刺し身をおいしく保存するコツ
ピチピチの鮮度を保ったお刺身と、長く空気に触れたお刺身では、味に大きな差がつきます。お店で買う時は、当日食べきれる分だけ、サクなら次の日までの分にするのが基本です。
氷を使って、低い温度を保ちながら持ち帰り、できるだけ早く冷蔵庫で保存してください。
必ず冷蔵庫で保存する
冷蔵庫での保存に最適なのはパーシャル室です。表面が凍るパーシャル室、凍る直前のチルド室、冷蔵室の順番に温度が高くなります。もちろん、チルド室や冷蔵室でも良いので、必ず冷蔵庫に入れて保冷してください。
帰宅時間がズレる家族のために保存する時も同様です。室温に長く置くと、みるみる味が落ちていくばかりか、細菌の増殖による食中毒になりかねません。
サクの場合
お刺身は、切身よりサクのほうがより空気に触れる面積が少ないため、長持ちします。
切身や開いた魚には塩をして脱水しますが、お刺身用は味に影響することから、一般的にはしません。
食べる直前に、必要な分ずつ切り分けていただきます。包丁の角から入れて、手前に引くようにして切るのがコツです。ギコギコと押して切ると味が落ちます。
脱水シートを使ってよりおいしく保存
食品用の脱水シートは、ちょっと驚くような働きをしてくれる優れものです。ぜひ紹介させてください。
お刺身をシートに包むだけで、嫌なドリップがなくなり、臭みが消えます。魚料理のマイナス面がなくなるばかりか、吸収した水分を海藻の力でシートに貯めるため、昆布漬けにしたようなうま味がお刺身に移ります。簡単にプロの技が手に入る、感激の効果。
油分が多いまぐろのトロや、塩で締めてある魚には適しませんが、白身の鯛、平目、サーモンの他、はまちなどにも効果があります。食べる30分前に包んでおくだけで、身が引き締まります。
ピチット
保存期限は
生の魚介類は水揚げされてから4~5日の期限です。種類によって差がありますが、切ると空気に触れて、どんどん味が落ちてしまいます。お刺身の切身なら当日中に、サクでも翌日にはお召し上がりください。
実践!種類別 刺身の保存方法
写真を参考にしながら、保存方法をみていきましょう。
鯛(サク)の保存
脱水シートで包み、お皿などにのせてパーシャル室、チルド室、冷蔵室のいずれかで保存します。
脱水シートはキッチンペーパーで代用できますが、上からラップで包んで乾燥を防いでください。鯛だけでなく、お刺身ならなんでも応用が利きます。
サーモン(切り身)のオイル漬け
スーパーで買ってきた切り身の魚介を、1週間くらい保存したい時に使えるのがオイル漬けです。オイルでコーティングすると空気に触れず、また、オイルの香りが食欲をそそります。切身のタコやイカ、マグロにも効果的ですよ。
お好みのハーブで変化をつけて楽しむのもいいですね。サンドイッチやパスタの幅も広がります。
材料
サーモン(刺身用 切身)200g
塩 小さじ1
黒胡椒 少々
エキストラバージン オリーブオイル 約80cc〜(サーモンが浸かる量)
ハーブ(ローズマリー、ディル、タイム、パセリなど) 適量
にんにく 2〜3片
作り方
【1】刺身は塩をして、15分ほど常温に置きます。出てきた水気をふき取り、黒胡椒をふります。
【2】スライスしたにんにく、ハーブ、エクストラバージン オリーブオイルを保存容器に入れて【1】を漬け冷蔵庫で保存します。
【3】30分後から食べられますが、おいしいのは一晩経ってから。火を通してもおいしいので、2日目以降でも慌てずに味わえます。
釣ってきた魚の保存
海水魚なら、できるだけ早めに内蔵を取り出してください。雑菌の繁殖もさることながら、寄生している虫が、温度の上昇と共に身へ移動するのを防止します。加熱調理なら心配ありませんが、お刺身で食べる場合は気をつけてください。
一方、淡水魚の生食は寄生虫の懸念があります。専門のお店でいただくようにしてください。
漬けダレに漬ければ冷凍もできる
お刺身が余った時は、下味冷凍にするのはいかがでしょうか。冷凍方法から調理まで、詳しくご紹介します。
刺し身の冷凍保存の基本
お刺身の冷凍保存は、できるだけ空気に触れさせない事、そして急速冷凍でおいしさが保てます。味を左右する解凍には、ゆっくりと時間をかけることが基本です。
ブリの漬けダレ冷凍
ブリだけでなく、鮭などでもおいしい味噌味をご紹介します。
材料
ブリ 200g
【A】
みりん・酒・味噌 各大さじ2
生姜のみじん切り 半片分
作り方
刺身のブリと【A】を合わせ、冷凍用保存袋に入れます。空気をしっかり抜いて封をしてください。
冷凍方法
タレが全面に行き渡るように平らに寝かせて冷凍します。アルミホイルを巻くか、金属のトレイに乗せて冷凍すると急速に冷凍が進みます。
解凍と調理の方法
【1】常温で5~10分ほど置いて、袋から無理なく取り出せる程度の解凍をします。タレが柔らかくなっていればOKです。
【2】袋の中身をフライパンに移します。
【3】水か料理酒を大さじ1加え、フタをして蒸し焼きにします。刺身用なので身が薄く、あまり触ると崩れてしまいます。やさしく裏返す程度にしてください。
【4】水分を飛ばしながらタレをよく絡めれば完成です。
保存期間
2週間をめどにお召し上がりください。
漬けダレのアレンジと解凍後でも美味しいレシピ
お刺身用の切り身を加熱料理に使うのはちょっぴり贅沢ですが、たくさんある時や、温かい料理が欲しい時に嬉しいものです。下味冷凍の味つけとしても使えるので、ご参考にしてください。
かじきのみそヨーグルト漬け
みそとヨーグルト、W発酵食品の風味で魚がやわらかく。下味をつけることで子どもも食べやすく。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
かじき 大2枚
【A】
みそ 大さじ3
プレーンヨーグルト 大さじ3
コーン 適宜
◆作り方
【1】ラップを広げ、混ぜ合わせた【A】の半分を塗り、かじきを並べてのせ、残りの【A】を塗ってラップで包む。冷蔵庫に4~5時間以上おく(一晩以上の場合は、冷凍庫におく)。
【2】【1】のみそを拭い取り、熱したグリルに並べ、中弱火で4~5分ほど焼く。
【3】器に盛り、ソテーしたコーンなどを添える。
※かじきのほか、鶏肉やたらなどでも作れます。
教えてくれたのは
藤井 恵さん
簡単に作れて、栄養バランスがよく、おいしさのセンスが光るレシピが人気。藤井家の毎日のごはんを綴ったブログも参考になります。
『めばえ』2016年1月号
ぶりの青のり風味から揚げ
魚が苦手…そんな子どもには、臭みを消して、形をアレンジ。 一口大に切って食べやすく!
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
ぶり 3切れ
【A】
しょうゆ 大さじ1と1/2
酒 小さじ1
しょうがすりおろし 小さじ1/2
青のり 大さじ1
溶き卵 大さじ1
片栗粉 大さじ2
片栗粉・揚げ油 各適量
◆作り方
【1】ぶりは皮と骨を除き、3~4cm角に切り、混ぜ合わせた【A】をよくもみ込む。
【2】揚げる直前に【1】に片栗粉をまぶし、170℃の中温で3~4分揚げる。
教えてくれたのは
阪下 千恵さん
料理研究家、栄養士。おいしくて、栄養バランスのいいレシピが人気。二人の女の子のママ。
『めばえ』2015年4月号
白身魚のアクアパッツァ風
◆材料
(2~3人分)
白身魚(タラ、鯛、金目鯛など) 2切れ
あさり(砂抜きしたもの) 6~10粒
玉ねぎ 1/2個
トマト 1個
ブロッコリー 1/4株
塩 少々
【A】
水 大さじ2
酢 大さじ1/2
白ワイン(酒でも可) 小さじ1
オリーブオイル 大さじ1/2
◆作り方
【1】魚の両面に塩をふり、出てきた水分をペーパーでふきとる。
【2】トマトとブロッコリーは小さめのひと口大に切る。玉ねぎはスライスする。
【3】耐熱皿に【2】を敷いて魚をのせ、周りにあさりを並べる。
【4】【A】を混ぜて【3】にふりかけ、ラップをして電子レンジで6分(600Wの場合)加熱する。
教えてくれたのは
りんひろこさん
料理家・フードコーディネーター・食育アドバイザー・薬膳アドバイザー。料理教室「みなとキッチン」主宰。京都で学んだ懐石料理と、アーユルヴェーダや薬膳など東洋の食養生の考えをもとにした、おいしく簡単な料理を提案。4歳と2歳、『めばえ』世代の子育てママでもある。
『めばえ』2018年10月号
魚料理を食卓に
魚介類がもともと好きな方は、自然と身についた扱い方ができるかもしれませんね。あまり得意でない方でも、お好みの味付けを見つけて、保存方法を試してみてください。お刺身は鮮度にさえ気をつければ、扱いやすい素材です。魚料理が身近になり食卓への登場も増えるかもしれませんよ。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)