【大豆生田啓友先生の研究から】「人形遊び」が育てる、子どもの「自己肯定感」「コミュニケーション力」「やりぬく力」

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「人形遊び」の重要性とは?

大豆生田啓友先生による、保育園で実施した「1~2歳児の研究 子どもの人形遊び」。

前回の記事では、人形とぬいぐるみの違いや、人形を使った遊びの豊かさについてお伝えしました。
今回は、人形遊びが育む「非認知的な育ち」と家庭で参考になる人形との関わり方についてお聞きしました。

研究を行った保育園の実例レポートをまじえてご紹介します。

非認知的な能力とは
文字の読み書きや計算などの認知能力に対して、非認知的な能力とは、コミュニケーション力、自分の気持ちのコントロール、やりぬく力などを指します。乳幼児期のみならず、その後の育ちも含めて重要な育ちであると注目されています。

大豆生田啓友 (おおまめうだ ひろとも)先生 プロフィール>
玉川大学教育学部・教授。
青山学院大学大学院を修了後、青山学院幼稚園教諭等を経て、現職。 専門は乳幼児教育学、保育学、子育て支援。
『非認知能力を育てる あそびのレシピ 0歳~5歳児のあと伸びする力を高める』(講談社・こころライブラリー)など著書多数。

お世話遊びが「自己肯定感」を育てる

園でお人形を初めて目にした子どもはまず、小さな赤ちゃんを相手にするように、自分が大人からしてもらったようなことをお世話することが多かったですね。

その後、自分の遊びのパートナーのようにしていきましたが、今回の研究が、非認知的な育ちとどう関係してくるのかなと思いながら見ていました。

子どもが〝自分自身〟を大事にするということは、自分で自分をケアしている行為でもあり、自分のことを大事に思えるという気持ちは「自己肯定感」と呼ばれ、非認知的な育ちに含まれるものです。

自分で自分をケアする行為は、お人形を通して自分自身を肯定的に受け入れていくという行為でもあるように読み取れます。

人形のお世話に集中する遊びの中で、親などからされてきた愛情ある関わりを想像し、安心感から得られる「自尊心」を育てることにつながる可能性があります。

ままごと遊びが減っている今の子どもたち


最近は、保育者の方などから、家庭や園でのおままごと的な遊びが減ってきていると聞くことがあります。それは、かつてあったような家庭や地域での生活体験やそのモデルが見えにくくなったからかもしれません。

しかし、おままごと遊びで何かを見立てたり、自由な発想で遊びを作ったり、自分と違う他者になってみることは、イメージする「想像力」、遊びを生み出す「創造力」、友達と一緒に気持ちを合わせる「コミュニケーション力」など多様な非認知的な育ちを育んできたと考えられます。

今回、お人形が園生活の中に入ることで、小さなお友達のような感覚で人形をお世話したり他者とつながったりするようになり、子どもと人の関わりが明らかに増えました。

人形を介しての「ごっこ遊び」は、お世話の遊びになったりするなど、おままごとと同様に遊びや関わりの豊かさを生み、非認知的な育ちへと通じていく可能性があります。

大事な「共感」「夢中になる」など非認知的な育ちにつながる可能性

ちいさなたね保育園 1歳児 「靴下を履かせたい!」

大豆生田先生

子どもの育ちにとって重要なことのひとつが「共感」です。人類が存続してきた理由として、他の人に対する共感や思いやり(利他性)があると言われています。
他者に共感することを育んでいくために、人形を自分に重ね合わせたり、ときには横並びに他者として扱ったりすることは重要だと思います。

人形を媒介にした他の子との遊びから、他者の気持ちを理解しようとする「共感」が生まれる可能性があります。
そして遊びが重要な学びなのは、根底に興味・関心や親しみがあるからです。

「服を着せたい」「おんぶしたい」「だっこしたい」という気持ちから、遊びに夢中になったり、上手にお世話したいという試行錯誤や工夫するエネルギーが生まれてくるのです。
興味がないことを勉強させられたら嫌になるけれど、自分が興味があることだから「人形をおんぶしてみたい」と工夫する試行錯誤や、諦めずに「やりぬく力」が生まれます。そうした何かをやりぬこうとすることは、非認知的な育ちを培う上で重要なポイントです。

保育士 服を着せるのは脱がせるよりも難しいのですが、 2人とも「やって」などと言わず、集中して根気強く挑戦していました。

ゆうゆうのもり幼保園 1歳児 「2つのお人形と一緒に!」

保育士 保育士におんぶ紐を渡してきて、1体をおんぶさせるともう1体を連れてきました。その次はだっこのお願い。1体をだっこさせると、自分で2体目をだっこしようとしていました。

ちいさなたね保育園 2歳児 「お人形の居場所ができて嬉しそう」 

保育士 新しくなった部屋を、さわったり見つめたりして笑みを浮かべていました。かわいいお部屋に大好きな人形が並んでいるのが嬉しかったのだと思います。

鳩の森愛の詩瀬谷保育園 2歳児 「お父さんミルクあげてください」

保育士 普段から0歳児クラスをよくのぞいているおとうさん役の子。大人の関わりをよく見ているのだなと感じた瞬間でした。

人形への関わり方で子どもに伝えられるメッセージ

ときどき、人形が他のおもちゃと一緒にバサッと乱雑に箱に入れられている園を見ることもあります。一方、人形を「人」のように大事に扱う園では、丁寧にベッドに寝かせたり、専用のおうちにしまうなど、人形をとても大切にしているのです。

海外などで乳幼児期から人権意識を大切にしてる国では、肌の色が違う人形が揃えてあったり、ひとりの人間のように人形が尊重されている姿を見ることがあります。もちろん、日本でもそのような園を見ることもあります。その一方、人形が乱雑に扱われ、ボロボロでも仕方ない、数もないので奪い合う姿が日常化している姿を見ることもあります。それは、とても残念なことです。

まさに人形(ひとがた)でもあるわけですし、人形を本当の人のように大事に関わることを推奨していけるといいなと思います。例えば、しまう場所をきちんと決めて「今日はもうねんねだね、◯◯ちゃん(人形の名前)も寝ようか」というように丁寧に関わるのです。そうすると、子どもも人形を人のように丁寧に扱うようになっていきます。

子どもがこれほどまでに人形を、小さな赤ちゃんのように、自分のことのように大事に扱うのですから、大人もそういう姿勢で人形を扱っていくことが大切です。

もちろん、調査した園では、個々の子どもにも人形に対しても、そのような温かい関わりをしているから、そういう姿が見られたと言ってもいいでしょう。

大人が丁寧に関わることで、「お人形を大事にするように、あなた自身も大事にされているんだよ」という子どもの自尊心を育むメッセージにもつながっているしょう。
同様に、家庭においても人形が大事な存在として扱われるとよいですね。

「自分が大事な存在で、他者も大事な存在だ」ということが培われる媒介として、人形が果たす役割は大きいと思うのです。

家庭でも大切にしたい人形遊び

本研究を通して、園において人形が丁寧に置かれることが、人形への親しみを育み、人形を丁寧にお世話する姿が生まれ、他者との豊かなつながりが生じることが見えてきました。

人形が子どもと横並びの対等な関係にある友達のようになったり、子どもたちが夢中になって積極的に関わって遊んでいる姿がとても印象的でした。保育の場でも家庭でも参考にしたいところですね。

次回の記事では、研究が行われた保育園を取材し、保育の現場で子どもたちが「人形とどのように関わっているか」をお伝えします。

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文・構成/村重真紀 撮影/横田紋子