【親子で学ぶSDGs】vol.7いのちの循環を体感できるサステナブル ファーム&パーク「クルックフィールズ」

 

SDGsとは、Sustainable(サスティナブル)・Development(デベロップメント)・Goals(ゴールズ)の略で、「持続可能な開発目標」という意味。地球の暮らしを守るため、2030年までに解決したい17の課題目標が2015年に定められました。「親子で学ぶSDGs」では、今、全世界が取り組んでいる持続可能な循環型社会のための「新しい社会と暮らし」の実践例を紹介していきます。ナビゲーターは、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生こと明石修准教授。今回は、2019年の秋に千葉県木更津市にオープンした、音楽家の小林武史さんがプロデュースする「クルックフィールズ」を訪ねました。

いのちの循環を体感できるサステナブルファーム&パーク「クルックフィールズ」

広さ30ha(約東京ドーム6個分)という敷地に、オーガニックファーム、養鶏場、酪農場、レストラン、カフェ、シフォンケーキショップ、広場、ソーラーファーム、アート作品などがあるクルックフィールズ。音楽フェスなどを通して環境問題に取り組んできた音楽家の小林武史さんがプロデュースし、多方面から注目を集めています。農と食とアートが自然の中で調和するサステナブルファーム&パークとは、どんな場所で何ができるのでしょうか?

——クルックフィールズのコンセプトや姿勢、大切にしていることはどんなことですか?

クルックフィールズ(以下、KF)私たちのミッションのひとつに「人間も自然の一部であることの真の価値をさまざまな魅力に変え、多くの人々に選択してもらうこと」という項目があります。特に都市でのライフスタイルの変化が望まれている現在、主に食の循環を通じてこの価値を魅力的な商品やサービスとして提案、提供することで、多くの人々に選んでもらうことができると考えています。

——現在進行している取り組みを教えてください。

KF 農業を中心とした一次産業を営み、太陽光から始まる食の循環(農業→チーズなど食加工品→レストラン)を体感してもらうことで、人間が自然の一部であることを学び、楽しんでいただけるようにしています。また、場内で使用するエネルギーや水、そして廃棄物の処理など、循環型の仕組みを取り入れ体感していただけるようにしています。

ヨーロッパで多く飼育されているブラウンスイスが3頭、水牛が30頭、山羊が16頭。酪農場でのびのびと育った動物たちのミルクから作ったチーズやソフトクリームは美味! ブラウンスイス担当のスタッフとオサム先生。(酪農場にはイベント時しか入場できません)

 

——どのような循環システムなのですか?

KF「バイオジオフィルター」を取り入れています。これは、微生物や植物など自然の力を活用した水質浄化システムです。ダイニングなどのお店で出た排水は地下の浄化槽を通り、バイオジオフィルターに排出されます。バイオジオフィルターでは、微生物と植物の力で過剰な養分を吸収・分解し、小川や池(ビオトープ)へと水を流します。水路には栄養吸収力の高いヤナギや、人も食べることができるクレソンや空芯菜を植えています。今ではビオトープには、カエルやゲンゴロウ、ヤゴなど、いろいろな生き物が集まるようになりました。

バイオジオフィルター(自然の力を使った水質浄化システム)につながっているビオトープ。小川にはメダカやドジョウ、ゲンゴロウなど、様々な生き物が生息しており、
自然と人とのコラボレーションが生んだ豊かな生態系がここに存在します。

 

——そのような循環の仕組みをどのように体感できるのですか?

KF 畑での収穫体験や農場の野菜を使ったピザ作りなどの体験プログラムをはじめ、スタッフと一緒に場内を巡り、私たちの取り組みを知っていただくツアーをご用意しています。5月中旬~内容を一部リニューアルして「クルックフィールズ・アドベンチャー」を再開予定!場内を巡りながらヒントを見つけて16問のクイズに答えていただくという企画で、親子で一緒に楽しんでいただけます。

親子で楽しめる「クルックフィールズ・アドベンチャー」

 

クルックフィールズをまわりながら、「チェックポイント」で食べ物のヒミツを発見したり、自然を観察したりしながら、クイズに答えるプログラム(無料)。遊びながら、循環の仕組みが学べます。

 

——今後、どのような展開をしていく予定ですか?

KF「オーガニックシティ宣言」を行っている木更津市や地域団体と連動して「持続可能な地域や未来づくりの先進的なエリア」になるための役割を果たし、この地域で暮らしたり働いたりすることの喜びや誇りを共に育てていきたいと考えています。また、食の可能性を深めていくことだけでなく、滞在することで自然や循環のことを学んだり体感できる施設やプログラムを整備する予定です。より多様な人々が集い、サステナビリティを感じることのできる場になるよう、ブラッシュアップしていきたいと思っています。

現在、敷地内には6棟のタイニーハウスと1棟のセンターハウス(共用施設)があり、宿泊が可能(2021年4月現在、6月までのご予約を受付中!
木・金・土・日・祝前日、宿泊可能です。完全予約制。1棟1棟 16,000円~ 食事・リネン代は別途頂戴いたします。)。焚き火など、キャンプとはまた一味違った宿泊体験ができます。

採れたて野菜や搾りたてミルクなどおいしい食育体験!

クルックフィールズでの外せないお楽しみのひとつが「食べること」。ダイニング、ベーカリー、シャルキュトリー(ソーセージなどの加工品やチーズの販売)、シフォンケーキのショップ、ミルクスタンドなど、「EAT」ゾーンはどこも魅力的。

スタッフが大切に育てている牛のミルクで作ったソフトクリーム、ストレスの少ない環境で育った鶏の新鮮な卵で作ったシフォンケーキ、農園で採れた野菜をたっぷり取り入れたプレートなど、どれも“ ここでしか食べられない” おいしさです。自分の食べているものがどこからきているのか、その過程を知って食べるという体験は、机の上で習う食育以上の気づきと学びを与えてくれることでしょう。

ブラウンスイス牛のミルクと養鶏場で生まれた平飼い卵の持ち味を、最大限に引き出したふわっふわのシフォンケーキ( ホール1944円 税込)。

ミルクスタンドで売っている「ソフトクリーム」420円(税込)は、ブラウンスイス牛の新鮮なミルクを使用。後味がすっきりとした優しい味わい。

 

ダイニングでは「旬の農場ランチプレート」1760円(税込)~が人気。野菜やハーブ、焼きたてパンなど、クルックフィールズの魅力がたっぷり詰まったボリューム満点のランチプレートです。

写真提供/クルックフィールズ

「クルックフィールズ」で、いのちの循環を感じる遊びや学びを!

クルックフィールズ( 千葉県木更津市)
すべてはつながり、循環している。そんなことを遊びながら体験できる、新しいサステナブルファーム&パークフィールド内にある草間彌生などのアート作品も印象的。詳細はホームページを。https://kurkkufields.jp

記事監修

明石修|武蔵野大学環境システム学科准教授
主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。

「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

記事監修

雑誌『小学一年生』|1925年の創刊の国民的児童学習誌

1925年の創刊以来、豊かな世の中の実現を目指し、子どもの健やかな成長をサポートしてきた児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターに関わっていただき、子ども達各々が自身の無限の可能性に気づき、各々の才能を伸ばすきっかけとなる誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。


 

『小学一年生』2020年12月号 別冊HugKum 撮影/本間 寛 構成・文/神﨑典子

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 15 陸の豊かさも守ろう

SDGsとは?

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