『レモンをお金にかえる法』で子どもに楽しく経済を説明!【フィナンシャルプランナー監修!絵本で学ぶお金の話】

ファイナンシャルプランナーが子育て中のパパママに必須な「お金」の話を、絵本を例にとりながらわかりやすく解説していくリレー連載。第9回は『レモンをお金にかえる法』という絵本です。

『レモンをお金にかえる法』

今回紹介する「レモンをお金にかえる法」は1980年代初頭にアメリカで出版された本です。残念ながら私とこの本との出会いは最近でした。子どものときにこういった本に出会っていたら、と思わずにはいられないほど、絵やストーリーを通して生きた経済の仕組みがとてもよくわかる、すばらしい絵本です。

文/ルイズ・アームストロング 絵/ビル・バッソ 訳/佐和隆光 河出書房新社刊

イラストはコミカルで可愛いけど、小学校高学年向けの難易度

この本は、主人公が家にあったレモンからレモネードジュースを作り、お店を建設して売るという例を用いて、原料の仕入れから価格設定、従業員を雇う経営の一連の流れを優しく説明しています。さらに労働紛争(ストライキ、ボイコット)や、 M & A ( 企業合併・吸収 ) にも触れています。経済学をやさしく、おもしろく、わかりやすく解説しながらストーリーが展開していきます。

そんな分かりやすい絵本ですが、大人が使う専門用語があふれています。高校の入試問題の出典になったこともあるそうです。

 

経済は、大きくなったらわかればよいもの?

この絵本の難易度は小学校高学年相当ですが、小学校低学年のうちからこの本と出会うのも非常に良いことだと考えます。理由は、従業員になるには年齢制限がありますが、社長になるのに年齢制限はないからです。

※労働基準法「使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。」

こどものころ、社長は大人しかなれないと勝手に決めつけていました。そして経済は、「大きくなったらわかればよい」難しい領域とされていたような気がします。最近では、こども向けの新聞や、ニュース解説番組が沢山あります。経済を知りたければ小さくても構わないと思います。社長になりたければ是非挑戦してほしいと思います。大人はこどもの好奇心に壁をたてるのではなく、追い風になってあげたいですね。

値段は高いのと、安いのはどちらがよいの?

「1番の社長はだれ?」ゲーム

キッズ・マネー・ステーションの講座で、「一番の社長はだれ?」というゲームをすることがあります。ある日、安くても、高くても、材料が手に入るのであれば、どっちだってよいのではないかという考えの子どもがいました。しっかり自分の頭で考えていて素晴らしいですね。でも、世の中の仕組みって損得が発生します。保護者の方と講師で一生懸命に価格の高低や優劣に関して解説したのですが、その子どもはなかなか腑に落ちないようでした。

このように私たち大人にとって当たり前の「材料を安く買って製品を高く売るともうかること」を、まだ理解する前の子どももいます。私たちは、資本主義のなかで生きていますので、どうなると損をして、どうすればもうかるのかなど、社会の仕組みを子どもたちに伝えなければいけません。

子どもに、資本主義の社会の仕組みを教えるタイミングは?

消費者として、モノの値段が変化することを知る。同じモノなのに、高ければ損をした気持ちになり、安ければ得をした気持ちになる。それがわかれば、この絵本に出会う適齢期です。

「レモンをお金にかえる法」は、読者である「きみ」も、物語のなかで経営者になって、当事者になるからこそ社会の仕組みをやさしく学べるようになっています。企業の経営者になった主人公がどうやって値段を決めるのか、どうして値段を変えるのか、価格が安いことは良いことなのか、消費者と逆の立場だとどうなるかを絵本のストーリーが考えさせてくれます。

 

レモネードスタンドをこどもがやってみるとよいのか?

アメリカ人の友人にヒアリングしたところ、私と同世代の彼女がこどものころは、おこづかい稼ぎや寄付金集めに絵本のようにレモネードスタンドを子どもたちが運営するシーンが日常生活で見られたそうです。しかし、自治体の条例等で制限がかかり、私が渡米した20年前は、こどもが運営するレモネードスタンドは見かけませんでした。現在でも一部の地域を除き、なかなか見られなくなったそうです。

アメリカでも見かけなくなっているのですから、日本でご近所様相手にレモネードスタンドを出しても、あまり売れ無さそうです。日本版レモネードスタンドとして想定できる例は、「フリーマーケットで自分の使わなくなったおもちゃを売る」「イベントで制作物を売る」などがあげられます。

大事なのは、「こども社長」として経営する(商売をする)経験をするということです。

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我が家のこども社長の体験談

体験①レモネードスタンドをやってみた

この絵本を小学2年生の息子と読んだ後、冷蔵庫にある材料でレモネードを作成してみました。そして、(消費者として)レモネード一杯いくらであれば買うのか息子に聞くと、「15円」ということでした。彼の懐事情や金銭感覚がわかりますね。

美味しくレモネードを頂いてから、実際に(経営者として)材料費がいくらかかったか仮想の収支管理をしてみると、意外にコストがかかり原材料費は90円位と見積もることができ、5円では利益がでないどころか大赤字になることがわかりました。「1100円」で売りたかたったという気持ちになります。このような、販売価格の設定ミスは良い失敗です。

我が家のこども社長の例、「僕の作った世界に1点しかないオリジナル商品」は1つ4000円で販売していた。

体験②自宅リビングで制作物販売をやってみた

夏休み、我が家では息子の露天商がリビングに出現しました。彼自慢の制作物(プラパンや、紙粘土細工)を高額商品として夫や私に売り、おこづかいを稼ごうという明確な目標のもと運営されていました。「お金が欲しい」という経営理念でマネジメントされていますので、いくら客役の私が交渉しても「僕の作った世界に1点しか4いオリジナル商品」という理由で、妥当な価格までなかなか下げてくれませんでした。

いくらなんでも子どもの制作物に数千円も払えませんので、「高すぎる」以外の購入できない理由も伝えました。たとえば、床に商品を置くのではなく、もっと立派な店構えや工夫されたレイアウトなら、購入を検討するかもしれないといったことです。高額な商品を購入したことがない彼には、商品のレイアウトの重要性や高級感という雰囲気がよくわからなかったようです。大人になる過程で息子に「高額なものが売られている現場」を見学させないといけないことがわかりました。

「モノに値段をつける」のは難しい

今回は、露天商と客の双方合意とならず交渉決裂となり、店長はいったん休業中です。二つの出来事で我が家のこども社長は、売る側の責任者として「モノに値段をつける」のが結構難しいことがわかったようです。

※紙粘土(材料費108円)の制作物は、購入できそうな価格ですが、「こども社長」は休業していました。

ミクロ経済は身近なもの、マクロ経済は国など広い視点

経済の見方は、大きく分けてミクロ経済とマクロ経済があります。視野が微細なものがミクロ、巨視的なものがマクロです。「レモンをお金にかえる法」は、消費者や一企業というミクロ経済の視点で描かれています。「続編 レモンをお金にかえる法」では、インフレや不況、景気対策などマクロ経済に関する内容が描かれています。少し難しい経済の言葉も、絵本を読んだあとに、子供と実践すると実感がわくのではないでしょうか。

 

【執筆者プロフィール】

氏名 たちざき よしこ

肩書 キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー

紹介 数年前まで資産運用会社でファンドマネージャーのアシスタントを10年経験。現在は、小学校低学年の子どもを育てながら、社労士事務所で勤務。親子向け金銭教育を中心に活動している。

 

~キッズ・マネー・ステーションとは~

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2018年までに1100件以上の講座実績を持つ。

 

http://www.1kinsenkyouiku.com/

 

 

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