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SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
「SDGs(持続可能な開発目標)」とは、世界が2030年までに達成するべき共通の目標のことです。2015年9月に国連サミットで採択され、日本でも既に目標達成に向けたさまざまな取り組みが始まっています。
SDGsには全部で17の目標があり、それぞれにゴール(2030年の姿)とターゲット(目標達成に向けた課題や手段)が設定されています。目標7が目指すゴールとターゲットを見ていきましょう。
日々の生活に欠かせないエネルギーについて考えよう
SDGs目標7のゴールは「すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」です。
ターゲットは、以下の5項目にまとめられています。
・安くて信頼できるエネルギーサービスの世界的普及
・再生可能エネルギーの比率拡大
・世界全体でのエネルギー効率の改善
・クリーンエネルギーの研究や技術向上に向けた国際協力、投資の促進
・インフラ整備や技術協力など、途上国への支援
新しい技術を開発したり、今までの使い方を見直したりしながら、世界中の人に公平にエネルギーが届く社会をつくることと考えてよいでしょう。
エネルギーの貧困問題を抱える途上国の現状
私たちにとって最も身近なエネルギーといえば、電気やガスです。スイッチ一つで部屋が明るくなり、蛇口からお湯が出る生活は快適です。
しかし世界には、電気やガスを使えない人がたくさんいます。エネルギーの貧困は、生活が不自由なだけでなく、経済発展の遅れや健康被害にもつながっています。エネルギー供給が遅れている途上国の現状を見ていきましょう。
電気を使えない人は7億人超
SDGs目標7の「エネルギーをみんなに」は、電気やガスなどのエネルギーが世界中で使える未来を示しています。
しかし現状では、電気を使えない人は世界に7億人以上もいるのです。調理や暖房用のガスが普及していない地域も含めると、現代的なエネルギーの恩恵を受けられない人の数はさらに多くなります。
国中に電気やガスを届けるためには、発電所やガスの貯蔵施設を造り、各家庭に送る仕組みを整備しなくてはなりません。もちろん、発電に使う燃料も必要です。その燃料を賄い、十分なエネルギーを供給することは、資金が乏しい途上国にとって非常に困難です。
目標7の達成には、今も電気やガスを使えない人が多数存在することや支援の必要性を、皆が正しく知る必要があるでしょう。
エネルギーの貧困で広がる格差
電気やガスが使えない地域では、未だにエネルギー源を薪やワラ、動物の糞などの原始的な燃料に頼らざるを得ない状況です。
こうした地域では子どもが燃料集めに駆り出されるケースが多く、学校に行けないでいるため、教育格差が生じます。また、夜に仕事や勉強をしたくても電気がなければ難しく、経済の発展を妨げています。
屋内に充満した煙を吸って、健康を害する人も少なくありません。森林伐採や大量の二酸化炭素の発生で、環境破壊が進むことも懸念されます。
エネルギーの貧困は、経済格差を助長させ、人命や地球環境を脅かす大問題といえるでしょう。
化石燃料を使い続けることで起こる問題
発電機や乗り物を動かすための燃料として、人類は長く石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を使ってきました。化石燃料のおかげで、現在の発展があるといってもよいでしょう。
しかし、化石燃料をこのまま使い続けると、さまざまな問題が起こります。SDGs目標7を理解するために、押さえておきたい化石燃料の問題を見ていきましょう。
資源の枯渇
化石燃料は、大昔の動植物の死がいが長い年月をかけて、地中で変化したものです。当然、埋蔵量には限りがあり、新しく作ることもできません。現在のペースで使い続けると、数十年後には枯渇する可能性もあるのです。
経済成長や人口の増加によって、世界のエネルギー消費量はますます増えると予想されています。特に、アジアの途上国を中心に化石燃料の需要が高まっており、資源獲得をめぐる競争も激しくなっています。
温暖化、大気汚染
化石燃料から出る大量の二酸化炭素は、地球温暖化を加速させる原因の一つです。人間の活動が理由で排出される温室効果化ガスの約65%が、化石燃料を燃やすことで発生しています。
また、化石燃料は採掘や輸送が大がかりです。石油や天然ガスを採るために地中深く穴を掘ったり、石炭を掘るために山を切り開いたりするので、周囲の自然は破壊され、生態系にも大きな影響を及ぼします。
輸送時に事故が起これば、流出した燃料によって甚大な被害が出ることもあります。
参考:温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量 | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
エネルギー問題に対する取り組み事例
エネルギーの貧困や化石燃料の枯渇、環境汚染などの問題に対して、世界はどのように取り組んでいるのでしょうか。日本の事例も合わせて紹介します。
再生可能エネルギーの普及
エネルギー問題解決の糸口として期待されているのが、「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマス燃料などの、自然界に常に存在するエネルギーのことです。
使用時に二酸化炭素を排出しないため、普及が進めば化石燃料の消費が抑えられ、地球温暖化の抑止につながると考えられています。
また、再生可能エネルギーは環境さえ整えばどこでも生産でき、枯渇の心配もありません。化石燃料を買えない国でも発電に必要なエネルギーが賄えるようになり、電気が使えない人を減らす効果も期待されています。
再生可能エネルギーが普及している国も
既に再生可能エネルギーが普及している国も少なくありません。スウェーデンやカナダは水力、デンマークは風力やバイオマス燃料が、国全体の発電量の7~8割を占めています。
特にスウェーデンは、化石燃料を使わずにエネルギーを供給できることを証明するよい事例です。日本と同じく、化石燃料を海外からの輸入に頼っていましたが、豊富な水力資源を活用して再生可能エネルギーへの転換に成功し、2015年にはエネルギー自給率が75%に達しています。
参考:
国際エネルギー | 統計 | 自然エネルギー財団
1. エネルギー政策動向 – スウェーデンの電気事業
カーボンニュートラルの実現に取り組む日本
日本では化石燃料への依存を減らすため、原子力発電を利用していましたが、東日本大震災以降、再び化石燃料を使った火力発電の割合が増えています。世界でも5番目に二酸化炭素の排出量が多く、エネルギー自給率も11.8%と低い水準です。
こうした現状を打開するため、日本政府は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を実現する目標を掲げました。次世代型の太陽電池の開発や、リサイクル技術の実用化など、技術先進国の強みを生かした取り組みにより、目標の達成を目指しています。
参考:
二酸化炭素(CO2)排出量の多い国|外務省
日本のエネルギー事情 [関西電力]
環境省_2050年カーボンニュートラルの実現に向けて
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SDGs目標7達成のために私たちができること
エネルギー問題の解決に向けて、私たちにもできることはたくさんあります。SDGsの目標7達成に貢献できる、簡単な方法を見ていきましょう。
節電家電の活用
日本は1人当たりの電力使用量が、世界で4番目に多い国です。火力発電がメインの日本では、電力消費量を減らせばそれだけ化石燃料の使用量も減り、温室効果ガス削減効果が期待できます。一人一人が節電を心がけることで、環境への負荷を軽減できるでしょう。
節電によって電気代が安くなれば、家計にもメリットがあります。最も手軽な節電方法は、省エネ機能を備えた家電の利用です。
日本ではメーカーの努力により、電力消費量を抑えた電気製品がたくさん開発されています。古い家電を買い替えるときは、省エネ機能に注目して選ぶとよいでしょう。
再生可能エネルギー電力に切り替える
再生可能エネルギーで発電された電気を積極的に使うのも、SDGs目標7の達成に有効です。
消費者である私たちが、環境への配慮が行き届いたサービスを選ぶことで、企業の活動を支援し再生可能エネルギーの普及に貢献できるのです。
電力会社の多くは、電源構成(発電に使うエネルギー源の使用比率)を公表しています。中には再生可能エネルギー比率が実質100%の会社もあります。電力会社を切り替える機会があれば、電源構成を参考に、再生可能エネルギーの比率が高い会社を探してみましょう。
地球に優しい電気を効率的に使おう
SDGs目標7は、無闇にエネルギー利用を抑制するのではなく、環境に負荷のない形で生産し、皆が使えるようにすることを目指しています。今から電気のない暮らしに戻るのは現実的ではありませんし、安全な電気が使えれば途上国の子どもたちの暮らしも安定するはずです。
地球上の誰もが快適に暮らせる未来のために、エネルギーの重要性や効率的な使い方について、親子で話し合ってみましょう。
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構成・文/HugKum編集部