自動車乗車中の事故を予防するためにチャイルドシートは欠かせない
クリスマス、お正月が近づいてきました。年末年始を故郷や旅先で過ごすファミリーも多いことでしょう。
幼い子供を連れて長い距離を移動する場合、普段よりも大きな危険を伴う可能性があります。今回は主に乳幼児を連れた帰省・旅行の、自動車乗車中に起こりやすい事故とその予防策について考えます。
おうちのクルマ、実家のクルマ
自動車乗車中の事故を予防するためにもっとも有効なのは、
1.子どもの身体に合ったサイズのチャイルドシートを、
2.自動車のエアバッグの影響がおよばない後部座席にしっかりと固定し、
3.そのチャイルドシートに正しく子どもを座らせること
です。普段乗り慣れている「おうちのクルマ」であってもこの3点がきちんと守られていないケースが見受けられますが、帰省・旅行時はさらに問題が大きくなる傾向があります。乗車する距離が長くなることや、高速運転をする可能性が高くなることに加え、タクシーやレンタカー、実家の両親が運転する自動車、ホテル等の送迎バスなど、「おうちのクルマ以外のクルマ」に乗るケースが増えるからです。
昨年12月21日に配信された朝日新聞デジタルの記事では、産業技術総合研究所研究員の北村 光司さん(Safe Kids Japan理事)が行った調査について触れ、「迎えにきた義理の両親の車にチャイルドシートがない」場合、その車に乗るのを「必ず断れる」と答えたのは約21%にとどまった、と伝えています。せっかく駅や空港まで迎えに来てくれた義理の両親のクルマにチャイルドシートがないからと言って「乗れません」「乗りません」とは言えない、というわけですね。しかし、誰のクルマであっても、事故による傷害を完全に防ぐことはできません。どんなに安全運転をしていても、追突されることもあれば、対向車線から飛び出してきたクルマに衝突されることもあります。チャイルドシートがないクルマには「乗らない」ことが、子供を傷害から守ることになります。
でも「実家のクルマにはチャイルドシートは付けていない」という方も多いでしょう。もっとも有効なのは、ご実家のクルマに、適切なサイズのチャイルドシートを子どもの人数分取り付けておいてもらうことです。適応体重の長い製品もありますので、メーカーのホームページなどで確認してみるとよいでしょう。
使用頻度が低いのに購入は難しい・・・という場合は、自治体や交通安全協会等でチャイルドシートのレンタルを行っている場合がありますので、ご実家のある市町村の状況を事前に調べておくとよいでしょう。
タクシー
さて、ご実家のクルマに乗らないことにしたら、公共交通を利用して向かうことになります。移動距離にもよりますが、乳幼児を連れていて荷物も多い場合、電車やバスよりも「タクシー」に乗る、というケースが多いのではないでしょうか。
ところが、実はタクシーにはチャイルドシートが付いていません。法律で、バスやタクシーはチャイルドシートの装着が免除されているのです。せっかくチャイルドシートに乗せるために実家のクルマに乗らないと決めたのに、タクシーにもチャイルドシートが付いていなければ意味がありませんね。しかしタクシー会社によっては「子育て応援タクシー」「キッズタクシー」などと銘打って、予約時に申し込めば子供の身長・体重に合ったチャイルドシートを設置した上でタクシーが迎えに来てくれるサービスを提供しています。一般社団法人 全国子育てタクシー協会では、全国の「子育てタクシー」が検索できるサービスを実施していますので、ぜひご参照ください。
わたしのSafe Kids ストーリー 〜「子どもの傷害予防」に取り組む人をご紹介します〜
今回お話を伺ったのは、コンビ株式会社 代表取締役 執行役員 副社長の松浦 康詞さんと、同社 経営企画室 主査の安藤 文香さんです。
Safe Kids Japan(以下、SKJ):今、コンビではどのようなお仕事をされているのでしょうか?
松浦:私は執行役員という立場ですので、会社の業務全般について見ています。いろいろな部署の仕事を広く把握していますが、特に子どもの施設向けの商品やおむつ交換台等を扱う事業、食品素材、たとえば乳酸菌、ビフィズス菌の製造販売をしている部門、新しい事業であるペット向け商品の事業に重点を置いています。
安藤:経営企画室の中で、広報活動をメインに仕事をしています。社内報を作ったり、外部メディアへの対応、また、新製品のリリースなどに携わっています。小学校2年生になる娘がいます。娘が小さい頃は保育園で熱を出して呼び出される、ということが頻繁にありましたが、最近は体力もついてバランスが取れてきました。
独自の視点やこだわりを追求し、安全を最優先にした製品作り
SKJ:コンビさんの子育て支援環境はいかがですか?
安藤:充実していると思います。子供関係のことで上長に言いにくいような雰囲気もないですし、働く女性にやさしい会社だと思います。
SKJ:コンビ製品の安全性の高さには定評があります。安全への取り組みはどの企業もされていると思いますが、コンビ独自の視点やこだわりなどありましたら、教えてください。
松浦:安全最優先は当然のことですが、コンビではユーザーさんだけでなく、ユーザーの周辺の人の安全も考慮しています。例えばベビーラックの設計をするときに、主にその製品を使う赤ちゃんと保護者の方は当然として、赤ちゃんの兄姉がラックに体重をかけてもひっくり返らないような設計をしています。赤ちゃんの周りにいる兄姉にとっても、安全性が一定以上確保できるかどうかを設計思想に入れ込んでいます。
安藤:セカンドリーロック(二段式ロック)と言っているのですが、たとえばベビーカーであれば一度レバーをスライドしてからでないとたためない、とか、チャイルドシートのバックルも固めにして子供では外せない、といった工夫をしています。基本的にはおとな向けのロックですが、子供にも有効だと思います。
ブランドビジョンは「赤ちゃんを育てることが、楽しく幸せだと思える社会を作る。」
SKJ:赤ちゃん・子どもに関する製品を企画・製造・販売するコンビという企業に入社しようと思われた理由はどのようなことでしょうか?また、現在のお仕事に関して、やりがい、喜び、ご苦労などお聞かせください。
安藤:私は新卒で入社したのですが、就職活動をしているときに重視したのは、女性の働きやすさです。先ほどお話しした子育て支援環境はもちろんですが、女性ならではの目線を生かしたいと考えていました。実際に入社してみて、「赤ちゃんを育てることが、楽しく幸せだと思える社会を作る。」という会社のブランドビジョンに素直に共感できましたし、そのビジョンに向かって会社が一丸となっているという実感があります。コンビの製品を買ってくださったお客さまが笑顔になっていて、みなさんとても幸せそうなんです。すごくいいものを扱っているのだな・・・と胸が熱くなりました。
松浦:営利企業ですから、利益を上げることはもちろん大事なのですが、営利企業であったとしても、社会、特に「人」の役に立たなければ意味がないと思います。この会社に入るときに思ったのは、誰を喜ばせることができるのかな、ということでした。コンビの場合、それは未来のある赤ちゃんであり、子どもたち、そしてその子どもたちを育む家族や社会です。そういう方々のお役に立てるのは素敵だな、と。コンビはゼロからプラスに持っていく会社。お客さまに喜んでいただく方向が常に未来に向いています。そんなところに魅力を感じています。
子どものチャイルドシート使用において、現状の課題とは
SKJ:さて、ここからは子どもの傷害予防活動、特にチャイルドシートにおける課題についてお尋ねしたいのですが、現状、チャイルドシート関連の課題はどのようなことと考えておられるでしょうか?
松浦:チャイルドシートを購入されていない方にその理由を伺うと、「チャイルドシートは価格が高いから」、「自分は事故は起こさないから」とお答えになります。また、チャイルドシートを付けているけれど座らせていない、という方もおられます。それは、「ほんのちょっとの距離だから」「子どもが嫌がるから」「泣くから」といった理由があるようです。親の気持ちとしては理解できるのですが、親だからこそ安全を第一にしてほしいですし、だからこそのチャイルドシート義務化になっているとも思うのです。
メーカーとしては、お母さんの腕の中よりも安心するチャイルドシートがあれば喜んで座ってくれるのかな、という思いはありますが、お母さんの腕に勝るチャイルドシートができるか、というとそれは無理です。快適なチャイルドシートを製造することはできますが、赤ちゃんの安心は得ることは難しい。
安藤:となると、慣れてもらうのが一番いいのかな、と。産院から退院するその日からチャイルドシートに乗り、いつでも、どこに行くときもチャイルドシートに必ず座る習慣づけをしていただくと、慣れてくれるのかな、と思っています。
SKJ:アメリカやカナダの産院では、退院時に自家用車に付けたチャイルドシートのチェックが行われ、適切なサイズ、規格のチャイルドシートが付いていないと、厳しい病院では退院許可が下りないというケースもあるそうです。日本ではなかなかそこまで徹底していませんね。
松浦:そうですね。たとえば産院にポスターを貼るといいかもしれませんね。赤ちゃんに会いに来たおじいちゃん、おばあちゃんの目にも留まるかもしれません。
安藤:コンビのチャイルドシートも利便性や操作性を強調しがちなのですが、チャイルドシートに乗せることの意味や安全性に関する啓発活動が大事だな、とあらためて思います。広報の立場としては、今後そのあたりをもっと訴求していきたいですね。
10年後の社会、10年後の未来に望むこと
SKJ:最後に、10年後にはこんな社会になっていてほしい、10年後のご自身はこうありたい、といったあたりをお聞かせください。
安藤:コンビのビジョンが実現しているといいな、と思います。子育てが大変、と言われていますが、それほど大きな負担なく、誰もが子育てに関われる社会になっているといいですし、そんな社会づくりに貢献できるといいな、と思います。それがものづくりなのか広報なのか、形はわかりませんが、少しでも携われていると嬉しいです。
松浦:キッズデザイン賞の審査委員長である益田 文和さんと話していたとき、「世界どこの国に行っても子どもの未来がすべてでしょう」と言っておられ、あぁ、確かにそうだなぁ、と思いました。子どもの未来を考えなかったら、その社会は終わってしまう。あらためてそんなことを感じました。そういう意味では、10年後には社会の環境や考え方の根本のところで「子どもの未来がすべて」というコンセンサスができているといいな、と思います。世界どの国でも、もちろん日本でも。そんな中でコンビという会社がその一端を担えていたら素敵だな、と思いますし、自分もその一員でいたいと思っています。
SKJ:ありがとうございました。
記事監修
事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人。Safe Kids Worldwideや国立成育医療研究センター、産業技術総合研究所などと連携して、子どもの傷害予防に関する様々な活動を行う。