お七夜とは?
日本には赤ちゃんの健やかな成長を願うさまざまな行事があり、「お七夜(おしちや)」もその一つです。どのような行事なのか、まずはその概要を見ていきましょう。
生後7日目の夜に行うお祝い
赤ちゃんが生まれてから7日目の夜を「お七夜」と呼びます。命名式で赤ちゃんの名前を産神様(うぶがみさま)に報告した後、参加者と一緒に「祝い膳」をいただくのが習わしです。
もともとは父方の祖父が主催し、母方の祖父母や親族を招く形でしたが、現代では赤ちゃんの両親が主催者になるのが一般的です。
出産直後は母子ともに体調が不安定なため、内々で静かに祝うケースも多く見られます。
お七夜をする日の数え方については、「生まれた日を1日目とカウントする方法」と「生まれた日を0日目とカウントする方法」がありますが、厳密な決まりはありません。
平安時代から行われている
お七夜の始まりは平安時代にさかのぼります。
朝廷に仕える貴族の間では「産立ちの祝い(うぶたちのいわい)」をする習慣がありました。その中の7日目のお祝いが現代にまで残ったといわれています。
昔は現代のように医療が発達しておらず、出生後に亡くなる赤ちゃんは少なくありませんでした。7日目を無事に迎えられたことをお祝いしたのがお七夜の由来です。
また、お七夜は「枕引き」とも呼ばれ、昔の習慣では自宅で出産した女性が休んでいた寝床を片付ける、「床上げ」をする日とされていました。
現代ではお七夜に床上げのお祝いはせず、赤ちゃんの命名式などを行います。
現代のお七夜の行い方
お七夜は平安時代から時を経て、現代の家庭事情に合わせたものに変化を遂げています。今ではお七夜を行わない家庭も珍しくありません。いつ・どう行うかは家族で話し合って決めましょう。
退院して落ち着いてから
お七夜は「生後7日前後」にお祝いするのがしきたりでしたが、現代ではお祝いの時期や方法が昔と大きく異なっています。
生後7日前後は、ちょうど母子が退院する時期にあたるため、出産の疲労から回復しておらず、人を呼んでお祝いをするのは難しい場合もあるでしょう。
そのため現代では、お七夜の日程は生後7日目に限らず、母子の健康状態や家族の都合に合わせて決めるのが一般的です。祝い方に厳密なルールはないため、状況によっては1カ月後のお宮参りと一緒にしても構いません。
やらない場合も多い
お七夜はそもそも、赤ちゃんの生存率が低かった平安時代からの習わしです。7日目を生存の一つの節目と見なし、無事に過ごせたことをお祝いするのが本来です。
現在は医療が発達し、出生後に亡くなる赤ちゃんの数はぐっと減りました。お七夜を行う意味自体が次第に薄れてきているといっても過言ではありません。
お七夜をやるかやらないかは、家族の自由です。「産後に人を呼んでお祝いをするのは負担が大きい」と感じれば、お七夜をやらない選択肢もできます。
逆に、昔のしきたりに従って生後7日目に行ってもよいですし、10日後や2週間後に行ってもよいでしょう。
Q.「お七夜」のお祝いをしましたか?
HugKumでは、0~2歳のお子さんを持つママやパパ120人に、お子さんが生まれてからお七夜をしたかどうか、アンケート調査してみました。
・した…22.5%
・しなかった…77.5%
お七夜のお祝いを「した」と答えた人は22.5%と少数派の結果になりました。「しなかった」と答えた人のなかには、産後入院していたり、忙しくそれどころではなかったなど、時間やタイミング的に厳しかったためにできなかった理由が挙げられています。
した
しなかった
命名式とは?
お七夜の中で行う「命名式」は、産神様に赤ちゃんの名前を報告するのが目的です。この日までに「命名書」を準備しておく必要があります。命名式の流れや、正式な命名書の書き方を確認しましょう。
お七夜は名付け祝いとも
お七夜は、「赤ちゃんの名前」をみんなにお披露目する日です。
別名「名付け祝い」とも呼ばれ、赤ちゃんの誕生を祝い「命名式」を行います。
命名式で欠かせないのが「命名書」です。産神様は毛筆で書かれた命名書を見て、赤ちゃんの存在を認識するといわれています。
命名書は三方(さんぽう)に乗せ、お宮参りまでの約1カ月は神棚に飾ったままにしておきましょう。神棚から下ろした後は、へその緒や手形・足形と一緒に大切に保存しておきます。
命名書の書き方
命名書の書き方には「正式」と「略式」があります。正式に書きたい場合は「奉書紙(ほうしょし)」と「毛筆」を用意しましょう。
奉書紙は縦に二つ折りにし、輪を下にした状態で左右を1/3ずつ折ります。すると右・中央・左の三つのスペースができます。
右のスペースに「命名」と書きます。中央のスペースには「子どもの名前」を大きめに書き、名前の右上には「両親の名前」および「子どもの続柄」を、名前の左下には「子どもの生年月日」を少し小さめに書きます。
左のスペースには、「命名した日付」「命名者の氏名」を記載しましょう。
略式の命名書は、ネット上でからさまざまなテンプレートがダウンロードできます。子どもの名前・両親の名前・生年月日が書いてあればどんなデザインでもOKです。
名付け親を頼む際のマナー
子どもの名前は両親で付けるのが一般的ですが、お世話になった恩師や祖父母に名付けをお願いする人も少なくありません。
名付け親を頼むときには、赤ちゃんが生まれた直後ではなく、出産前にお願いするようにしましょう。
自分たちでいくつか候補を挙げ、その中から決めてもらうのもよいですし、相手に候補を出してもらい、最終的に自分たちが選ぶという方法もあります。
名付け親が命名した場合は、命名書も相手に書いていただくのが基本です。
お七夜の参加者や場所は?
お七夜では命名式を行い、みんなで「祝い膳」と呼ばれる料理をいただきます。参加者や場所はどう決めればよいのでしょうか?
祖父母など負担にならない程度に声掛け
「誰を呼ぶか」は家庭ごとに異なるため、母子の健康状態や祖父母の希望に合わせて規模を考えましょう。赤ちゃんと両親のみで行うところもあれば、両家の祖父母・親戚・友人を交えて盛大に行う家庭もあります。
お七夜では、お祝いの料理をふるまい、招かれた方は「お祝い金」を持参するのが一般的です。お互いに負担がかかるという理由から、小さめの規模で済ませるケースも少なくありません。
命名式をきちんとやりたい場合は、両家の祖父母・両親・赤ちゃんの三世代で行うのがよいでしょう。親族以外に名付け親がいる場合は、その人も招待するのがマナーです。
相手が遠くに住んでいる場合は、前もって声をかけておきましょう。
自宅や実家で行う
生まれたばかりの赤ちゃんは外出が難しく、ママの体調も不安定です。お七夜は「自宅や実家で行う」のがよいでしょう。
昔は、妻が夫の実家に嫁ぐのが一般的だったため、お七夜は夫の実家で行われていました。
現在は祖父母と同居しない家庭が増えており、参加者を夫婦の自宅に招く形で行うパターンが多いといえます。
「個室のある料亭やレストランで行いたい」という人もいますが、生まれたばかりの赤ちゃんに万が一のことがあっては取り返しがつきません。外出は避け、自宅などでゆっくりと行うのが理想です。
お七夜の服装
お七夜での赤ちゃん・パパ・ママの服装はどんなものが好ましいのでしょうか?記念撮影をすることを考えて、赤ちゃんには思い出に残るすてきな服装を選んであげましょう。
パパやママは軽めに
お七夜の主人公は赤ちゃんなので、両親は必要以上に着飾る必要はありません。ただ、写真撮影をすることを考えて、普段着よりも少しきちんと感があった方がよいでしょう。
ママは体調が回復していない可能性があるため、ゆったりとしたワンピースやパンツなど「体を締め付けない服装」が好ましいです。カーディガンなどの前開きの服があると授乳がしやすくなります。
お七夜を盛り上げる役目のパパは「動きやすい服装」がベストです。シャツやセーターにジャケットを合わせるとよいでしょう。
赤ちゃんにはドレスや着物を
赤ちゃんにとって、お七夜は一生に一度のお祝いです。服装に決まりはありませんが、思い出に残るような華やかなものが好ましいでしょう。
おすすめなのが、蝶ネクタイやレースが付いた「セレモニードレス」や「ベビードレス」です。お宮参りなどのお祝い行事でも着用できるため、1着持っておくと便利です。
また、写真写りを重視して「赤ちゃん用の着物」を用意する人も少なくありません。着物は着脱が難しいため、写真を撮るときだけ羽織るという形でもOKです。
股にスナップの付いた「ロンパース」でもよいですが、お七夜の日はいつもと違った華やかなデザインを選んであげると、かわいい写真が残せます。
お七夜の食事の準備はどうする?
伝統的な習慣では、命名式をした後に参加者みんなで「祝い膳」を食します。自宅で準備をするのが大変な場合は、仕出しや宅配を利用することも可能です。できるだけママの負担にならない方法を考えましょう。
お赤飯や鯛の尾頭付きなどを中心に用意
祝い膳は「和食」が基本です。祝いごとには欠かせない「尾頭付きの鯛の塩焼き」や「赤飯」を中心に、お吸い物・お刺身・天ぷら・煮物・香の物などを用意しましょう。
旬の魚介を使った「刺身の盛り合わせ」は切って盛り付けるだけなので、準備する側としても楽です。
天ぷらは、エビを中心に旬のものを2~3種類加える程度で構いません。煮物は「筑前煮」や「昆布巻き」、お吸い物は「ハマグリのお吸い物」が定番です。
また、「紅白のかまぼこ」や「ダイコンとニンジンのなます」を添えると彩りがよくなり、食卓が明るくなるでしょう。
宅配や仕出し屋さんで購入することも可能
料理を準備するのが大変なときは、宅配サービスを使う手もあります。大勢で楽しく食事をするのが目的なので、一汁三菜や和食にこだわる必要はありません。
たとえば、揚げ物や焼き物が5~6種類入ったオードブルセットや寿司は老若男女に好評です。
和食にこだわりたい場合は、仕出し屋さんに注文しましょう。尾頭付きの鯛や赤飯を単品で注文してもよいですし、人数分の「懐石弁当」を選ぶ方法もあります。
店舗にお願いするときは、予算・人数を決め、事前に予約をしておきます。
お七夜を記念にしよう
お七夜は、赤ちゃんが生まれてから行う最初のお祝い行事です。思い出に残る1日にするために、夫婦でアイデアを話し合ってみましょう。ポイントは「形に残すこと」です。
家族写真を撮ろう
お七夜では「家族写真」を撮るのが定番です。赤ちゃん・パパ・ママを中心にお祝いの参加者全員の集合写真を撮影します。
スマホやカメラを三脚に設置して遠隔操作をすれば、参加者みんなが欠けることなく写ります。お食事や命名書、出産祝いにいただいた品物なども一緒に写すとよいでしょう。
よりきれいな写真を残したい場合は、プロのカメラマンに「出張撮影」をお願いするのがおすすめです。
カメラ目線ではない自然な表情も撮影してもらうと、後で見たときに当時の情景が思い出しやすくなります。できあがった写真は、フォトフレームに入れて部屋に飾っておきましょう。
手形や足形をとる
お七夜では、赤ちゃんの手形や足形をとるケースも多いようです。子どもの成長は早く、あっという間に大きくなります。
手形・足形をとっておけば「こんなに小さかったんだ!」と後からほほえましく思うでしょう。成長の証として、節目ごとに残しておくママもいます。
手形・足形をとる方法はいくつかありますが、水彩絵の具やインクを赤ちゃんの手足に塗り、紙に押し付ける方法が簡単です。
ネット通販ではインクタッチなしで型がとれるキットも販売されているため、ぜひチェックしてみましょう。
ニューボーンフォトも人気
「ニューボーンフォト」とは、生後3週間ごろまでの新生児の写真を指します。
生まれたばかりの赤ちゃんは表情がはっきりしておらず、撮影中も眠っていることが多いですが、天使のような穏やかな寝顔にはパパもママも心が癒されるでしょう。
ニューボーンフォトは頬杖ポーズやうつぶせポーズ、布で包んだミノムシポーズなどが人気です。ポージングや撮影を自分たちで行うと赤ちゃんがけがをするおそれがあるため、必ずプロに依頼しましょう。
プロのカメラマンといっても、新生児の扱いに慣れていない人もいます。ニューボーンフォトの経験があるかどうか、予約時に確認することが重要です。
お七夜のお祝い【体験談】
お七夜のお祝いをしたことのあるママやパパの体験談をご紹介します。
ほかにもある 生後のお祝い
生後7日目から1歳になるまでには、さまざまなお祝いごとがあります。行事が多いと感じる人もいますが、長い目でみれば、子どもの成長を記念したお祝いはそう多くはありません。節目の行事を大切にしましょう。
お宮参り
「お宮参り」とは、赤ちゃんが生まれてから1カ月後に行う通過儀礼の一つです。
無事に1カ月を迎えたことを、地域の守り神である氏神様(うじがみさま)に感謝し、これからの成長を見守ってもらうことが目的です。
男の子は生後31〜32日目、女の子は32〜33日目に地域の神社を訪れるのが昔のしきたりですが、現在は生後1カ月前後で、母子の体調がよい日に行われています。
お宮参り当日は「祝い着」と呼ばれる一つ身の絹織物で赤ちゃんを包み、両親、父方の祖父母で参拝するのが一般的です。
お食い初め
「お食い初め(おくいぞめ)」は、別名「百日祝い(ももかいわい)」とも呼ばれ、赤ちゃんの乳歯が生えはじめる「生後100日前後」に行われます。
お吸い物や赤飯、尾頭付きの鯛などの料理を赤ちゃんに食べさせるまねをし、「一生、食べ物に困らないように」「健やかに成長するように」と願うのです。
同時に「歯固め石」と呼ばれる小石を箸で触れ、その箸を赤ちゃんの歯茎にあてる「歯固めの儀式」も行われます。「石のように丈夫な歯が生えるように」との願いが込められた儀式です。
初節句
「初節句(はつぜっく)」とは、赤ちゃんが生まれてから初めて迎える「節句」で、男の子の場合は5月5日の「端午の節句」、女の子の場合は3月3日の「桃の節句」です。
どちらの日も赤ちゃんの健やかな成長と幸せを願うのが目的で、祖父母などを招いてさまざまなお祝いの料理をいただきます。
桃の節句では「雛人形」を、端午の節句には「五月人形」や「鯉のぼり」を購入するのが一般的です。
雛人形や五月人形には、子どもの厄災を引き受ける身代わりの役目があるといわれています。
初誕生
「初誕生(はつたんじょう)」とは、赤ちゃんの満1歳の誕生日を指します。1歳を無事に迎えられたことに感謝し、祖父母や親戚などを招いてお祝いをします。
昔は、一升分(1.8㎏)のもち米で作った平たい餅を赤ちゃんに背負わせる「一升餅」という行事を行っていました。一升は一生と発音が同じで「一生食べ物に困らない」という意味があります。
また、赤ちゃんの目の前にさまざまな品物を置き、何を選ぶかで将来を占う「選び取り」という占い行事をする地域もあります。
現代においては、赤ちゃんにプレゼントを買ったり、みんなで食事をしたりするのが一般的です。
思い出に残るお祝いをしよう
お七夜は、赤ちゃんの生存率が低かったその昔、無事に生後7日目を過ごせたことを祝う行事でした。
現代では、赤ちゃんの名前をお披露目し、みんなで食事を囲むのが通例ですが、「赤ちゃんの健やかな成長を願う」という趣旨は今も昔も変わらないといえるでしょう。
記念写真を撮ったり、手形・足形をとったりして、思い出に残るお祝いをしましょう。お宮参りや初誕生などの、節目節目の行事も大切に過ごしたいものです。
構成/HugKum編集部