目次
そもそも産休とは? いつからいつまで取れるもの?
「産休中のお給料やボーナスってどうなるの?」
「結局のところ、どんな手続きが必要なのかイマイチわからない」
そんなお悩みを抱えるプレママさんは案外多いのではないでしょうか?
そもそも「産休」とは、
・産前休業(出産の準備期間)…出産予定日6週間前
・産後休業(産後に回復する期間)…出産してから8週間後まで
これら、産前産後に取れる2種の休業を合わせた最大12週間のお休みを指します。
「産前休業」はあくまでも「任意」で、出産予定日の6週間前から開始日を自由に設定可能。
一方で、「産後休業」は法律で定められているものです。(産後6週間経過した時点で、医師が認めた場合は、職場復帰を早めることも可能)
そして、取得できるのは、以下の条件を満たしている女性。
【条件】
・週2日以上の勤務で、申し出をした時点で、同一の会社で1年以上働いている
・出産1年後も引き続き雇用される見込みがある
このように産休という制度そのものが意外と複雑で、調べていても混乱しがち。
ですが、働くママにとっては、出産に向けて十分に制度を知り、準備しておく必要があるものです。
そして、おなじように大切なのが、この産休中のお給料や税金のこと。
そこで本記事では、産休中のお金のことや手続きに関する疑問・お悩みを解説。
産休取得時のお給料や税金をはじめとした疑問から、産休中に必要な手続きを解説の上、きっと役に立つ先輩ママの体験談をお伝えしていきます。
産休中の気になる疑問 Q&A|お給料やボーナス、上の子の保育園は?
まずは、産休時に関する疑問を解決。産休中のお金のこと、健康診断、上の子の保育園をどうすればいいのか…これらのお悩みをお持ちの方は、チェックしておきましょう。
Q.産休中の給与は出る?
A.原則支払われません。「出産手当金」を受け取ることができます。
産休中の給与は、原則支払われません。
代わりに、勤務先の健康保険に加入している人であれば、「出産手当金」を、健康保険から受け取ることができます。もらえる額の計算方法と、申請の手順は下記のとおりです。
●出産手当金
【もらえる額】
支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×2/3×産休で休んだ日数
【申請の手順】
1・産休前に出産手当金の申請用紙を勤務先や協会けんぽで入手(ダウンロードも可)
2・入院時に産婦人科の担当医に申請用紙の必要事項を記入してもらいます。
3・産後56日経過後、出産手当金の申請用紙を、職場の健康保険窓口や協会けんぽ、健康保険組合に提出。
4・申請してから1~2ヶ月後に出産手当金が振り込まれます。
Q.ボーナスはもらえる?
A.在籍している会社のボーナス支給条件によります。
ボーナスは、会社の営業成績や業績をもとに支給が決定されるもの。場合によっては、減額されたり、ボーナス自体が出ないこともあります。
また、産休中のボーナスも法律上で定められているわけではありません。支給条件は会社の就業規則に記載されているはずなので確認してみましょう。もしも記載がない場合は、早めに相談してみましょう。
Q.社会保険料はどうなる?
A.お休み中の社会保険料は免除されます。
産休の「開始月」から「終了前月」まで、社会保険料は免除されます。日割り計算ではないのでご安心を。
Q.住民税はどうなる?
A.産休中でも、納める必要があります。
前年の所得に基づいてその額が算出される住民税は、給与が出ない産休中でも納める必要があります。
さらに、産休中は「給与が出ない=住民税も給与から天引きできない」ため、自分で納める必要があるので注意!
各自治体から納付書が送付されるので、金融機関orコンビニエンスストアで支払いましょう。
Q.産休中の健康診断は受けられる?
A.基本的に健康診断はなし。会社によっては受けられるかも?
法律上(労働安全衛生法第66条)、産休や育休で会社を休んでいる人は会社の健康診断を受ける義務がありません。ただし、会社によっては産休・育休中の人にも健康診断を実施している場合も。
会社からお知らせがなく、健康診断の受診を希望する場合は、一度問い合わせてみることをおすすめします。
Q.上の子は保育園を退園になる?
A.理由があれば、上の子は保育園に通い続けられます。
産休中は、ママが自宅にいる時間が増えますよね。「保育の必要がない」と見なされるのでは…と心配になる方もいるかもしれません。けれども、内閣府『子ども・子育て支援新制度について』によると、産休中でもきちんと理由があれば、上の子の保育園利用は認められています。
条件や申請方法については、過去の記事で詳しくお伝えしているのでぜひご参照ください。
Q.副業やバイトをしてもいい?
A.はじめるなら、育休に移行してから。(就業規則によってはNG)
原則として、事業主は産後8週間は労働者を働かせてはいけないことになっています。そのため、副業をはじめるのならば産休→育休に移行した後になります。
育休中の副業は、副業を認めている企業にお勤めであれば、基本的には問題ありません。ただし、就業規則によっては産休・育休中における副業を禁止している場合もあるので、改めて確認しておきましょう。
また、月10日(10日を超える場合は月80時間)以上働くと育児休業給付金が減額・支給停止になるおそれがあるので、注意が必要です。
産休中に必要な手続き
出産後には、書類の提出や申請など、さまざまな事務作業がいっぱい! ただでさえ忙しい産後にこれらの手続きで慌ててしまわないように、産休に突入したら早めに準備をしておきましょう。以下では、必要な手続きの種類と概要をお伝えしていきます。
出生届
【提出期限:出産日を含めて産後14日以内】
【提出先:子どもの出生地か本籍地、または届出人(パパorママ)所在地の市区町村役場】
子どもの氏名を戸籍に記載するための必須書類。出生地での提出もOKなので、里帰り出産の場合は現地の役場へ届け出が可能です。出産後はなるべく早く提出しておきましょう。
児童手当金
【提出期限:出生日の翌日から15日以内の申請が理想的】
【提出先:現住所の市区町村役場(公務員の方は勤務先にて申請)】
0歳〜中学校卒業までの児童を養育している人に支給される「児童手当金」。
原則として、申請した月の翌月分から支給を受けることができますが、申請が遅れてしまうと、その分の手当を受けられなくなるおそれも。
出生日が月末に近い場合や、やむを得ない事情で月末までに手続きができなかった場合のみ、申請が月を跨いでしまっても(※出生日翌日から15日以内であれば)、申請月分から支給されます。
健康保険の加入
【提出期限:出生後すみやかに】
【提出先:社会保険の場合→勤務先の担当窓口/国民健康保険の場合→自治体の担当窓口】
各自治体から子どもの医療費助成を受けるのに必須。加入手続きが遅れると、病院での受診時に、全額を立て替える必要が生じてしまいます。産後はなるべく早く書類を提出しましょう。両親どちらかの扶養として加入します。
子どもの医療費助成(乳幼児医療費助成)
【提出期限:子どもの健康保険証が届いたら早めに】
【提出先:各自治体の担当窓口】
子どもが医療機関で治療・診察を受けた費用の一部or全額を自治体が助成してくれるという制度。加入すると「乳幼児医療証」が発行されます。
各自治体によって設けられており、対象年齢や助成金額は地域によって異なります。
また、助成の受け取り方も
・受診時に助成分を差し引いてくれる場合
・後日申請して受け取る場合
自治体によって違いがあるのであらかじめ確認しておきましょう。
健康保険証が届いたらコピーを準備し、すみやかに手続きするのがベター。「健康保険証のコピーは後日の提出でOK」な自治体もあるようです。
出産育児一時金
【提出期限:受取方法によって異なる】
【提出先:病院or各健康保険組合の担当窓口】
健康保険対象外の出産費用の助成金。
加入する健康保険組合から受け取ることができ、その額は、基本的には子どもひとりにつき42万円、多胎の場合は42万円×人数分とされています。ただし、産科医療補償制度加算対象外の病院で出産した場合は1人あたり40.4万円に。健康保険組合によっては付加給付金がもらえる可能性もあります。
受け取り方法には、以下の3つがあります。
・「直接支払制度」…健康組合から出産する医療機関に出産育児一時金が直接支払われ、退院時の支払いが差引きされる(病院が準備する合意書に記入し、入院までに提出し申請)
・「受取代理制度」…出産する医療機関が「直接支払制度」を導入していない場合、自分で健康保険組合に申請。その後、組合から医療機関に支払われ、直接支払制度と同様に退院時の支払いを差引きしてもらえる。(健康保険組合から申請書をもらい、医療機関に必要項目の記入をお願いする。出産予定日の2ヵ月前以降に、それを自分で健康保険組合へ提出)
・「産後申請」…産後、出産費用全額支払ってから健康保険組合へ申請し、支給を受ける(健康保険組合でもらえる申請書類の必要項目を医療機関に記入してもらい、退院後に健康保険組合へ提出。申請期限は出産日翌日から二年)
高額療養費
【提出期限:診察日の翌月~2年の間】
【提出先:健康保険組合の担当窓口】
高額療養費とは、各月(1日~末日まで)にかかった医療費の合計金額が、自己負担限度額(年齢や所得によって異なる)を超えた際に受け取ることができるもの。
トラブルゼロで自然分娩にて出産した場合は、高額療養費の対象にはなりませんが、帝王切開や吸引分娩、鉗子分娩などがあった場合は、それらにかかった医療費が高額療養費の対象となります。
高額療養費に該当する場合、国民健康保険であれば多くの自治体は申請書類を送付してくれます。申請書に必要事項を記入し、必要書類(医療費の領収書など)と合わせて提出しましょう。
出産手当金
【提出期限:産後57日目以降〜2年(要確認)】
【提出先:勤務先の担当者】
冒頭で述べた「出産手当金」の手続きも忘れずに。産休中、お給料が出ない期間に健康保険からもらえる手当金です。
支給金額は、産休開始前の給与のおよそ3分の2相当。金額支給対象期間は、原則として【出産前42日間+出産後56日間=98日分】です。
申請後約1~2ヵ月後に支給されます。産前と産後に分けて申請することも可能ですが、2回分の申請手続きをする必要があります。
申請書には出産する医療機関に記入してもらう項目があるので、出産前にあらかじめ準備しておくとスムーズです。
先輩ママたちにアンケート! 産休中の「お金・手続き」体験談
ここでは、実際に先輩ママたちが体験した産休エピソードをご紹介! HugKumママからアンケートに寄せられた「困った」「助かった」体験談として、タメになるお話の数々が寄せられました。
手続きに時間がかかり支給が遅れることも
会社によっては、出産手当金の手続きに時間がかかってしまい、「支給が遅れる」ということもあるようです。お給料が出ない産休中、この手当金がなかなか受け取れないと困ってしまいます。不安な方は、担当者が申請手順をしっかりわかっているか、確認してみるのも良いかもしれません。
産休手当が支給されない
こちらも、手当金をなかなか受け取れず困ってしまったというママさんからのコメント。そもそも出産手当の支給時期は「申請をしてから1〜2か月後」とされており、毎月のお給料が出ない状況ではなかなか辛いものですよね。
傷病手当金の申請でお金が戻ってくるケース
こちらは、切迫早産で病休を取っていた際の傷病手当金が「かなりもらえた!」とのエピソード。
傷病手当金と出産手当金を同時に受けられる際、通常、出産手当金の支給が優先されます。ただし、傷病手当金が出産手当金の支給額を超える場合は、その差額が支給されるので、もし産休前に病休をとっていた場合は注意深く確認しておきましょう。
予定日より早く出産
出産手当金は、手続き当初の「支給の目安」として出産予定日を用いますが、あくまでも支給されるのは、産休中(産前6週間前〜産後8週間後まで)の手当のみ。もしも予定日より出産が早くなったor遅くなった場合は、産前の休業日数が変わるので、手当金にも変動がなされます。
出産が予定日より早まったため追加で書類を求められるなどはありませんが、出産日がずれた場合は、改めて変更届の提出が必要になります。(出産後・産前産後休業期間が確定してから「産前産後休業取得者申出書」を提出すれば1回の手続きで済みます。ただしこの場合だと、産前期間の社会保険料は請求されるので注意。)
出産予定日と予定日がぴったりと合わない方は、当然のことながら多いはず。
記入や申請に不安がある方は、早めに確認しておくようにしましょう。
事前にしっかり調べておくことで対応できた
また、ネットで事前に調べておいたことで、スムーズに諸々の手続きができた、という声もありました。勤め先に任せっきりにしすぎず、どんな書類がなんのために必要なのか、ご自身でリサーチした上で準備をしておけるといいですね。
夫婦間での情報共有が大切
「産休中に準備」…と言っても、そもそも産休というものは出産直前の母体をいたわって設けられているもの。人によっては思うように書類を書いたり、取得や申請のために外出したりができないことだってあるかと思います。
出産はひとりのことではありません。夫婦間で協力し合いながら、産後に向けたお金のことや、身の回りの準備を進めていけるのが理想的です。急な入院もあり得るからこそ、お互いに早めに情報共有がしておけるといいですね。
産休中を有意義に過ごすために
やっておかなければいけない手続きはもちろんたくさんありますが、あくまでも産休は「ママのお休み」!
仕事をしながらではできなかったことや、赤ちゃんが生まれてからではなかなかできそうにないことも、存分に楽しんでおきましょう。
過去の記事では、産休中にやっておきたい準備と合わせて、先輩ママ直伝の「産休おすすめの過ごし方」をご紹介しています。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
事前のリサーチ&夫婦間での情報共有が大切!
今回は、産休に関する疑問や、産休中にしておきたい手続きについてお伝えしてきました。先述してきたとおり、産休中の体調によっては、思うようにやるべきことに取り組めない場合もあります。申請書類の準備と確認、そして夫婦間での情報共有は早めにしておくようにしましょう。
文・構成/羽吹理美