海外暮らしで体験した日本文化いろいろ
そろばん、折り紙、餅つき、豆まき、お手玉作り、鯉のぼり作り、どら焼き作り、書道、スイカ割り、流しそうめん…。
これなんだと思います?
実はすべて、息子が2年間のスペイン暮らしで体験したこと。
海外暮らしって「現地文化にどっぷり!」というイメージが強かったのだけど、実は日本文化だってかなり体験することができるのです。バルセロナがそれなりに日本人がいる都市だからとは思うけど、それにしてもビックリ!そしてありがたかったなあ…。
というわけで、今回は「スペイン暮らしの日本語教育&日本文化あれこれ」をまとめて紹介しまーす!
(↑パーティグッズの店で見つけた悟空ウィッグ。わはは、いろいろ違和感!日本アニメはスペインでも大人気で、テレビでもいろいろ放送してました。日本アニメマンガのかなり大きなイベントもあったよ)
あの手この手の日本語教育
「海外での語学学習」といえば、まず「現地の言葉」をイメージすると思うのです。
実際そうなのだけど、現地校に入れる&なじめる、という壁を越えさえすれば、子どもの語学学習スピードはそりゃもう早い。先生に教えてもらえるし、友達からも吸収するからです。息子の場合も、ブリティッシュスクールに転校して、スペイン語のサマースクールにも通ったこともあって、あっというまに英語とスペイン語を習得していきました。
そんなこともあり、現地校やインターに通った場合の課題は、外国語ではなく実は日本語。そしてそれが日本人の親の悩みのタネになることも多いのです。
実際、学校生活で必要ない日本語を、しかも漢字があって覚えること満載な日本語を、海外に住みながら勉強するのは本っっっっっ当に難しい。数年の短期移住ならともかく、永住組家庭ならなおさら学習意欲も湧きにくい。「日本語の勉強は毎日バトル」という言葉はいろいろな家庭から聞きました。
息子の場合は5歳でスペインにいったので日本語が母語としてすでに確立していましたが、海外で生まれ育ったり幼い頃に移住したりすると、母語が曖昧になり、会話が日本語と外国語のミックスになってしまうパターンも多い。日本語の発音も現地語なまりになったりします。バイリンガル教育というとかっこいいですが、海外の日本人の親たちは皆、悩みながら情報収集しながら日本語教育を試行錯誤しているのです。
そんな海外での日本語教育の主な方法はこんなかんじです。
(1)日本人学校に通う
日本式校舎で日本式授業を受けることができる。平日毎日。小学校の場合、教師陣は自ら志願し、試験をクリアしてやってきた日本人の先生たちなので、教育熱心ないい先生であることも多い。ただし、すべての都市にあるわけじゃないし、あっても都心から離れた不便な場所に位置することもある。
(2)日本語クラスもある現地校に通う
日本人がかなり多い都市、たとえばアメリカ西海岸やシンガポールなどでは、現地校でも日本語クラスがある学校もあるそう(バルセロナではなかったけど)。
(3)日本人学校の補習校に通う
日本人学校の校舎を借りて行う日本語クラス。毎週土曜日。ただし、教えるのは本職の先生ではなく、有志の半分ボランティア的な先生。宿題がしっかり出るので、それを頑張ればかなり日本語力はつくよう。
(4)日本語教室に通う
個人の私塾。補習校が遠すぎて通えない、補習校の授業方針と合わない、などの理由がある家庭がこちらを利用するよう。私がいた当時、バルセロナ市内には2校ありました。
(5)家庭教師を雇う
海外には家庭教師を仕事にする日本人もたくさんいる。そういう人を個人契約して、自宅で教えてもらう。
(6)親が教える
日本で買ってきた参考書やテキスト、もしくは通信教育を使って親が教える。
さて息子の場合は、(4)(5)(6)のミックススタイル。
私の仲のいい友人が日本語教室の経営者で、インター転校から毎週土曜はそこに通っていました。
日本人学校や補習校では、基本「日本と同じ日本語教育」をするけど、ここが目指していたのは「海外で生まれ育った子どもに合わせた日本語教育」。確かに、日本で育てばちょっとした日本語は生活の中で覚えるから学校であえて教えないけど、海外だともっと基礎から教えないといけない場合もあるわけで、なるほどと納得。
(↑バルセロナの日本語教室「かるみ〜みょ」。日本語クラスの他、そろばんクラスもあり。幼稚部のときは、季節の歌を歌ったり、日本の文化もいっしょに体験。そろばんもここで一度体験)
さらに我が家は、家庭教師の先生もお願いしていました。これはたまたまの流れで、シッターさんとして紹介してもらった人が補習校での指導経験もある経験豊富な人だったのが理由のひとつ。さらに、スペイン人女性と結婚している、ある日本人パパが「日本の男の子といっしょに勉強させたい」とリクエストしてくれたという経緯もあって、週1でそのハーフくんといっしょに、その先生に教えてもらっていました。さらに、私と夫も日本語の宿題や勉強をいっしょにやる。小1の日本語の基礎を作る大事な時期だったからという理由もあるし、日本に帰ってからのことも考えてのガッツリ体制でした。息子、がんばったな〜!
実際、家庭によって子どもの日本語教育はかなりバラバラで、「将来、日本に住む予定もないし、日本語はあきらめた」から「週末まで教室に通わせて勉強させる生活なんてイヤ。最低限レベルで」「補習校までは行かないけどそれなりに」「補習校にも通ってガッツリと!!」まで、熱意もかける時間もかなり差があります。
とはいえ、海外で日本語をどこまで勉強させるかなんて、正解がない世界。だからこそ、それぞれの正解を見極めるってけっこう難しい。住んでいる場所にもかなり左右される世界です。
ただ、お子さんの日本語がしっかりしている家庭では、「母語を何にするかちゃんと意識して語学学習を進めている」「親が会話の中でふたつの言語をミックスさせない」「子どもの日本語に外国語が混じったときはそのたびに言い直しフォローをする」を意識しているのは印象的でした。
ああ、語学って、本当にコツコツ努力の世界!
お手玉、鯉のぼり、書道、将棋…海外での日本文化
日本語教室の他に、日本の文化を味わえる教室やイベントもありました。書道教室や空手教室などなどです。我が家はレギュラーで通っていたのは日本語教室だけですが、単発でこんなのにも参加しました。
(↑連休のときに数日参加した「Petit Japó」という日本文化教室。手縫いのお手玉作り、鯉のぼり作り、どら焼き作りを体験させてもらいました。お手玉を縫って作ったと聞いたときはビックリ。そんなの私も作ったことないよ笑)
さらに、日本人学校などの場所を使って、大小さまざまな日本文化イベントが開催されていました。
(↑日本人学校で開催された餅つき大会イベントにて。初の書道体験)
(↑こちらは息子が体験したわけじゃないんだけど、日本を紹介する大イベント「MATSURI」の将棋コーナー。おじさまのTシャツが渋い!こういった日本文化の教室やイベントを主催するのは、たいていの永住組の日本人だけど、なかには日本文化好きの外国の方もまじっていたりする)
そうやって日本関係のイベントに参加するたびに、日本にいるときは当たり前に思っていた文化を見直せて、ああ日本文化っていいもんだな…とあらためて思ったりしていました。私はもともと手ぬぐいやら浮世絵やら盆踊りやらの日本文化が好きなのですが、それをさらに誇らしく思えたり…。
あ、そういえば食も日本文化としては忘れてちゃいけない!
スペインでは寿司屋、ラーメン屋、そしてどら焼きが大人気。バルセロナはシーフードが豊富だし、むしろ日本にいたときより寿司食べてたかも。
(↑バルセロナで特に愛していた「sato i tanaka」(佐藤さんと田中さんが握ってくれるお店)の寿司。渋いカウンターでひとつひとつ握ってくれる寿司を、子どもといっしょに楽しめる至福の店なのです。上はスペインらしく、なんとマテ貝の握り!)
(↑日本人スペイン人混合チームで作っているヘルシー日本食レシピブック「GOURMAND GOHAN」。子どものためにつくるごはんがコンセプトでもあります。これ、私はスペイン語のテキストがわりにしてました)
(↑おまけ。雑貨屋にて。クリスマスシーズンにツリー飾りにも日本文化が…。わはは、招き猫と寿司、クリスマスツリーに飾るんかい!!)
ホームパーティで、スイカ割り&流しそうめん!
ホームパーティで日本文化を体験したこともありました。
バルセロナ郊外に住む友人家族は、毎年「流しそうめん&スイカ割りパーティ」をするのが夏の恒例行事で、それに声をかけていただいたのです。
参加者のほとんどが、日本人妻&外国人夫(スペイン人以外もいろいろ)の組み合わせで、彫りの深いパパたちが、妻と子どもたちのために、せっせと流しそうめんの竹を組み合わせている姿はちょっといじらしく、微笑ましかっなあ。
(↑スイカ割り。私がたまたま持ってた手ぬぐいが目隠しとして役立ったよ。スイカ割り、もちろん子どもは大はしゃぎ!)
(↑みんなで流しそーめん。このおうちには立派なプールがあり、プールサイドで開催されたのです。数十人分のそうめんを茹でて準備してくれたホストがすごすぎるよ…。ありがとう!!)
自宅プールサイドのパーティというだけで素敵なのに、息子に流しそうめんとスイカ割りを体験させることができるなんて、幸せだったなあ…。
ちなみに、教室にしてもイベントにしても、海外永住組の日本人が、自分の子どもに少しでもいい教育を受けさせたい、日本文化に触れさせたいと考え、努力奮闘してやっているものが多いのです。その親心が泣けるし、そのおこぼれに預かりまくった私には感謝しかありません。
そして、ふと想像するのです。
いまも、地球のいろんなところで、都市で、僻地で、日本人の親が日本の血を引く子どものために、なにかしらの日本文化をせっせと伝えているのだろうな、と。
ある親は子どものためにおにぎりを握っているかもしれない。
ある親は「どんぐりころころ」を歌っているかもしれない。
ある親は子どもの浴衣の帯を優しくしめているかもしれない。
文化って、そうやって優しくじわじわ伝わっていくんだな、
日本人として嬉しいな、そんな風に思ったのでした。
最後におまけ。
ハラユキ
イラストレーター&コミックエッセイスト。夫の駐在赴任により、2017年6月より〜2019年7月までスペイン・バルセロナ在住。雑誌やWEBなどでイラストやマンガを描いたり、コミックエッセイ書籍を出版。「東京くらし防災」(東京都)のイラストも担当。「世界の家族の家事育児分担事情から知る、つかれない家族を作るヒント」や現地ごはん情報なども発信中。おいしいごはんと宴会と祭りとお風呂屋さんが大好き。7歳男児の母。家族をテーマにしたオンラインサロン「バル・ハラユキ」も主宰中。Twitterでは日々の生活や考えたこと、instagramでは主に食いしん坊メモを発信中。
■第1回目・ハラユキファミリーのバルセロナ暮らしの概要はこちら
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