土台にした表現活動

体験を土台に表現された、子供たちのすばらしい絵。指先の巧みな動きと、粘り強さが絵に表れています。

 

感覚と運動を重視した保育内容

ルソーは、「人間の最初の理性は感覚的理性である。その感覚的理性こそが、知的な理性の基礎をなしているのだ。われわれの最初の哲学の先生は、われわれの足であり、手であり、目である」といっています。この園には室内にも園庭にも、感覚と運動を育む工夫が施されているのが印象に残りました。

登りやすい木が園庭にあることも、運動環境の工夫の一つです。

傾斜のある原っぱがあれば、自然に子供は転がって遊び出します。

子供たちが自分で染めて縫ってヒモを編んだ「道具入れ」。縄跳びも自分で編んで作ります。

 

より詳しい内容が知りたければ、こちらの書籍で!

『幼稚園・保育園・認定こども園の環境構成 学びを支える保育環境づくり』

高山静子(たかやましずこ)
東洋大学 ライフデザイン学部 准教授
保育と子育て支援の現場を経験し、平成20年より保育者の養成と研究に専念。平成25年4月より現職。九州大学大学院人間環境学府単位取得満期退学。教育学(博士)。研究テーマは、保育者の専門性とその獲得過程。著書に『環境構成の理論と実践』(エイデル研究所)『子育て支援ひだまり通信』(チャイルド社)他。

 

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撮影/藤田修平 再構成/神﨑典子

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