つい感情的になってしまったり、何度言っても言うことを聞かなかったり、子供の叱り方って本当に難しいですよね。叱り方を間違えると不用意に子供の心を傷つけてしまうかもしれません。親の思いがきちんと届く上手な叱り方のどのようなものなのでしょうか?発達段階や年齢によって効果的な叱り方も異なってきます1・2・3歳児や4〜6歳、小学生と年齢別に詳しく解説!パパママのお悩みにもお答えします。
こんな叱り方していませんか?子供のダメな叱り方
子供の自尊心を傷つける叱り方
「そういうことはしてはいけないよ」「これはこうしようね」と、子どもがしたことに対して注意をしたり、マナーを伝えたりすることは必要なことです。しかし、子どもの自尊心を傷つけるような叱り方は問題です。例えば「お前なんかいらない」「バカじゃないの」というように、子ども自身の存在を否定する言葉を言って叱ることはいけません。また、怒鳴ったり、暴力をふるって叱ったりすることも絶対に禁物です。
叱り過ぎてしまったあと、謝らない
子どもを冷静に注意したいと日ごろから思っていても、ときには気持ちに余裕がなく、子どもを叱り過ぎてしまい、後悔することもありますよね。大切なのはその後の対応!「さっきは叱り過ぎた。ごめんね」と言って、子どもにきちんと謝りましょう。「親のプライドがあって謝れない…」のは自分に自信がないからです。子どもは親の姿を通して、社会の規範を学びます。間違ったときに謝ることの大切さを、自らが子どもに示すことが大事です。
また、子どもが何かしてくれたら、「ありがとう」と欠かさず言いましょう。子どもがいい行いをしたとき、きちんとほめることは叱ることより大切です。
叱り方に一貫性がない
同じことをしたにも関わらず、あるときは親の気分によって見逃したり、あるときは虫のいどころが悪くて強く叱るようなことがあると、子どもは戸惑います。一貫性のある叱り方をすることが大切です。また、パパママが何に対していちばん大切な気持ちを持っているかを伝えることも重要です。例えば「うちは弱い者いじめと盗みには厳しく対処する、その反対に不注意や失敗には寛容に対応しよう」など、夫婦で話しあっておくと良いでしょう。
1,2,3歳ごろの乳児の叱り方
1・2・3歳は1歳ごとに発達段階が大きく異なり、行動にも差があります。年齢別の行動の特徴を理解して、気をつけてあげるべきポイントを解説します。年齢別の特徴を意識することで叱る回数も減らせるはずです。
この時期の子供の様子
1歳:周りの世界を「知りたい」という好奇心が強くなる
1歳代は家のさまざまな場所を探検したり、いろいろなものを触って確かめようとしたりすることが増える時期。危ないものや触られたくないものは、子どもの手の届かないところに片づけておきましょう。「触っちゃダメ!」と注意する回数を減らせます。
2歳:「イヤ!」「ダメ!」を連発するように
「イヤ!」「ダメ!」が多くなるのは感情を表現する言葉をほかに知らないから。砂場で遊ぶのを「イヤ!」と言ったら「ぶらんこのほうが好きなんだね」とおうちの方が「こちらが好き」という言い方にかえると、「好き」「こうしたい」といったプラスの感情を自覚できるようになります。
3歳:言葉で伝えればわかることが増える
3歳は言葉の理解がぐんと進む時期。注意するかわりに、前もって「5時になったら片づけようね」などと約束しておき、それを守るように声かけを。社会のルールも少しずつ理解できるようになるので、大人がお手本になる態度を示しながら、公共の場でのマナーも教えていきましょう。
パパママたちが頭を悩ませるイヤイヤ期の対処法は?
イヤイヤ期の対処法は子供の気持ちを受け止めることがもっとも重要!保育士さんも実践する《3ステップ》を心がけてみましょう。
《ステップ1》落ち着ける場所へ移動する
お店や乗り物の中で泣き出したら外へ出る、家の中であれば静かな部屋に移動するなど、空間が変わるだけでも子どもは気持ちを切り替えやすくなります。外でイヤイヤが始まったときも、人通りの多い場所から離れれば周囲の目をあまり気にせずに済むので、おうちの方が落ち着いて対処できるようになるというメリットもあり。
《ステップ2》「イヤだったんだね」と声をかけて抱きしめる
「イヤだったんだね」と声をかけてギュッと抱きしめ、子どもが落ち着くまで背中をトントンしてあげて。泣き出した原因が何であれ、ママの体のぬくもりに触れて「気持ちをわかってもらえた」と実感できると、子どもは安心します。「静かにしなさい!」と怒ると、子どもは気持ちのおさまりがつかなくなるので逆効果です。
《ステップ3》その先にある楽しい見通しを伝える
子どもは目の前のことしか見えていないことが多いので、「おうちへ帰ったらおやつを食べようか」というように先の見通しを伝えて、これから待っている楽しいことに意識を向けられるようにしましょう。この経験を重ねると、子どもは「イライラしても楽しいことに目を向ければ気持ちを切り替えられる」ということを学べます。
乳児へのしつけ・ほめ方・叱り方のコツ
「ダメ!」と叱ってばかりなのに言うことを聞いてもらえないときは、おうちの方が行動を変えると、ガミガミ言わずにすむようになることも。関わり方を見直してみましょう。
物を投げるとき
1 歳半から2 歳くらいの子がおもちゃなどを投げるのは、身体の発達に伴い、腕の力をきたえようとしているから。外遊びでボール投げをするなど、腕の筋肉を動かす遊びを提案すると、その遊びに夢中になって気持ちが切り替わりやすくなります。
遊び食べをするとき
1~3歳の子が飽きずに食べられるのは、せいぜい10 分から長くても15 分程度です。あらかじめ「10 分くらいが限界」と想定しておき、遊び食べを始めたらすぐに「ごちそうさま」を。食卓から解放してあげれば、食べもので遊ぶこともなくなります。
危ないことをしたとき
身の危険があるときは、遠くから「やめなさい」と呼びかけるより、子どものそばに行って体ごと抱き止めるほうが効果的です。2 歳代までは言葉だけで言って聞かせるのは難しいので、言葉で説明するよりもまずは行動をやめさせることを第一に考えて。
ほめ方のコツは?
言葉の意味を理解することがまだ難しい1歳代では、手をたたくなどオーバーな表現も交えたほうが伝わりやすくなりますが、2歳を過ぎたころからは普通の話し方で十分に伝わります。おうちの方が無理をして「すごい!」「えらい!」とオーバーなほめ方をする必要はなく、絵をほめるのであれば「お母さんはこの絵が好きよ」と素直な気持ちを伝えましょう。
「こんな時どうする?」パパママのリアルなお悩みQ&A
Q外出先では周囲の目があり大声では叱れません。どうすればいいですか?
A 外出時にはできるだけ子どものそばにいるようにすると、何かあったときにもすぐに体を制止したり、「ダメ」と小声で注意したりすることができるので、大声で叱らなければならないようなシチュエーションを減らせるはずです。電車やバスの中で静かにしていてほしい場合は、あらかじめ音の出ないおもちゃや小さな絵本などを用意しておきましょう。
Q買い物に行く時間になっても遊びをやめないので、いつもイライラしてしまいます。
A 気持ちはよくわかりますが、「買い物に行きたい」というのは大人の都合です。子どもには「一緒に買い物に行ってもらえる?」ときちんと言葉にしてお願いしましょう。大人の都合に合わせるのを当たり前だと思わず、日ごろからひとりの人間として尊重する関わり方をしていれば、子どもはいざというときには大人の要望を聞き入れてくれるものです。
Q叱るべき場面でも、子どものかわいい表情を見ると、あまり強く叱れません。
A 子どもは自分がいけないことをしたときに「それはダメ!」とはっきり言ってもらうことで、「この人は自分としっかり向き合ってくれている」「自分は愛されている」という実感をもてるようになります。何でも許すことが愛情ではありません。かわいいと思うならなおさら、注意すべきことはしっかり伝えることで、子どもと心を通わせていきましょう。
4,5,6歳の幼児の叱り方
集団生活を通して、社会や集団のルールを少しずつ理解してくる時期。友達との関わり合いの中で他者の気持ちを理解したり、思いやりの心を育んでいきます。就学も視野に入れてルールをきちんと守らせるような習慣づけをしたいですね。
この時期の子供の様子
4歳ごろになると、幼稚園や保育園などで集団生活を行う子も多くなります。言葉が増えたり、運動能力が発達したりと様々な成長が見て取れる時期です。「食事」、「早寝早起き」、「排泄」、「衣服の脱ぎ着」、「清潔」など基本的な生活習慣をしっかり身につけたい時期でもあります。また、お友達との関わりあいも増え、トラブルも多くなります。
5,6歳になると、身の回りのことは一通りできるようになってきます。お兄さんお姉さんとして年下の子供だちの面倒も見れるように。就学準備も視野に入れ、「家庭での約束ごとやルール」をきちんと守らせるようにしたいですね。そうすることで、外でもルールが守れる子供になります。
幼児に効果的な叱り方は?
やってはいけない理由を説明する
例えば「熱くて火傷をするので触ってはダメ」というように、やってはいけない理由を必ず説明しましょう。目線を合わせて、「こういうことをして大ケガをしたら、パパやママと離れて病院にお泊まりしなければならなくなってしまうよ」と真剣に伝え続けることが大切です。
変化球を投げて子どもの逃げ道をつくってあげる
例えば、子どもが靴を履こうとして、ぽーんと靴を放り投げた。その時「拾ってきなさい」と「正しいこと」を言うと、子どもの心はかたくなになるばかりです。そんな時は「あ、その靴いらないんだったら、ママ、もーらい」などとユーモアを交えた変化球を投げると効果的。子どもは、あわてて履いたりします。また、叱った時「謝りなさい」とストレートに言うのも、子どもを追い詰めることに。「買い物に行こうか」とか「ちょっと手伝って」と気分を変えてあげると、気持ちを立て直して、「ごめんね」と言いやすくなります。
この時期の子育てを楽しく乗り切るコツ
「頑固=意思が強い」のように、子どもの性格は、別の見方が可能!例えば、「やんちゃ坊主=元気があっていい」、「引っ込み思案=物事に慎重」など。視点を変えると、うちの子、こんないいところもあるんだと、新しい発見もあります。せっかく子どもが持っている性格です。長所として見ていきましょう。
また、「○○ちゃんはもうできるのに、うちの子はまだできない」など他の子と比べる相対評価だとマイナス面が目につきます。でも、子ども自身の中で比べる絶対評価をすれば、ポジティブな見方ができるのです。わかりやすいのは、1年前と比べること。「こんなこともできるようになったんだ」と成長や努力のあとが見えます。変化がないように見えることも、「1年間頑張って続けたね」とほめるべきことです。そして、ママ自身のことも、ほめてあげたいですね。
「こんな時どうする?」パパママのリアルなお悩みQ&A
Qつい感情的に怒鳴ってしまったときは、どうフォローすれば?
A 子どもが落ち着いたら「ごめんね。さっき怒鳴っちゃったね」と声をかけ、一緒においしいものを食べる、体を使う遊びをするなどして、親子で楽しい時間を過ごしましょう。時間が経ってから何が悪かったかを説明しても子どもにはわからないので、次からは注意すべき行動をしたその場で「こういう理由でそれはダメ」と短い言葉で伝えていきましょう。
Q男の子と女の子で効果的なほめ方・叱り方に違いはありますか?
A どんな言い方が伝わりやすいかは男女差よりも子どもの個性による違いが大きいといえます。ただ、傾向としては、男の子は「なぜなのか」という根拠がわかると納得しやすく、女の子は「かわいそうだよ」などと情緒に訴えかけられると心に響きやすいという面が見られることが多いようです。
小学生の叱り方
小学校の学年別の成長段階に合わせて、子供との接し方も変化をさせていきましょう。
小学生はどんな時期?
1年生:特徴は素直なこと
1年生は、言われたことを言われた通りにしようとする、素直なところが1年生の最大の特徴。よって、適当なことを言われたり、曖昧な指示をされたりすると、戸惑ってしまいます。まだ、融通が利かない時期なので、なにかお願いするときには、具体的に丁寧に言うようにすれば、しっかり伝わります。
2年生:ちょっぴりお兄さん・お姉さんに成長
2年生になると、1年生のころとは比べものにならないくらいにしっかりとしてきます。自我がはっきりとしてき自己主張をするように。子供同士で「秘密」や「ないしょ」を持ち始めます。これは自然なことなので、不安視しなくても問題ありません。まだ幼いので、きちんと対話をすることで「秘密」を話してくれることも。
3年生:生活も学習も大きく変化する時期
3年生の大きな特徴は、学校内で「グループ化」です。そのことでいろいろな問題が発生し、人間関係が難しくなります。子どもたちは、そのような問題やもめごとを通じて成長していきます。悪口もたくさん言うようになります。外ばかり見て自分の内側に気持ちが向かないので、深い反省などができません。叱られても同じことを繰り返してしまいますが、根気よく言葉で注意するようにしてください。
4年生:高学年ぽく大人びてくる
4年生の後半(夏休み明け)になると、高学年ぽくなってきます。見かけは落ち着いて見えるのですが、「心が自分の内面に向かっていく」時期です。自分のこと、学校のこと、友だちのことを話題にしなくなります。また、隠し事も上手になってきます。保護者には我が子の家の外での実態がつかめなくなってきますが、きちんと対話すれば問題ありません。
5年生:思春期に突入する時期
思春期は、子どもから大人に成長する過渡期。体の変化も表れ始めます。身長が伸び、男の子は顎をさすったり、女の子は胸を気にし出します。心の中でも変化が起き、ざわついたような気分で落ち着かず、不安定になることも…。特に女子のほとんどは、思春期であると考えて接することが大切です。ちょっと不自然な動作が始まったら注意しましょう。
6年生:責任と自覚を求められる時期
子供によってはこれは、過大な要求に感じ、負担になることも。子どもにはそれぞれ特性があるので、「あなたはあなたなりの目標でいいんだよ」と、個人に合わせた目標をつくるとよいでしょう。それでも、6年生になると、どの子も最高学年という自覚はあります。そのプライドも大切にしてあげましょう。
小学生のしつけ、ほめ方叱り方のコツ
叱るときは全力で
少しずつ小さな「叱り」を繰り返すことを「小言」と言います。小言は子どもにはほとんど響きません。子どもにとってただうっといしいだけなのです。力を入れて思いっきり叱ると、本気度も伝わります。しかも疲れるので、何度も繰り返しにくいのもいいところです。そして、叱った後はすっきりさせて後にひきづらないようにしてください。注意したいのは、全力の叱りをたくさん繰り返すこと。これをやってしまうとDVになってしまいます。全力で叱るのは、1週間に1回までにしましょう。
「私は〇〇なんだ」と自分主語で話す
「あなたが悪いんでしょ」ではなく、「私はそういうことは嫌いなんだ」、「私はそういうことを見ると嫌な気持ちになる」などのように叱ることで、子どもの人格を否定しないですみます。そうすることで子どもは傷つきません。また、叱りっぱなしではいけません。叱ったあとは、子どもを嫌っているわけではないこともちゃんと伝えます。「あなたが大事だから叱るんだよ」、「あなたを大事にしているよ」と、心があたたまる言葉がけをしてあげるようにしましょう。
また、叱るときは自分自身が普段どういう姿を子どもに見せているかを踏まえておきましょう。親ができていないことを自分だけ叱られても、子どもは納得いきません。叱る前に自分のことを振り返ることも大切です。
ほめ方のコツは?
子どもにはほめてほしい時期があります。そのタイミングがぴったりいくと、ほめたことが生きてきます。自分ではがんばったけれど、ちょっと不安なとき「あなたのがんばりはすごかったね。誇りに思うわ」などと言えば、ぐっと子どもの力になります。しかし、なんでもほめれば良いというものではありません。大したことではないことをほめられると、子どもは逆に気分を悪くすることも。中学年以上の子どもにとって、おおげさにほめられることはうれしいことではありません。
また、ほめるよりも大事なことがあります。それは”笑顔”です。子どもたちは、ほめられることよりも保護者の笑顔が大きなモチベーションになります。「こうしたことが、お母さんの笑顔につながる」と思うと、がんばれる子どもは多いのです。
「こんなときどうする?」パパママのリアルなお悩みQ&A
Q「なぜ宿題をしなければいけないの?」と聞かれたら?
A そんなときは、「世の中に出たらね、したくなくてもしなければならないことがたくさんあるんだよ。そのときにね、嫌なんだけど宿題をしていた経験があると、がまんしてがんばれるんだ」などと言って、子どもたちを理屈で説得して、納得させてください。
Q学校のことをあまり話さなくなり、様子がわかりません
A思春期になってくると学校のことをあまり話さなくなります。そんなとき「うなずきながら聞く」「相槌を打ちながら聞く」「ほめたり認めたりしながら聞く」”傾聴三動作”と”笑顔”を心がけると、しっかり聞くことができます。また、あらたまって聞くのではなく、横から独り言のように、また用事をしながらたずねると答えてくれます。本来は何かしながら聞くのはよくないことですが、思春期にはその方が聞きやすいでしょう。
子供の年齢が上がるにつれて、親の悩みにも変化が見られます。乳幼児期はしつけやマナーについてのお悩みが多かったのですが、小学生になると一気に勉強に関する悩み事が増えてくるようです。しかし、いくつになっても悩み事が変わっても、常に子供の心に寄り添い、適切な叱り方ができるようにしたいですね。
文・構成/HugKum編集部