日本の環境問題の現状を知ろう。子どもたちの未来のためにできること

自然災害の増加や水質汚染など、環境破壊に関するニュースが毎日のように報じられています。このままでは、子どもたちの未来も心配です。日本の環境問題への取り組み方や、問題解決のために私たちができることを解説します。

生活に影響を及ぼす環境問題

生活が便利になればなるほど、地球はダメージを受けます。人類による環境破壊行動は、もはや自然の回復力を上回り、生活に影響を及ぼすほどになっているのです。

環境破壊が進んだ要因と、今後の対策について見ていきましょう。

生活質の向上による環境破壊

環境破壊が表面化したのは、18~19世紀にヨーロッパで起こった産業革命以降です。この時代から、人類は石炭を始めとする化石燃料を大量に消費するようになりました。化石燃料によって工場での大量生産が可能になり、工場の排気ガスや排水が空気や水、土壌を汚染していきます。

 

生活が便利になったことで人口が急激に増え、ごみの増加や食糧不足といった問題も起きています。

 

経済活動が生物の暮らす場所を奪い、多くの野生動物が絶滅の危機にあるのも周知の事実です。人類が生活の質を高めるためにとった行動が、自分たちの首を絞めているといえるでしょう。

SDGsなど世界的に環境への関心が高まる

環境破壊が急激に進んだことで、多くの国が対策に乗り出します。しかし、各国がバラバラに対策を講じても、あまり効果はありません。空気も水も、地下資源もすべて地球の財産であり、国境はないからです。

このため1970年代以降、国連が環境問題について議論する場を設けるようになります。1992年からは10年ごとに「地球サミット」が開かれており、2012年の地球サミットでは「SDGs」の議論が始まり、2015年の国連サミットで正式に採択されました。

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連に加盟する193カ国が、2030年までに達成すべき社会・経済・環境に関する17の目標を指します。SDGsの採択を機に、人々はより環境問題に関心を持つようになり、目標達成に向けて積極的に動く企業も増えています。

参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

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日本が抱える環境問題の現状

続いて私たちが暮らす、日本の現状に目を向けてみましょう。日本が抱える環境問題はさまざまありますが、ここでは主な3つの問題を紹介します。

温暖化による自然災害

近年、世界各地で異常気象による自然災害が頻発しています。日本でも猛暑や局地的な豪雨などが多発し、その数は年々増加している印象です。

異常気象の原因の一つに「地球温暖化」が挙げられます。経済活動によって「温室効果ガス」と呼ばれる二酸化炭素やメタンの排出量が増え、地球の気温が上がっているのです。

気温が上がると単に暑いだけでなく、大気中の水蒸気量が増えて雨が降りやすくなります。1カ所に多くの雨が降る一方で、極端に降雨量が減る地域もあり、洪水や干ばつの被害が増えるといわれています。

工場や車の排気ガスによる大気汚染

日本では高度経済成長期が始まった1950年代以降、工場や自動車の排気ガスによる大気汚染が深刻化しました。工業都市では汚染された空気を吸った住民が呼吸器障害に苦しみ、大きな社会問題となります。

物流が盛んな都市部では、自動車の排気ガスが周辺住民を悩ませました。現在は国や企業が排気をきれいにする対策を実施しており、排気ガスによる大気汚染は軽減されています。しかし、完全に無害化されたわけではなく、さらなる改善が必要です。

また、近年は経済発展が著しい周辺国から、海を渡って有害物質が流れ込んでいます。大気汚染を引き起こしている地域への啓蒙活動や技術支援も、日本が抱える課題の一つです。

汚染物質の排出で起こる水質・土壌の汚染

大気汚染と同様に、工場から排出された有害物質を含む水は、川や海、周辺の土壌を汚染しました。水質汚染によって多くの魚が死んだだけでなく、汚染された水や魚を口にした住民にも健康被害をもたらしたのです。

一度汚染された土壌は有害物質を取り除くまで、畑や住宅地として使用できません。工場排水による汚染は規制強化や技術の発達によって軽減していますが、生活排水にはまだ改善の余地があります。

生活排水をきれいにするためには、下水処理技術の向上はもちろん、私たちの意識改革も必要です。

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日本の環境問題への取り組み

世界中が環境問題に注目している中、日本ではどのような取り組みがされているのでしょうか。政府が環境問題解決のために制定した法律や、規制事項について見ていきましょう。

「環境基本法」の制定

1992年の「地球サミット」で、地球規模での環境対策が検討されたのを機に、日本政府は「環境基本法」を制定しました。

日本には1967年に制定された「公害対策基本法」がありましたが、この法律は国内の公害対策について定めたもので、地球規模の環境問題には対応できませんでした。

そこで、持続可能な社会の構築や、国際的環境保全活動の推進などを基本理念とする、環境基本法を新たに制定したのです。

2001年には「環境庁」を「環境省」に格上げして、権限や予算を充実させました。環境基本法をもとに、都道府県単位で「環境基本条例」が制定され、各自治体にも環境問題対策への意識が広がっています。

参考:環境基本法 | e-Gov法令検索

温室効果ガスの排出削減

温室効果ガスの排出量削減は、各国が足並みをそろえて取り組むべき課題です。日本も2030年までに2013年比で26%、2050年までに80%の排出量削減目標を定めています。

目標を達成するための具体的な施策は以下の通りです。

・再生可能エネルギーの導入拡大
・事業所や住宅への、省エネルギー設備の導入促進
・輸送の効率化と公共交通機関の利用促進
・二酸化炭素を吸収する森林の保全

生物多様性を確保

日本は1993年に「生物多様性条約」に加盟しました。主な目的は、地球上の全ての生物とその生息環境を保存し、生物資源から得られる利益を公平に分配することです。

第6条では条約の目的を達成するために、各締約国に対して具体的な戦略の策定を定めています。日本では、1995年に制定した「生物多様性国家戦略」に基づき、各省庁が連携して生物多様性の確保に取り組んでいます。

1998年には情報収集や管理を担う「生物多様性センター」を開設し、希少な動植物の保護に乗り出しました。

また2003年には、生物多様性への影響が懸念される遺伝子組み換え生物等の輸出入を規制する「カルタヘナ議定書」を採択しています。

参考:
生物多様性条約(生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD))|外務省

カルタヘナ議定書(生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書)(Cartagena Protocol on Biosafety)|外務省

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日本の環境問題対策は遅れている?

アジアの中では早い時期に経済発展を成し遂げた日本は、環境破壊の恐ろしさもよく知っている国です。しかし、国際的な基準に照らすと、日本は遅れをとっているようです。

なぜ日本の環境問題対策は遅れているのでしょうか。実際の日本人の意識も合わせて見ていきましょう。

さまざまなランキングで順位は下位に

世界中で環境問題への関心が高まる中、さまざまなシンクタンクが各国の環境問題への取り組み具合を、ランキング形式で公表しています。

その中で日本は、多くのランキングで下位となっており、諸外国からは環境問題への意識が低い国とみなされているのです。特に「温室効果ガスの排出量削減」については、日本が掲げる目標は不十分で、実現の見込みも薄いとの指摘が目立ちます。

また「マイクロプラスチックごみ」問題に関する調査でも、日本企業や日本人の意識の低さが露呈されました。公害対策はできていても、地球規模で取り組むべき温暖化やプラスチックごみ問題においては、まだまだ遅れているのが現状です。

個人の行動には前向きな変化も

一方で日本人それぞれの意識は、環境問題に対して前向きに変化しつつあります。

特に、新型コロナウイルス感染症の流行で在宅時間が増えたことで、食品ロスや電力消費の増加などが気になり、対策を講じる人が増えています。

SDGsに関するアンケート調査では、若い世代で環境問題への関心が高いことも分かっています。SNSやネットニュースに慣れ親しんだ世代ほど、世界が発信する環境問題の情報に触れる機会が多く、「他人事ではない」との意識が高まっていると考えられます。

参考:日本人の環境危機意識調査|環境危機時計®|公益財団法人 旭硝子財団

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環境問題に対して私たちが今からできること

子どもを育てる世代にとっても、地球環境の保全は切実な問題です。子どもが大人になるまでやそれ以降の環境を守るために、各家庭で今からできることを紹介します。

電気の使用量や二酸化炭素の排出量を減らす

日本が排出する二酸化炭素のうち、15~16%が家庭で使用する電気製品や自動車、暖房によるものです。日本では発電に多くの化石燃料を使っているため、節電を心掛ければ、二酸化炭素排出量を大きく減らせます。

手軽に節電効果が見込める対策は以下の通りです。

・こまめな消灯
・照明をLEDに交換
・エアコンの設定温度見直し
・遮光カーテンや緑のカーテン導入
・エアコンのフィルター掃除
・洗濯物のまとめ洗い
・炊飯器やポットの保温をやめる

住宅のリフォームや電気製品の買い替えでも、節電効果が期待できます。リフォーム時には、太陽光発電設備や断熱材を導入しましょう。電力消費量の大きい古いエアコンや冷蔵庫を買い替えれば、電気代の軽減にもつながります。

自動車のガソリンやストーブの灯油も、できる限り節約を心掛けましょう。自動車を買い替える場合は、エコカーを検討するのも有効です。

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不要な買い物やごみを減らす

便利で豊かな生活の裏には、多くの無駄が存在します。私たちが欲しい物をいつでも入手できるのは、企業が余分に生産したり、燃料や梱包資材をふんだんに使って輸送したりしているからです。

売れ残った商品や梱包資材はごみとなり、輸送に使う燃料は温室効果ガスを排出します。ごみ削減や輸送の無駄をなくすのも、消費者の務めといえるでしょう。

ごみ問題の解決策としては、以下の取り組みが推奨されています。

・Reduce:量を減らす
・Recycle:再利用する
・Reuse:繰り返し使う
・Refuse:不要なものをもらわない
・Repair:修理して使う

例えば、洋服を買うときにペットボトルを再利用した繊維製品を選び、持参したエコバッグで持ち帰ればRecycleとRefuseを同時に達成できます。

壊れた家具や家電を修理すれば、粗大ごみを減らせます。輸送コストがかかる粗大ごみを減らすことは、温室効果ガスの削減にもつながるでしょう。

水筒や箸の持参、デジタル機器を使った紙の削減など、できることは他にもたくさんあります。

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食べ物を残さない

フードロスも、温暖化やごみ問題と同じくらい重要視されている環境問題です。食べ残しは単にごみの量を増やすだけでなく、食品に含まれる油が流出し、水質汚染を引き起こす可能性も指摘されています。

また、食品は水分を多く含むため、運搬や焼却に多くのエネルギーを消費します。フードロスを減らすことは、温室効果ガスの削減にもつながるのです。

食べ物を残さないためには、以下の対策が有効です。

・計画的な買い物
・外食時の適量注文
・食べ残したときは持ち帰る

食べ残しを減らす行為は、子どもの食育にも役立ちます。いずれの対策も難しいことではないので、積極的に取り組んでみましょう。

ひとりひとりの意識を変えることが大切

環境破壊は年々深刻化し、地球規模での対策が急務です。日本政府も各国と連携して環境問題の解決に取り組んでいますが、諸外国と比較すると対策が遅れていると見なされています。国民ひとりひとりの意識が変わらなければ、根本的な解決は難しいでしょう。

節電はもちろん、ごみや食べ残しを減らすことなど、家庭でも今すぐに取り組めることはたくさんあります。美しい地球を子どもたちに残すためにも、できることはすぐにでも実行する姿勢が求められているのです。

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