いいこと尽くしの「読書メモ」ってナニ?【本好きキッズの本棚、 見せて 見せて!第12回】

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すべてをそっくりまねなくても、いいとこ取りで、本好きの芽は育ちます。今回は、動物好き、漫画も大好き!な大阪市在住・公立小学校2年の男の子のお宅を訪問。海外事情も交えながらの報告、ノンフィクションライター・須藤みかさんの、好評連載第12回です。

イラスト/カラスヤマ ミライ

ドイツでは超メジャー… いわば「100均」絵本で読み聞かせは始まる…

10センチ☓10センチの小さな絵本。ヨーロッパでは広く普及しているというピクシー絵本。
マキコさんのお宅にうかがうと……どっさりあった、その数、約170冊! なぜ、そんなにピクシー絵本?

町中のあちこちで売っていた手のひらサイズのピクシー絵本

 

マキコさんは、夫の転勤で1年半前までドイツにいた。息子の小学2年のハルト君もドイツで生まれた。読み聞かせを始めたのは、1才の頃。

「本屋さんだけでなく、スーパーなどにもピクシー絵本は売っているので、ハルトと出かけると1冊買うのが習慣になっていました。ピクシー専用の容器にごそっと入っていて、そこから選ぶのが楽しみだったようです。1冊1ユーロ(約119円*当時)なので買いやすいし、軽いので家でも外出先でもどこでも読めました」

図書館では、ボードゲームの貸し出しも

地元の図書館にもよく通った。ドイツの図書館は自治体によって異なるが、年間登録料が必要なところが多い。マキコさんの住んでいた街では、8才までの子どもなら年会費は5ユーロ(約595円)。1ヶ月間、15点借りることができる。

本やDVDのほか、ボードゲームもある。さすが、ボードゲームが盛んなドイツらしい。児童書や絵本のキャラクターを題材にしたものも少なくないそう。

「ジム・ボタン」シリーズのボードゲーム。

 

プロイスラー作『小さいおばけ』のボードゲーム。今も時々、家族で楽しむ。

 

図書館には月に2、3回、通った。借りるのは毎回、3〜5冊。大学でドイツ語、ドイツの児童文学を学んだというマキコさん。ミヒャエル・エンデやプロイスラーの児童書が懐かしくて、自分用にも借りていたとか。

子どもの読書記録…成長を思い起こすことができる。

借りていた本を記録していたメモがあるというので見せてもらった。びっしりと小さな文字で本のタイトルが書かれていた。

上がドイツ在住時、地域の図書館で借りた本の記録。下は日本人学校図書館で借りたもの。

 

「記録を見て、あぁ、こんな本も読んだ、あんな本も読んだなと思い出しました」

そう話すマキコさんの笑顔は、幸せそう。これまで取材を続けるなかで、同じような笑みは何度も見てきた。

面倒ではあるのだが、こうした記録はつけておくといいなと思う。書くのが億劫なら、公共図書館なら貸し出しシートをもらえるので、それをノートに貼ったり、クリップで留めて保管するだけもいい。

子どもの読書の記録は、成長の記録でもある。そして、書名を見れば、その時の子どもの表情や言葉がよみがえってきて、お母さんたちは(お父さんたちも)思わず笑みがこぼれる。子どもと一緒に見れば、本の話に花が咲く。思春期にさしかかって、親と話したがらなくなった時にも、絵本が話の糸口になることも。

ハルト君は、ドイツ人の子どもたちが通う地元の幼稚園に行った。フォアシューレ(小学校入学前のプレスクール)も現地校に進んだが、土曜日だけは日本人学校内にある日本語補習校へ。補習校へ行くようになって、日本人学校図書館も利用できるようになった。それまでも日本語の絵本を読み聞かせてきたが、ぐっと選択肢が広がったという。

記録からわかる大好きな本、ヘビロテの読み聞かせ本

「こうやって見ると、大好きな本は何度も借りていますね。昨日、ハルトに好きな絵本は?と聞いてみたら、『バムとケロのそらのたび』『ぐるんぱのようちえん』『からすのパンやさん』の3冊でした。私が、ハルトから読んでと言われたベスト3は、『ねないこだれだ』『しろくまちゃんのほっとけーき』『ぐりとぐら』でした」

そして、現在。ハルト君の本棚は日本語の本が多いものの、ドイツ語の本も並んでいた。

ハルト君の本棚。ドイツ語の本も並ぶ。

 

ドイツでも読み聞かせは盛ん。フォアシューレでは先生がよく本を読んでくれたそう。年に1回、ボランティアのお母さんたちが開くフォアレーゼアーベントというおはなし会は、教室にテントを張って行う。子どもたちがクッションなどを抱えたりしてリラックスした雰囲気。左の象が描かれた表紙の本は、そのおはなし会で知った本。

 

「ミヒャエル・エンデの『ジム・ボタン』は日本では2冊しか翻訳されていませんが、続きがまだまだあるんですよ。ぜひ翻訳出版してほしいです。ハルトも続きが読みたいなぁと言うので、ドイツ語で読んであげようかと言うんですけど、あまり気が進まないみたいです。でも、ドナルド・ダックのドイツ語版の漫画はよく読んでいますね。絵を追いながら、お話を想像してゲラゲラ笑っています」

漫画はエライ! 目下のマイブームは学習漫画

日本語の本も、今ハマっているのは学習漫画。

「少し前まで学校の図書室で借りてくるのは、『かいけつゾロリ』ばっかりでしたね。無駄なギャグばっかり覚えちゃって(苦笑)。今は『ドラえもんの科学ワールドシリーズ』をよく借りてきます。
図書館で借りたのは、写真・上の4冊。『宇宙の不思議』『昆虫の不思議』『エネルギーの不思議』『生物の源・海の不思議』。
購入したのは、写真下の3冊。『光と音の不思議』『ひみつ道具Q&A』『恐竜と失われた動物たち』」

この中でハルト君が一番おもしろかったと言っているのは、『昆虫の不思議』。

 

「『どっちが強い!?シリーズ』もお気に入りですね」

今、はまっている『どっちが強い!?』シリーズ。

 

『どっちが強い!?は、生息地の異なる動物が直接対決するとどうなるかを描いた科学漫画だ。
「プチクスクスって知ってる?」と、本で得た情報をマキコさんに披露することもたびたびとか。というのも、ハルト君は、大の動物好き。ドイツ在住時は週1回の動物園通い。今も、月に1回は動物園や水族館に出かける。

勉強机には、今借りている本が。教科書に出てきたアーノルド・ローベルの本も好きになった。

動物好きから派生して読む、絵本、漫画、物語

なるほど!
小さい頃好きだった絵本も、好きな漫画も動物が出てくる。地域図書館で借りる本もやっぱり、動物ものが多いのだった。

*  *  *

後日談。

ハルト君にぴったりかもと思い、マキコさんに『ネコのタクシー』をおすすめした。すぐに買って読み聞かせを始めたそうで、「次の章も読んで!とすごい食いつきでした」とマキコさんからメールが。

ハルト君、『ネコのタクシー』には続きもあるし、動物が出てくる楽しい本は他にもいっぱいあるよ!

ドイツの友達から届いたバースデーカードが勉強机の前に貼られていた。

ハルトくんが夢中の本はコチラ


『小さいおばけ』作/オトフリート・プロイスラー 絵/フランツ・ヨーゼフ・トリップ 訳/はたさわゆうこ 徳間書店


『ジム・ボタンの機関車大旅行』作/ミヒャエル・エンデ 訳/上田 真而子 岩波少年文庫


『ジム・ボタンと13人の海賊』作/ミヒャエル・エンデ 訳/上田 真而子 岩波少年文庫


ジム・ボタンがやってきた』原作/ミヒャエル・エンデ 再話/ベアーテ・デリング 絵/マティアス・ヴェーバー 訳/酒寄進一 長崎出版


『ジム・ボタンのたびだち』原作/ミヒャエル・エンデ 再話/ベアーテ・デリング 絵/マティアス・ヴェーバー 訳/酒寄進一 長崎出版

◆お気に入りの3冊+読み聞かせ回数の多かった本


『バムとケロのそらのたび』作/島田ゆか 文溪堂


『ぐるんぱのようちえん』作/西内 ミナミ 絵/堀内 誠一 福音館書店


『からすのパンやさん』絵と文/かこさとし 偕成社


『ねないこ  だれだ』作・絵/せなけいこ 福音館書店


『しろくまちゃんのほっとけーき』絵/わかやまけん 文/森比左志、わだよしおみ こぐま社


『ぐりとぐら』作/なかがわりえこ 絵/やまわきゆりこ 福音館書店

◆学習漫画


『かいけつゾロリ』作・絵/原ゆたか ポプラ社


『ドラえもん科学ワールド』シリーズ まんが/藤子・F・不二雄 監修/藤子プロ 編/小学館ドラえもんルーム 小学館


『どっちが強い!?』シリーズ  KADOKAWA

◆動物主役の大好きな本


『ふたりはいつも』作/アーノルド・ローベル 訳/三木卓 文化出版局


『ふたりはきょうも』作/アーノルド・ローベル 訳/三木卓 文化出版局


『おはなし ばんざい』作/アーノルド・ローベル 訳/三木卓 文化出版局


『ネコのタクシー』作/南部和也 絵/さとうあや 福音館書店

取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。

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