未来の教育はどうあるべき?子どもにもPDCAを!【神野元基の「未来を生き抜く力の育み方」Vol.2】

教育のあり方のアップデートを目指すエドテック(Education×Technology)業界において、ひときわ注目を集める企業があります。人工知能を使ったタブレット教材「キュビナ」の開発と次世代型学習塾「キュビナ・アカデミー」を運営するコンパス社(東京)です。本連載では神野社長に「学校教育のあり方」と「未来を生き抜く力」について大いに語っていただきます。

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問題に直面した時「どうにかする」ための行動がとれるか-「問題解決のサイクル」を回す習慣づけ

「時代が大きく変わろうとしていることはうすうす感じているけど、自分の子どもたちにどんな準備をさせていいのかわからない……」

このような悩みを抱える親御さんや先生はたくさんいらっしゃると思います。実は前回の記事を読んだ方からも、「『未来を生き抜く力』についてもっと知りたい!」という声をたくさんいただきました。

来たるべき未来に備えるため『未来を生き抜く力』を育てる教育のことを、僕たちは「未来教育」と名付けて小学生や中学生を対象にいろいろな形で提供していています。今回は、僕たちが考える未来教育の基本的なスタンスについてお話ししたいと思います。

まずはこの図からご覧ください。

 

 

人間というものは、とある『問題』に直面したときに、「本来はどうあるべきなのか?」という『理想』を思い描いて、理想と現実のギャップを埋めるための『ソリューション(解決手段)』を考える、ということを繰り返しながら進化をしてきました。

この「問題」と「理想」と「ソリューション」からなるサイクル。僕たちは「問題解決のサイクル」と呼んでいますが、これを回せるようになることが僕たちの考える未来教育の基本です(未来教育ではまず「ソリューション」を学ぶことが重要なポイントになりますが、その理由は後述します)。

これを率先してぐるぐる回せる人は、これから社会がどう変わっていこうとも柔軟に対応していける可能性が高いでしょう。なぜなら、そういう人は社会の変化により生まれた目の前の問題や違和感に対して、理想を描き、そのギャップを埋めていくことができるからです。

世の中に存在する社会問題に対して「しょうがない」と諦めずに、「自分でどうにかしなきゃ」と思い、理想を実現するために行動できる人になってもらうことを未来教育の最終的なゴールと考えています。

解決しようとしている社会問題や描く理想の形により、その手段や選ぶ道は「就職」や「起業」、もしくは「政治」と異なりますが、共通して「課題解決のサイクル」を回せる人こそが『未来を生き抜く』ことができる人物なのです。

 

しかし、急にそこまで到達するのは難しいので、僕たちの未来教育では子どもたちにまずは身の回りの小さなことに問題意識を持ち、自分の力で解決できるようになることから始めてもらい、問題解決のサイクルを身につけて欲しいと思っています。

 

ソリューションを学ぶことの重要性

「問題解決のサイクルかぁ。じゃあ、世の中の現実に目を向けてもらうために、子ども達に貧困の現状を学んでもらおうかしら」

こう考える親御さんもいらっしゃるかもしれません。

子どもの視野を広げ、社会問題を知るという意味ではとても意義のあることです。しかし、小学生や中学生では、現実を見せたからといって「かわいそう、世の中から貧困がなくなったらいいのに」といった発想までしか浮かばないでしょう。

それは、理想に到達する筋道を作るのに必要な「ソリューション」の知識がなさすぎるために、理想を描くことすらできないからです。

だからこそ、小学生や中学生などの早い段階でより多くのソリューションを学び、問題に直面した時に理想を描けるようになる素地を作ることが大事なのです。

 

子供の頃からロボット、ドローンetc.の最先端テクノロジーに触れることで育まれる力

世の中には問題を解決するためのソリューションがたくさんあります。

それこそ小学校で習う四則演算、中学で習う二次方程式などの算数や数学も、人類の進化の過程において問題を解決するために生まれたソリューションの一つです。

数あるソリューションのなかで、僕が未来教育の中で特に重要視しているのがロボットやドローン、3Dプリンター、VRなどの最先端テクノロジーです。

なぜなら、これらの最先端テクノロジーは将来、産業の中心となるソリューションであるからです。

 

僕たちが学生の頃にプログラミングやインターネット、フォトショップを学んでいた人は、現在産業のド真ん中で活躍しています。ロボットやドローンなどの最先端テクノロジーは、それに匹敵するものと考えて頂ければわかると思います。

社会問題を解決するソリューションとして重要な最先端テクノロジーを、子どもの頃から触れていることは「未来を生き抜く」上で大きなアドバンテージになるのです。

それに加えて、なんといってもこれらの最先端テクノロジーは子どもたちが大変興味を持って取り組んでくれるという意味で未来教育の入り口としても最適なのです。

 

ロボットプログラミングで車の「自動制御技術」を体験

前回の記事でお伝えしたように、僕たちはいま東京都千代田区立麹町中学(工藤勇一校長)で最先端テクノロジーを使った未来教育の授業を届けています。生徒たちが取り組んでいるのは教育版レゴ™️「マインドストーム™️」を使ったロボットのプログラミングです。

具体的には、自らロボットを作って、数学の授業で習った「方程式」、「速度」や「距離」といった概念を使いながら、ロボットを動かし、センサーで障害物を感知したらロボットを止めるという制御プログラムを書くことで、ソリューションを使った問題解決のサイクルを回す疑似体験をしています。

ちなみにこうした(計算を含めた)センサー技術は、世の中の車にどんどん実装されている自動制御技術そのものです。

授業を通して、子どもたちはロボットやセンサー、プログラミングといった世の中にあるソリューションと数学が自分たちの生活でどのように使われているのかを身をもって体験していきます。

こうした体験を一度しておけば、今後、テレビで交通事故のニュースをみたときに、ある子どもは「あれ、自動制御していなかったのかな?」と思うでしょうし、自分が自転車で人とぶつかりそうになったときに「自転車にもセンサーをつけられないのかな?」と考える子どももいるでしょう。また、ロボットやセンサーなど授業で学んだソリューションを使って、自動運転以外にどのようなことが実現できるかということも想像できるようになります。

この時点ですでに問題解決のサイクルを回すことができはじめています。子どもたちには今後「ドローン」や「3Dプリンタ」を使った授業を通して、問題解決のサイクルを回す習慣を身につけていってもらいたいと思います。

今回の記事では、僕たちが子どもたちに届けている『未来を生き抜く力』を育てるための「未来教育」についてお伝えしました。

もちろん、現実問題としては、最先端テクノロジーを学校教育の現場で子どもたちに教えられるコーチ役が足りないといった課題はあるかもしれませんが、僕たちがなぜ最先端テクノロジーを用いた未来教育に注力しているか少しでもご理解いただけたかと思います。

次回は、麹町中学の工藤勇一校長との対談記事を予定しています。

今年の9月から同校に導入されたAI型教材キュビナによる数学の授業や、今回紹介させていただいた未来教育の授業についての近況報告、そして、学校教育のあるべき姿について熱いトークをしたいと思います。お楽しみに。

 

 

神野元基

株式会社COMPASS 代表取締役CEO

幼少期を北海道網走市で過ごし、2005年に慶應義塾大学総合政策学部に入学。在学中より起業家として活動。

2010年にアメリカのシリコンバレーでIT企業を起業した際に、現地での人工知能技術の盛り上がりと、2045年に訪れるとされている「シンギュラリティ(技術的特異点)」という概念に出会い、教育の道に進む。

 

テクノロジーの進歩により今後大きく変化する未来に向けて、子どもたちに「未来を生き抜く力」を身につけて欲しいと、2012年東京の八王子に学習塾COMPASSを開校。

しかし教育の現場で、多くの子どもたちは忙しすぎるという課題に直面し、2014年より人工知能型教材「Qubena」の開発をはじめ、現在1万7千人が利用する。人工知能型教材の開発の他、本来の目的であった「未来を生き抜く力」を育てるための「未来教育」も提供している。

 

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