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「人権デー」ってどんな日?
1950年に国際連合(以下:国連)が制定した「人権デー」をご存じでしょうか?「世界人権デー」「世界人権の日」などとも呼ばれる国際デーのひとつです。英語表記は「Human Rights Day」。今回は、人権デーが定められた目的・歴史・由来、そして、日本や海外における取り組みなどをわかりやすく解説します。
人権とは?
そもそも「人権」とは、どのような権利を指すのでしょうか?
日本の法務省人権擁護局は『人権の擁護』と題した冊子に、「『人権』とは、『すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利』あるいは『人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利』であり、誰にとっても身近で大切なもの、違いを認め合う心によって守られるものだと考えています。子どもたちに対しては、『命を大切にすること』、『みんなと仲良くすること』と話しています」と書いています。
人が人として生きていくために、誰でも、いつでも、どこでも、守られるべき基本的な権利。それが「人権」です。
2021年の「人権デー」はいつ?
国際的な記念日になっている人権デー。国連は、何月何日に制定しているのでしょうか? 2021年の人権デーの日付と曜日を確認しましょう。
今年の「人権デー」は12月10日金曜日
人権デーは「12月10日」に定められており、日付が変わることはありません。今年の人権デーは、12月10日金曜日です。過去3年と来年以降3年の曜日は、以下の通りです。
2018年12月10日月曜日
2019年12月10日火曜日
2020年12月10日木曜日
2022年12月10日土曜日
2023年12月10日日曜日
2024年12月10日火曜日
「人権デー」とは?
ここからは、人権デーの目的・歴史・由来をわかりやすく紐解いていきます。人権デーが制定された背景には、第二次世界大戦中に起きた特定の人種に対する人権侵害や人権抑圧、さらには迫害、大量虐殺が大きく関わっているようです。
目的
国連が制定する人権デーは、人間なら誰もが持っている人権の保護と基本的自由の尊重を国際社会に訴えかけ、人権尊重の思想を世界に広めることが目的です。人種、宗教、性別、言語、思想、社会的出身、出生、財産、地位などが原因となる、あらゆる種類の差別と不平等を根絶するため、また、すべての人の社会的・経済的・文化的な権利を向上させることを目指しています。
歴史
1945年に設立された国連は、2度の大戦、特に第2次世界大戦で横行した特定の人種に対する人権侵害、人権抑圧、さらには迫害、大量虐殺を国際社会で解決すべき問題としました。翌1946年、第1回国連総会で、あらゆる場所のあらゆる人の権利を保障するための案「基本的な人権と自由に関する宣言」を審議。その2年後となる1948年の12月10日、第3回国連総会において、基本的人権尊重の原則を定めた「世界人権宣言」が採択されました。さらに1950年の第5回国連総会で、世界人権宣言が採択された日である12月10日を人権デーに制定しました。
由来
人権デーに定められた12月10日は、世界人権宣言が採択された日。世界人権宣言は「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を定めており、歴史上初めて国際的な人権保障の目標や水準、基本的人権尊重の原則を宣言したものです。法的拘束力はないものの、世界各国の憲法や法律にその考え方が取り入れられ、さまざまな国際会議の決議にも用いられるなど、国際社会に影響を与えています。1966年に国連で採択された「人権条約(社会権規約と自由権規約)」の基礎にもなっています。
「人権デー」の日本の取り組み
12月10日の人権デーにあわせ、日本でも人権の普遍性・平等性・不可侵性を訴えるため、さまざまなイベントやキャンペーンが展開されています。人権デーにおける日本政府(法務省)の取り組みを見ていきましょう。
「人権週間」の制定
法務省は1949年から12月4日~12月10日の1週間を「人権週間」と定めています。世界人権宣言の趣旨や重要性を広めていくため、いろいろな関係機関や団体、メディアなどと協力し、全国各地での人権啓発活動を展開しています。
「人権擁護委員制度」の創設
1948年に創設された「人権擁護委員制度」は、法務大臣から委嘱を受けた民間人による組織です。人権擁護委員は、区域ごとの「人権擁護委員協議会」と都道府県ごとの「都道府県人権擁護委員連合会」、さらに全国を取りまとめる「全国人権擁護委員連合会」で構成されています。人権尊重思想の普及を図るため、シンポジウムや講演会、映画会などの各種イベントを全国各地で開催しています。
人権擁護活動シンボルマークの制作
「人権擁護活動シンボルマーク」は、法務省が人権の啓発・広報活動に統一性や独自性を持たせ、その活動をより効果的に推進することを目的に制作したものです。人権は、世界中の誰もが持って生まれたものであり、最優先に尊重され、共存するという願いが込められています。
「人権デー」の海外の取り組み
海外でも人権の重要性を訴えるさまざまなキャンペーンやイベントが開催されています。ここでは、2020年の人権デーに際して、海外で行われた取り組みご紹介します。
「国連人権高等弁務官事務所」によるオンラインイベント
「国連人権高等弁務官事務所」は、オンラインイベントを開催。ジュネーブから発信された90分間におよぶイベントは、世界的な感染拡大となっている新型コロナウイルスからの回復と人権問題を重ねあわせ、よりよい世界の再構築を考える内容となりました。
「国連室内楽協会」のバーチャルコンサート
国連が2016年に設立した、プロの音楽家で構成される「国連室内楽協会」が、バーチャルコンサートを開催。さまざまなバックグラウンドを持った作曲家を取り上げ、人権デーを祝う演奏会を開催しました。
世界各地の人権デーイベント
ニューヨークでは、国連の人権機関が主催する「COVID-19最前線の英雄の祭典」が開催されました。国連事務総長のメッセージや国連人権高等弁務官のビデオ声明も発表されました。また、ウガンダやウクライナ、カンボジアでも人権にまつわる写真展やオンラインコンサートなどが行われました。
「人権デー」に、わたしたちができること
12月10日の人権デーに、わたしたち一人ひとりができることを考えてみました。誰もが持つ人権を尊重し、守るために、人権とは何を改めて知り、身のまわりの小さなことに取り組むことが大切です。
「世界人権宣言」を知る
前文と全30条から構成される世界人権宣言に目を通してみましょう。世界人権宣言の内容を知ることで、国際的に守られるべき基本的人権や人間の尊厳と価値、そして男女同権についての重要性などを再確認することができます。国際連合広報センターのWebサイトなどで読むことができます。
SNSでメッセージを発信
SNSを活用し、自分が感じた言葉や体験談など、人権にまつわるメッセージを発信することができます。体験談などではなく、人権デーや人権週間、世界人権宣言の存在を発信するだけでもよいでしょう。
人権週間に開催されるイベントに参加
法務省や全国人権擁護委員連合会では、12月4日〜10日の人権週間にあわせて、いろいろなイベントやキャンペーンを開催しています。その取り組みを支援したり、参加することもわたしたちができることのひとつです。
人権は世界の誰もが持つ共通基準
日本という国に住んでいるわたしたちは、人権が高いレベルで守られているために、毎日の暮らしのなかで人権を意識することはほとんどありません。ですが、世界を見ると、人権が尊重されていない国や軽視されている国が少なくありません。
また日本でも新型コロナウイルス感染拡大のなか、人権が十分に尊重されているといえない状況が発生していることに注目が集まっています。
人権は、歴史的に考えると、人類が長い時間と労力をかけて獲得してきている権利です。まだ必ずしも、世界中で共通の考え方があるわけではありません。12月10日の人権デーをきっかけに、人権の重要性とその意味を考えてみることは、日々の暮らしにもかかわる大きな意味を持っているはずです。
文・構成/HugKum編集部