世界中のメディアで取り上げられるほど深刻な環境問題ですが、一口に環境問題といっても地球温暖化やオゾン層の破壊、熱帯林の減少など、さまざまな種類があります。環境問題を改善するための国際的な取り組みや、個人ができることも知っておきましょう。
環境問題が発生した原因
人間の文明が進むことで起こった弊害が、環境問題です。人間が自然界にある材料から作れる道具で農業を行っていた時代は、環境問題はそれほど深刻な課題となっていませんでした。これほどまでに環境問題が世界中で叫ばれるようになった原因について紹介します。
人間活動の急速な拡大
人間の生産活動は、農業や水産業、林業などの一次産業が主流でした。当時の人間は環境と共存できていたといえます。環境に与える影響はそれほど大きくなく、環境や自然界に住む動物の生活に支障を来すことはほとんどなかったといえるでしょう。
しかし、18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命で人間活動は大きく変化しました。石油や石炭といったエネルギー資源を使い、工業機械や蒸気機関車などを使うようになったのです。
その結果、人間の生活は豊かで便利になっていきます。しかし、文明を発展させることばかりに意識が向き、環境のことを配慮せずにいたため、自然との調和を図れなくなったのです。
例えば日本では、高度経済成長期に「公害」が頻発しました。環境汚染因子の処理をきちんと行うようになったのは、その後のことです。人間活動の急速な拡大により、環境破壊が起こっているのは紛れもない事実です。
環境問題の主な種類
環境問題にはどのようなものがあるのでしょうか。日本において環境問題は、公害という過去の反省も活かして、テレビ番組などで取り上げられることもあるほど奥深いテーマです。今一度、環境問題の主な種類についておさらいしてみましょう。
地球温暖化
代表的な環境問題として、「地球温暖化」が挙げられます。人間活動により二酸化炭素を始めとする「温室効果ガス」の濃度が高まり、地表面の温度が上昇している問題です。
太陽からの光熱は、地表面で吸収されます。加熱された地表面から放射された熱が温室効果ガスに吸収されることで、地球の平均気温は約15℃に保てています。もし温室効果ガスがないと、地球の平均気温は-18℃になってしまうのです。
しかし、産業の発展に伴って、ちょうどよい状態で維持できていた温室効果ガスの濃度が高まり、地球の平均気温の上昇が起こっています。その影響で、南極などの氷が溶けて海面が上昇したり、生態系の乱れが生じているのです。
オゾン層の破壊
目に見えないものでは、「オゾン層の破壊」も進んでいます。オゾン層とは、地球の表面から10〜50km上空で紫外線を吸収する働きを持っているものです。強すぎる紫外線は人間の健康にとっても悪影響を与えるので、オゾン層が紫外線から人間を守ってくれているといえます。
しかし、人間が作った「フロン」という化学物質が、大気中の紫外線と作用してオゾン層を破壊してしまっているのです。フロンは冷蔵庫やエアコン、空調設備のあるビルなどから放出されます。
熱帯林の減少
地球温暖化とも関連する二酸化炭素は、「熱帯林の減少」により増加しています。
世界中にある森林の割合の大部分を占める熱帯林ですが、1990年から95年のたった6年間で5630万ha減少したといわれています。減少原因としては、過度の焼畑耕作や薪炭林の過剰摂取、森林の伐採による土地開発などがあります。
熱帯林の減少によって二酸化炭素が増加するだけでなく、多くの野生動物が生きる場所を失っています。その影響は、野生動物の絶滅をも招いてしまうのです。
海洋汚染
「海洋汚染」も深刻化しています。人間が使い捨てているペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみが、海に流れたり海辺に蓄積したりしているのが原因です。
これら海洋ごみは生態系に大きな悪影響を及ぼしています。ウミガメやクジラ、イルカなどの海の生き物がプラスチックごみを摂取してしまい、命を落とすことも報告されているのです。
また、船舶事故により油が海に放出されてしまうことや、工場から化学物質を排出することも問題になっています。海洋生物だけでなく、海洋環境そのものにも悪影響を与えているといえます。
参照・環境省|環境経済基礎情報
生物多様性の減少
熱帯林の減少や海洋汚染などによる生態系のバランスの乱れで、生物の多様性が失われつつあります。
加えて、人間が食料や服飾用として生物を乱獲してしまっている現状もあります。生物保護の観点から規制がかけられていますが、そのルールを守らず密猟が行わてしまっているのです。
また、日本でも人間が外来種を国内に持ち込んだことが問題となっています。近年、外来種が在来種を捕食したり生存競争に勝ったりして、生態系の変化も懸念されています。在来種の生存が危機的状況にある品種も少なくありません。
世界や我が国の環境問題への取り組み
悪化する環境問題には、世界が一丸となって取り組まないといけません。世界や日本が行っている環境問題への取り組みについて見ていきましょう。
国際的な条例
国際的な条例としては、「パリ協定」や「気候変動枠組条約」「京都議定書」「ウィーン条約」「生物多様性条約」などさまざまなものがあります。
例えば、パリ協定は先進国と発展途上国を合わせた190カ国以上が参加した大規模な取り組みです。全ての参加国と地域に、2020年以降の「温室効果ガス」削減目標を定めることを求めており、日本は30年までに26%削減する目標を立てています。
日本の条例
日本独自でも「環境基本法」や「地球温暖化対策推進法」などを策定し、環境問題に取り組んでいます。
環境負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築や、地球環境保全の積極的な姿勢を掲げているのです。環境省を設置し、6月5日を「環境の日」と定めて、世界の国々と協力していく姿勢を見せています。
私たち個人ができることは?
環境問題を改善していくためには、私たち一人一人が行動を改めないといけません。日常生活で意識できることを考えていきましょう。
ごみを減らす、分別をする
ごみの減量と分別は、簡単にできる環境対策です。ごみを処分するときに発生する二酸化炭素やダイオキシンなどは、地球温暖化を進める要因になります。そのためごみを減量させることで、地球温暖化からつながる生態系の乱れも改善できる可能性があります。
分別を徹底して行い、リサイクルできるものを最大限利用することも大切です。2020年から日本で始まったレジ袋有料化もその施策の一つなので、エコバッグを持ち歩く習慣を身に付けましょう。
省エネを意識して行動する
マイボトルを持ち歩いて、ペットボトルごみを減らすのも有効です。マイボトルに買ったドリンクを入れると、数十円安くなるカフェもあります。
その他、シャンプーや食器用洗剤は詰め替え用を選んだり、必要のない包装は控えたりするのもよいでしょう。意識すると、省エネに貢献できることはたくさんあります。
環境に配慮した商品を選ぶ
再生品を利用した環境に配慮した商品を選ぶ姿勢も持ちたいところです。リサイクルマークが付いている商品を、積極的に買うようにするのもよい取り組みでしょう。
また、使い捨てではなく、長く使える商品を選ぶのも大切なことです。自分が出したごみは、少なからず環境へ影響を与えていることを自覚しましょう。
参照:WWF JAPAN|環境保全のために普段の暮らしの中でできること
地球環境を守る取り組みを始めよう
環境問題には、地球温暖化やオゾン層破壊などさまざまな種類があります。地球環境を守るために、世界的にも日本でもあらゆる対策が取られていますが、それだけでは不十分でしょう。
環境問題への意識は個人差があるかもしれませんが、必要なものを必要なだけ買う、詰め替え用品を選ぶ、ものを大事に長く使うといったことは自身のメリットにもなります。環境問題というと大きなことのように思えるかもしれませんが、一人一人の行動から見直すべき課題なのです。
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構成・文/HugKum編集部