絵本『賢者の贈り物』から、お金を誰のために使うのか考えよう【ファイナンシャルプランナー監修!絵本で学ぶお金の話】

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ファイナンシャルプランナーが子育て中のパパママに必須な「お金」の話を、絵本を例にとりながらわかりやすく解説していくリレー連載。第11回は有名な絵本、「賢者の贈り物」を通して、他の人のために使うお金について考えます。子どもと一緒に絵本を読むことで、お金の原点を学ぶことができます。

お金の使い方を考えさせられる、クリスマス時期にぴったりの一冊

私が今回ご紹介する「賢者の贈り物」は、アメリカの小説家オー・ヘンリーの短編小説で、「最後の一葉」と並んで彼の代表作品とされています。

賢者の贈り物 

オー・ヘンリー/著 リスベート・ツヴェルガー/絵

物語のあらすじ

貧しい夫婦がクリスマスイブにお金をなんとか工面して、お互いに一番合うプレゼントは何かと思いをめぐらせる、愛が溢れる静かな物語です。

夫のジムは祖父から父へと代々受け継いできた金の懐中時計を売って、美しい長い髪の妻デラのためにべっ甲の櫛のセットを買いました。妻のデラは美しい長い髪を売って、夫ジムの大切な懐中時計が引き立つプラチナの鎖を買いました。夫婦がお互いのために買ったプレゼントは、一見すると無駄になってしまったかのように見えます。

もっとも賢い贈り物、その大切さを知る

しかしこの物語は「この贈り物をした二人こそが、最も賢い・・・」と締めくくられています。

 自分の一番大事なものを手放してでも相手のためにクリスマスプレゼントを準備したいと願う二人から、なにか大切なものにはっと気づかされるようなストーリーです。

 相手を想い贈り物を選ぶ体験

記憶がよみがえったきっかけ

子供の頃に読んだこの物語を私がふと思い出したきっかけがあります。子どもの習い事でのクリスマス会でのプレゼント交換の企画でした。

一人500円の予算でプレゼント持ち寄るということで、娘と私は同じクラスの5人のお友達を頭に想い描きながら、プレゼントを選びました。自分がもらうならこれがいいけど、もし男の子に当たったらがっかりするかもしれないな、などとずいぶん迷い、探しまわりました。大変でしたが、相手のことを思いながら選ぶ楽しさを味わった時間となりました。

 そしていよいよそのプレゼント交換の当日、私と娘が選んだ品物はその場に現れませんでした。事前に教室全体で集められたプレゼントは、同じクラス内での交換ではなく、数あるクラスのどこかで誰かのプレゼントになるという企画だったのです。皆さんの周りでもこうしたプレゼント交換はよくあると思いますし、イベントとして盛りあげる意味での企画なのは私も重々承知しています。とはいえ、私と娘の中に一抹の寂しさが流れたのは確かでした。

知らない相手にでは、相手を想って選んだ時の心を贈ることができなかったからなのでしょう。

ジムとデラのような贈り物をしたい

誰かのために使うお金を考える

私たちキッズ・マネー・ステーションでは全国各地で「おこづかい会議」という講座を開催してたくさんの親子にご参加いただいています。講座の中でおこづかいの使い道のひとつに「誰かのために使うお金」が出てきます。子ども達が自分のおこづかいの中から、自分以外の人のために使うという目的の予算を立てるのです。

例えば赤い羽根募金、離れて暮らす祖父母へのお手紙を書く費用、家族の誕生日に贈り物など、いくらずつ貯めておくといいかと考えます。この小さな「誰かのために使うお金」という予算立ての練習が、将来「賢者の贈り物」ができる人への第一歩になってくれればと考えています。

お金は使って初めて豊かになる

この物語はお金の使い方という側面からも教訓を与えてくれます。貧しい夫婦だというのなら、お互いのプレゼントを買わなくてもいいのではないか?と家計の見直しを生業とするファイナンシャル・プランナーの視点なら、きっとこうアドバイスしてしまうでしょう。

しかし、物語の最後の締めくくりが「賢い二人」と語っているように、この二人の買い物からはお金の量ではない豊かさ、幸せに誰もが気付かされるのではないでしょうか?

お金を貯めなさい、無駄遣いをしないようにしなさいとばかり子どもの頃から教えられてくると、お金を使う事そのものが悪いことのような意識が植え付けられかねません。豊かさとは、お金を沢山持っているから感じるのではなく、本当に価値あるものに使った時に感じます。その豊かさが幸せに繋がるとしたら、使い方こそが幸せな人生のためのお金について一番学んでおきたいことなのかもしれません。

プレゼント選びをきっかけに親子で話してみよう

皆さんもご家庭でこのお話を読んで、贈り物のことはもちろん、お金の上手な使い方についても話してみませんか? お友達とのプレゼント交換、サンタクロースへのお手紙、お正月のお年玉など、お子さまの周りでお金が動くイベントが多いこの時期に、いただく側としても、贈る側としても親も子もきっと何か気づく機会となってくれることと確信しています。

記事執筆

小峯洋子|ファイナンシャル・プランナー
キッズ・マネー・ステーション認定講師/DCプランナー(企業年金総合プランナー)/FP事務所 はっぴーまねープランニング代表
不動産会社、住宅メーカーで設計部勤務を経て、夫の転勤により退職、子育てに専念。第2子の乳児期にファイナンシャル・プランナー資格を取得し、2014年にFP事務所を立ち上げた。子育て世代に役立つマネー講座の開催や、若い世代への金融教育に力を入れている。

 

記事監修

キッズマネーステーション|ファイナンシャルプランナー

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2018年までに1100件以上の講座実績を持つ。


 

 

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