代替肉とはどのようなもの?
国際的に注目を集めている「代替肉」とは、どのような特徴を持った食材なのでしょうか。さっそく見ていきましょう。
世界で広がる食材
「代替肉」とは、植物性タンパク質を含む大豆などから作られた食品です。明確な定義はありませんが、主に植物性の原料で、本物の肉のような食感や味わいを再現したものを指します。
植物性の原料から作られた代替肉は、肉や魚を食べないベジタリアンや、野菜中心の食生活を送っているヴィーガンにも好まれている食材です。
代替肉の市場規模は世界的に拡大を続けており、原料となるエンドウ豆が手に入りやすい中国でもポピュラーな存在になりつつあります。
日本では、海外に比べて代替肉が浸透しているとはいえません。しかし、大手チェーンが大豆を使った製品の販売を開始するなど、代替肉の認知度は高まりつつあります。
代替肉の主な原材料
代替肉の原料となるのは大豆だけではありません。大きく分けて「植物肉」と「培養肉」の2種類があります。
最も一般的なのが、植物性の食材を使った「植物肉」です。大豆の他に小麦やじゃがいもなどの材料から作られた植物肉は「フェイクミート」とも呼ばれ、海外には専門のブランドも存在します。
一方、動物細胞を体外で培養して製造するのが「培養肉」です。畜産肉と比較して温室効果ガスを削減できるのがメリットで、細胞から作るため家畜を殺す必要もありません。そのため、動物性の食品ではあるものの、一部のベジタリアンやヴィーガンからも受け入れられています。
また、微生物を発酵させてタンパク質を生成する方法も注目されています。このように、代替肉は幅広い原料から作られているのです。
代替肉のメリット
肉を食べるのであれば、一般的な動物肉でよいのでは?と感じる人もいることでしょう。代替肉には、環境への影響や健康面など、動物性の肉では得られないメリットが多くあります。
具体的にどんなメリットがあるのか解説します。
環境に配慮できる
代替肉の大きなメリットは、温室効果ガスを削減できる点です。
食肉用の家畜を育てる畜産業は、大量の温室効果ガスを発生させるといわれています。家畜が排出する糞尿や消化に伴って発生するガスには、メタンが含まれています。
メタンは二酸化炭素よりも強い温室効果を持っているため、メタンが発生する畜産業は環境に大きな影響を与える可能性があるのです。
さらに、家畜を育てるには飼料が欠かせません。肉を生産するためには大量の飼料を育てる広大な農地が必要であり、飼料の栽培は森林伐採にもつながります。
メタンの排出を減らし、森林の破壊を防げるのが、畜産肉から代替肉にシフトするメリットなのです。
食料危機の解消
日本では少子化が叫ばれている一方、世界の人口は増え続けているのが現状です。人口が100億人を超えるともいわれていますが、代替肉の登場が食糧危機を解決する可能性があります。
畜産業に使われる飼料は、大豆やトウモロコシなどがほとんどです。飢餓に苦しむ人がいるにも関わらず、世界で生産された作物の多くが家畜の飼料として消費されています。
飼料用の大豆から代替肉を作れば、より多くの人に食糧を行き渡らせることが可能です。
また、ベジタリアンやヴィーガン以外にも、宗教上の理由で肉を食べられない人も存在します。代替肉は、そのような人々にとってのタンパク源になり得る貴重な食材なのです。
動物愛護につながる
代替肉は動物愛護の観点からも支持されています。動物の命を奪うのを嫌って肉や魚を口にしないベジタリアンやヴィーガンにも、受け入れられやすい食材といえるでしょう。
ヴィーガニズムとは、人間による動物の搾取を避けようとする考え方です。そのため、ヴィーガンの人々は肉や魚を食べないのはもちろん、毛皮や革で作られた製品の使用も避けています。
飼育にかかるコストを抑えるため、劣悪な環境で育てられている動物も珍しくありません。代替肉が流通すれば、牛や豚などを食肉として販売する畜産業が持つ倫理的な問題を解消できる可能性もあります。
おいしくてヘルシー
当初は味に違和感を覚える人も多かった代替肉ですが、メーカーの努力によってより肉に近い風味や味わいを再現できるようになりました。クオリティが高まったことで、海外では代替肉を提供するレストランも増えてきています。
本物の肉に比べて脂質が少ない点も、代替肉ならではのメリットです。代替肉の主な原料となる大豆には、ミネラルや食物繊維などの栄養素が含まれ栄養バランスも良好です。日々の生活に取り入れてヘルシーな食事を楽しみましょう。
代替肉のデメリット
代替肉が普及することでもたらされるのは、メリットばかりではありません。代替肉のデメリットについて、2点説明します。
価格が高い
代替肉のデメリットとして、まず挙げられるのがコスト面の問題です。現在代替肉の価格は、普通の肉と比べると高いことが多いため、手軽に購入しにくくなっています。
世界的にも拡大しつつある代替肉事業ですが、メーカーごとに製法や原料は異なります。共通したレシピが存在しないため、安価で大量に生産するのが困難になっているのです。
代替肉に関する事業は歴史が浅く、まだ安定した市場が完成しているとはいえません。原料の価格も変動しているため、代替肉を低価格で提供することは、今後の課題といえるでしょう。
食肉業界への影響
将来的に代替肉が世界中で普及し、畜産肉と同様のシェアを占めることになれば、食肉業界にも大きな影響を及ぼします。畜産業に関わっている人はもちろん、食肉の流通や販売に携わる人も仕事を失う可能性があるのです。
食肉だけでなく、乳製品を生産するために家畜を飼育している人も数多く存在します。代替肉事業が拡大していく中で、食肉業界の問題をどう解決していくかは重要な問題です。
代替肉の売上がさらに増加し、日々の食生活に取り入れる人が増えると、食肉業界に与える影響も大きくなると考えられます。
代替肉の作り方・レシピ
栄養バランスに優れヘルシーな代替肉を家庭で作る方法や、おすすめレシピを紹介します。意外に簡単にできるので、興味のある人は挑戦してみましょう。
大豆を使った代替肉
市販の大豆や豆腐を使って、代替肉を手作りすることも可能です。添加物が気になる人や、代替肉に初めて挑戦してみたい人は試してみましょう。
手軽にチャレンジできるのが豆腐を使った方法です。
水を切った豆腐を8等分し、容器に並べて冷凍庫に入れます。1日凍らせたら取り出して電子レンジで2分ほど加熱し、粗熱が取れたらしっかりと水分を絞りましょう。
材料となる豆腐は、絹でも木綿でも問題ありません。時間に余裕があれば自然に解凍して、片栗粉をまぶしてから焼くのもおすすめです。
大豆から代替肉を作る場合は、ゆでた大豆を細かくすり潰し、200gあたり大さじ2杯程度の全粒粉を加えてよく混ぜます。その後、冷蔵庫で半日ほど寝かせれば完成です。
代替肉のおすすめレシピ
市販の代替肉の中には、普通の肉と同様に調理できるものもあります。ひき肉に近い形状の「フレークタイプ」や「ブロックタイプ」などがあるため、形状に合わせたレシピを試してみましょう。
「フレークタイプ」の代替肉は、ハンバーグやミートソースなどのメニューにぴったりです。そのまま料理に使えるタイプの製品であれば、時短調理にも役立ちます。
「ブロックタイプ」の代替肉は揚げ物やいため物に適しています。下味を付け、衣をまぶして油で揚げればボリューミーな唐揚げの完成です。
代替肉は脂質が少ないので、普通の唐揚げよりもさっぱりとした仕上がりになるでしょう。
日本でも注目が集まっている代替肉
大手ハンバーガーチェーン店が代替肉を使った商品を導入するなど、代替肉は日本でも注目され始めています。
コスト面などでの課題はありますが、肉を再現した味のクオリティは向上してきており、代替肉を取り入れる人が増えつつあります。低カロリーで高タンパクな代替肉は、健康に役立つ点も特徴です。
食肉に関わる畜産業で発生する温室効果ガスが削減でき、環境への配慮にもつながるのが代替肉のメリットです。動物の命を奪う必要がないことから、ヴィーガンの人にも受け入れられています。
さまざまなメリットのある代替肉を日々の生活に取り入れて、食事から環境を意識するのもよいかもしれません。
構成・文/HugKum編集部