目次
プラスチック資源循環促進法とは? わかりやすく解説
プラスチック資源循環促進法を理解するため、その概要や目的、施行日、罰則を確認します。
概要
プラスチック資源循環促進法は、廃プラスチックの有効利用率の低さ、海洋プラスチック等による環境汚染を背景として制定されました。
日本では以前から3R(リデュース・リユース・リサイクル)が勧められています。また、世界的な環境意識の変化により、高度なプラスチック資源の有効利用を目指すためとして、2021年6月に国会でプラスチック資源循環促進法が可決されました。
それまでの「プラスチックの廃棄を減らそう」という考えではなく、「捨てることなく、経済活動に再利用しよう」という考えをコンセプトにしています。
そのための新しい概念として、「3R+Renewable」を提唱しており、新たなプラスチック資源の循環を進めていく法律となっています。
目的
プラスチック資源循環促進法の目的は、プラスチック製品の製造から廃棄までの資源循環を促進し、全体の廃棄量を削減することを目的としています。
内容としては、削減対象の12品目の製品を年間5トン以上取り扱う業者に、削減目標の制定および目標に向けた対策を講じることを義務付けるものです。
プラスチック資源循環促進法の対象となる12品目は以下の通りです。
対象業種…コンビニ・スーパー・飲食店・百貨店等
フォーク
スプーン
テーブルナイフ
マドラー
飲料用ストロー
対象業種…ホテル・旅館・宿泊所等
ヘアブラシ
くし
かみそり
シャワーキャップ
歯ブラシ
対象業種…クリーニング店
衣類用ハンガー
衣類用カバー
スーパーなどでもらえるプラスチック製のスプーンなどのほか、ホテル等で部屋に設置されているアメニティも対象になっています。身の回りの色々なものが対象となっているので、気にしてみると面白いかもしれません。
施行はいつから?
プラスチック資源循環促進法は2022年4月から施行され、全国で一斉にプラスチック製品の取扱いが変わりました。
従来であれば無償で提供されていたプラスチック製品が、レジ袋以外も有料となりました。そのためマイバッグやマイ箸を持ち歩くことで、消費者個人もプラスチック廃棄量の削減を意識する必要が出てくるでしょう。
新たなライフスタイルが浸透し、一人ひとりが環境への問題意識を高めることが大事になります。
罰則はあるの?
もし年間5トン以上のプラスチック製品を取り扱う会社が、法律の義務に違反した場合はどうなるのでしょうか。
会社の取り組みが不十分、または命令に従わなかった場合は、行政指導や社名の公表という措置が取られます。
さらに、行政指導や命令を無視した場合は、50万円以下の罰金も科されます。
行政指導や社名の公表は、その会社のブランド名を傷つけることになるため、個々の会社が注意しなければなりません。
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プラスチック資源循環促進法成立の背景
プラスチック資源循環促進法が成立した背景には、世界的な環境汚染の問題があります。
環境問題とは世界で排出されるプラスチックの海洋への流出、プラスチック製品の廃棄・焼却に伴う二酸化炭素の放出などです。二酸化炭素の増加は世界全体の気候変動を引き起こし、平均気温の上昇、海水面の上昇、異常気象などを発生させています。
こうした世界的な環境問題への日本独自の対策として、プラスチック資源循環促進法は制定されました。
事業者や自治体がプラスチック資源循環促進法ですべきこと
事業者や自治体に求められる対策について、5つの措置を見ていきましょう
- 環境配慮設計指針の策定
- ワンウェイプラスチック使用を合理化
- 市区町村による分別収集や再商品化を促進
- 製造・販売事業者等の自主回収を促進
- 排出事業者に対する排出抑制や再資源化を促進
参照:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律 (事業者・自治体の方へ)
環境配慮設計指針の策定
前述の「3R+Renewable」の考えに基づき、環境配慮設計の指針を国が策定します。これにより設計・製造段階での努力義務が制定され、指針適合製品には国からの認定が行われる仕組みです。
プラスチック製品を取り扱う会社は、指針に基づいた製品の設計・製造が必要になります。指針に適合した製品に対しては、国から製造設備の支援が行われます。
ワンウェイプラスチックの使用合理化
プラスチック製品を取り扱うコンビニやスーパーでは、ワンウェイ(使い捨て)プラスチック製品の削減を求められます。
具体的には提供方法と提供する製品に分かれており、対応自体は各業者の対応に任されています。
提供方法
- 消費者に有償で提供する
- 不要とした消費者にポイントの還元などをする
- 消費者に必要か不要かの意思を確認する
- 消費者に繰り返し使うように促す
提供する製品
- 製品設計やその部品・原材料の種類について工夫された製品を提供する
- 適切な寸法の製品を提供する
- 繰り返し使用が可能な製品を提供する
上記の取り組みが不十分と判断された場合、主務大臣から指導や助言が入り、それでも改善が見られなければ、社名公表や命令などの措置に移行します。
市区町村による分別収集や再商品化を促進
容器包装リサイクル法を基にプラスチック資源が分別・回収され、再度商品化できるようになります。
また、市区町村と再商品化事業者が連携し、再商品化計画を作成・申請すれば、主務大臣の認定を受けられます。認定を受けることで市区町村による選別・梱包の工程を省略し、再商品化事業者が再商品化することも可能です。
製造・販売事業者等の自主回収を促進
プラスチック製品を取り扱う製造・販売事業は、自主回収・再資源化計画を作成し、主務大臣の認定を受けられます。認定を受けることで廃棄物処理法の認可が必要となるところ、認定業者は認可が不要で回収が容易になります。
排出事業者に対する排出抑制や再資源化を促進
プラスチックごみの排出事業者は、排出量抑制・リサイクルへの取り組みの判断基準書の策定が必要です。
基準以上のプラスチックごみを排出している場合、主務大臣から指導や助言、勧告、命令が行われます。
また、排出事業者が再資源化計画書を作成し、認定を受ければ、廃棄物処理法の営業許可なしでリサイクルが可能になります。
特定プラスチック使用製品12品目と対象業種
特定プラスチック使用製品12品目と対象となる業種を詳しく見ていきましょう。
12品目の内訳
プラスチック資源循環促進法では、特定プラスチック使用製品として次の12品目を具体的に挙げています。
- フォーク
- スプーン
- ナイフ
- マドラー
- ストロー
- ヘアブラシ
- 歯ブラシ
- くし
- かみそり
- シャワー用キャップ
- 衣類用ハンガー
- 衣類用カバー
いずれもコンビニやスーパー、ホテルなどで提供されるもので、無償で提供されてきたものです。今後はこうしたプラスチック製品が有料化されるだけでなく、買い物の際は必ず必要か不要かを尋ねられることになります。
対象業種
続いて、対象業者についても見ていきましょう。
- 各種商品小売業
- 各種食料品小売業
- その他の飲食料品小売業
- 無店舗小売業
- 宿泊業
- 飲食店
- 持ち帰り・配達飲食サービス業
- 洗濯業
上記の通り、主に小売業と宿泊業をメインにしています。
小売業はコンビニチェーン、スーパー、百貨店など、モノを売る業界全般を指しています。宿泊業ではホテル、旅館、宿泊所など、アメニティグッズを取り扱う業者が対象です。
他にもレストラン、居酒屋、フードデリバリーサービス、クリーニング店も含まれており、日々の生活に大きな影響を与えるでしょう。
消費者がプラスチック資源循環促進法ですべきこと
私達消費者に求められている対策や措置はどのようなものでしょうか。
- プラスチック使用製品設計指針と認定制度
特定プラスチック使用製品の使用の合理化
製造・販売事業者等による自主回収・リサイクル
排出業者による排出量の削減・リサイクル等
市区町村によるプラスチックの分別回収
参照:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律 (消費者の方へ)
プラスチック使用製品設計指針と認定制度
プラスチック資源循環促進法によると、この項目において消費者にできる内容は次の通りです。
- できるだけ無駄な材料の使用を減らす
- プラスチックの包装は最小限にする
- 製品は耐用年数まで使用し、部品の交換で長持ちさせる
- ボールペンなどの再使用可能なものは再使用する
- プラスチック製品の使用を控えること
- 再生プラスチックを利用する
大事なのは上記のポイントになります。
プラスチック商品の使用を少なくするとともに、マイ箸・マイバッグなどを利用してプラスチック削減に努めます。また、家電製品などはすぐに買い替えるのではなく、部品を交換しながら耐用年数まで使用するのがおすすめです。
特定プラスチック使用製品の使用の合理化
コンビニやスーパー、ホテル、クリーニング店など、プラスチック製品を利用する場所では、可能な限り使用を控えましょう。マイバッグやマイ箸、マイフォークなど繰り返し利用可能なものを常備し、不要なプラスチック製品の利用を抑制してください。
業者によってはプラスチック製品の有償化、辞退者へのポイント還元も行われるので、積極的な取り組みが求められています。
製造・販売事業者等による自主回収・リサイクル
廃棄されたプラスチックは、リサイクルによって新たな商品に生まれ変わります。
消費者ができる行動としては、全国に設置されている回収ボックスや自動回収機にプラスチック製品を廃棄することです。コンビニやスーパーに設置されている回収ボックスに分別し、無駄な廃棄を少なくしましょう。
排出業者による排出量の削減・リサイクル等
プラスチックごみを排出する事業では、排出量削減とリサイクルへの取り組みが求められます。
会社内にゴミ箱や自動販売機を設置している会社もありますが、会社内でもごみの分別対策を行うことが必要になります。企業に勤める社会人にもプラスチック資源の再活用が求められますから、会社の取り組みも注視してみてください。
市区町村によるプラスチックの分別回収
自治体でもごみの分別を徹底することになり、分別によって再商品化も効率的になります。
新しい法律により、容器包装リサイクル法で分別されてきたプラスチックごみだけでなく、燃えるごみとして処理されてきた物も含まれます。各自治体によって細かいルールが変更になりますから、お住いの自治体のルールを把握しておくことが大事です。
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プラスチック資源循環促進法のデメリットや問題点
環境への意識に繋がるプラスチック資源循環促進法ですが、多くの問題点もあります。
まず、プラスチック製品の有料化により、あらゆる産業で個人の消費活動の損失が発生するでしょう。
プラスチックに関係する製品を扱う場合、すべての業者が消費者に利用の必要性を確認することになり、人手不足で多忙な小売業に余計な手間がかかります。レジ袋を有料化した際は、スーパーの買い物かごの盗難、窃盗などの犯罪率増加も起こりました。
加えて説明すると、レジ袋は原油のわずかな搾りかすから生成しています。レジ袋を有料化した結果、二酸化炭素排出量削減の効果は試算によると、国内全体の0.4%です。日本の二酸化炭素排出量は2018年時点で、世界全体の3.2%に過ぎません。日本において0.4%の削減がどれだけの効果があるのか、この点については日本人として改めて考えるべきことかもしれません。
今回のプラスチック資源循環促進法で有料化された12品目により、日本の環境にどれだけの改善が期待できるのか、国民一人ひとりが注視すべきでしょう。
環境への意識とともに、生活のしやすさも大事にしよう
地球環境への意識は、100年後200年後の未来に繋がる大事なこと。今の私達にできることは、環境への意識を高め、身近でできる取り組みから始めることです。
同時に、環境への意識に目が行き過ぎて、私達の生活が不便になってもいけません。環境問題を意識しつつ、無理をしない範囲でできることから取り組みましょう。
普段から自分がどんなごみを出しており、身近な企業や社会がどのような取り組みをしているのか知ることが大切です。環境意識と快適性、どちらも両立できることが未来に向けて一人ひとりができることと考えてみましょう。
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文・構成/HugKum編集部