柿は栄養価の高い果物
日本が原産の果物で、「柿が赤くなると医者が青くなる」といわれるように、栄養分に富んでいます。ビタミンCの多さは、みかんを超える量です。またタンニンは、アンチエイジングに効果がある他、高血圧や脳梗塞の予防になります。
豊富な食物繊維
柿の食物繊維は、すべての果物の中で一番の量。1日2個の柿を食べれば、1日に必要な量の半分を接種できるほど。カリウムも多いので、体内から有害な物質を排泄してくれる働きとなります。
干し柿の栄養
干し柿にした場合の栄養には驚きの変化が。甘みが4倍に増し、β-カロテンは3倍です。鮮やかなオレンジ色は、がん予防効果のあるβ-クリプトキサンチンですが、これも4倍に増え、あらゆる果物の中でもトップの量なんですよ。体内でビタミンAに変わり、ビタミンCとの相乗効果で抗酸化作用を期待できるんです。
食べすぎ注意!
栄養豊富な柿ですが、1日に食べるのは2個までに。栄養が多い分、逆の作用を招く場合もあります。タンニンは腸の痙攣を抑え、下痢を止める作用がありますが、便秘気味の人は腸の動きがさらに低下するのでご用心。また、胃石ができやすくなるとか、体を冷やすとも言われていますので注意が必要です。
硬い柿は常温保存
硬い柿からトロトロの柿まで、お好みの硬さは人それぞれです。食べたい硬さになるまでは、常温で保存して熟すのを待ちます。
保存方法
直射日光を避け、風通しの良いところで保存します。追熟が進み、熟した部分が広がってきますので、お好みの硬さになるまで、楽しみに待ってください。
保存期間
常温では3日~5日程の保存期限です。トロトロに熟れた柿へと進みますから、硬いまま召し上がりたい時は、早めに冷蔵庫か、冷凍保存へ切り替えます。
食べごろの柿は野菜室へ
お好みの硬さにまで熟した柿を冷蔵庫の野菜室へ入れると、熟し加減をキープできます。
保存方法
ポリ袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存します。柿が発するエチレンガスは、他の食品に影響を与えますから、ポリ袋の中に入れて閉じ込めてください。
より長く保存したい時は、濡らしたキッチンペーパーをヘタのくぼみに貼りつけ、ラップで包みます。ヘタを下側に向けてポリ袋に入れると、ヘタから出るエチレンガスにフタができるため、追熟を止めることができます。
保存期間
ポリ袋に入れた場合は5日間~10日程、ペーパーでフタをすると1か月程、保存ができます。
柿は冷凍もできる
柿は冷凍保存もできる果物です。丸ごとでも、カットしてからでも冷凍できるので、長期保存にはおすすめですよ。
柿の渋抜き方法
もともと渋のない甘柿は、そのままで食べられます。一方で渋柿は、渋を抜く作業を行ってから食用となります。一般的に四角いのが甘柿、筆先のように細くなっているのが渋柿といわれています。
柿渋とは
柿の渋は、タンニンによるものです。口の中で溶けると「渋さ」として感じられる栄養素です。これを溶かさない形にして、私達には味覚として感じとれなくなる処置を「渋抜き」と呼び、簡単に施すことができます。出荷時には、ドライアイスで冷やす方法がとられますが、ご家庭ではアルコールが渋抜きの際に力を発揮します。
手順
焼酎やホワイトリカーといったアルコール度数が高いものに、柿のヘタを浸します。垂れる分を拭き取ったあと、密閉できるビニール袋に入れてください。
保存方法
アルコール分を閉じ込めるように密閉したあとは、冷暗所で1〜2週間ほど置いておき、甘くなるまで待つだけです。
これは、アルコールに含まれるアセトアルデヒドが、柿のタンニンと結合して不溶性になる、という処置です。じつはこの方法、二日酔いの予防と対策にも応用ができます。お酒を飲む前や二日酔いで辛い時に、柿を食べると排出を促してくれ、効果が期待できるそうですよ。
柿のおすすめレシピ
柿の自然な甘味は、キムチをまろやかにする方法に利用ができます。
キムチの柿和え
トロトロになった柿をキムチに混ぜるだけです。ウスターソースのような甘味ですが、オレンジ色なので色がキレイなまま。
材料
柔らかくなった柿 1/2個分程
キムチ 150g
作り方
【1】柿をスプーンなどでつぶし、キムチとあえれば完成です。
干し柿にして長期保存も
柿を干すことでも、タンニンは溶けにくくなるため渋味がなくなります。これが干し柿です。ビタミンCは減りますが、β-カロテン、食物繊維、カリウムが増す伝統の保存方法です。
ここでは、簡単な干し方をご紹介しながら、保存方法をみていきます。干し柿は天の恵みです。環境を保てる地域にお住まいの方は、試してみてくださいね。
干し柿の作り方
【1】渋のある硬い柿がおすすめです。ヘタを残したまま、皮をむきます。
【2】ビニール紐を軸に縛り、沸騰したお湯に漬けて煮沸します。
【3】雨のかからない場所に吊るし、気温が低くて乾燥した季節を選んで干します。目安は気温が10℃以下。柿の渋を抜く目的も兼ねているため、気長に干せる環境を探してくださいね。
保存方法
干している最中、柿同士が触れるとカビが生えるようです。まずは青カビ、そして黒い点状のカビへと進みます。ホワイトリカーに漬けることで防止できますよ。
干し柿の表面に出てくる白い粉は糖分ですから、安心して召し上がってください。
干し柿は冷凍もできる
1個ずつラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍します。2か月ほどの保存期限です。
干し柿のレシピ
干し柿がたくさんある時は、味を変えて楽しみませんか。
干し柿のチーズみそ巻き
柿は干すとビタミンAが倍に。甘さもUPするので、干し柿のパワーは絶大です。
◆材料
(3人分)
干し柿 3個
白みそ 小さじ2
カッテージチーズ 大さじ3
◆作り方
【1】白みそ、カッテージチーズをボウルに入れて混ぜ合わせる。
【2】干し柿はヘタを取り除き、縦に切り込みを入れて開き、種を取り除く。
【3】【2】に【1】をのせてくるくると巻く。食べやすく切っていただく。
教えてくれたのは
牛尾理恵さん
料理研究家。フードコーディネーター。栄養士の資格ももつ。病院での食事指導、料理研究家の助手、料理専門の制作会社を経て独立。おいしく、作りやすく、体にやさしい家庭料理が人気。
『めばえ』2018年2月号
秋限定の味わいも
秋になると毎年、柿を専門にする和菓子屋さんから季節限定で、上品なお菓子が発売されます。さらに冬の干し柿も、驚くほど美しいものが見られますね。一方で手軽なフルーツサラダやデザートにすると、美しい彩りが映え、楽しみ方は幅広いですね。保存を上手に行い、豊富な栄養価とおいしさを味わってください。
構成・文・写真(一部を除く)/(京都メディアライン)