読み聞かせに“きょうだい格差”があっても大丈夫? 【本好きキッズの本棚、見せて見せて!第15回】

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きょうだい、なるべく平等に読み聞かせをしてあげたい、と思うは親心。でも、なかなかうまくいかないというのも事実、「読み聞かせ あるある」ですね。
今回はノンフィクションライター・須藤みかさんが、愛知県の公立小中学校に通う3人きょうだいのお宅へ。読み聞かせ格差が払拭され、それぞれ本好きの子になった…その読み聞かせ体験談を聞いてきました。

イラスト/烏山ミライ

上にあわせたら下の子は読み聞かせ不足。ゲーム好きはそのせいかも?

上の子にあわせるのか、下の子にあわせるのか――。
きょうだいができると、楽しいはずの絵本の読み聞かせが悩みの種になることも。下の子のお世話で読み聞かせの時間をとれなくなったり、本選びでケンカが始まったり…。

 

アキコさんは、少し年の離れた2男1女を育てている。上から中3のシュウト君、中1のカホちゃん、小2のカンちゃんの3人きょうだいだ。上の2人には小学2年くらいまでずっと読み聞かせをしていたが、カンちゃんには同じようにはしてあげられなかった…。それがアキコさんの心残りとなっている。

そう思うのは、アキコさん自身が母に読み聞かせをしてもらっていたから。

「仕事から帰ってきて疲れていたはずですけど、寝る前にいつも、絵本を読んでくれました。だから、子育てには絵本が欠かせません。食べるものが欠かせないのと同じような感覚があるんです」

子育てに絵本は欠かせない

 

なるほど、子ども部屋には絵本がいっぱい。児童書も含めて約1,500冊。時折、絵本講師として講演することもある。

「年が離れているので、寝る時間が違います。上の子たちのあれこれ世話が終わって、さぁ、次男に絵本を読んであげようと思うと、寝落ちしていることが多くて…。起こしてまで読む必要はないので、読んであげられないことが多かったんです。だからか、ゲームが大好きな子になってしまいました」と、肩を落とす。

長男シュウト君は、ハンモックでの読書がお気に入り。

兄の影響で小2の弟はゲーム好きに。本は1人では読まない主義なの?

家にゲームがやってきたのは、3年前。シュウト君の希望に応えた。シュウト君がゲームを始めたら、カンちゃんも夢中になった。

「シュウトは受験生ですが、今もゲームはやっています。バリバリのゲーマーです。でもゲームと同じくらい、コミックも本も大好きなので、たぶん息抜きに楽しんでいるのでしょう。でも弟のほうは、とにかくゲームばかり。『学校の読書の時間は、本を読んでいるよ』と言いますが、家では自分ひとりでは読まないんですよ」

カンちゃんは時代劇調絵本が好き!?

 

小1から年中さんの本でスタート。読み聞かせに手遅れはない!

今、カンちゃんへの読み聞かせは?

「上の子たちが大きくなって時間ができたので、1年半くらい前から毎日読んであげられるようになりました。小学校2年生ですが上の子たちが年中さんの時に読み聞かせかしていた本を今、読んでいる感じですね」

そんなことを話していたら、「ただいま〜」の声が。16時半。カンちゃんが学校から帰ってきた。すぐに、サッカーの練習に行くというカンちゃんに急いで聞いた。

昨日読んだのは、『おじいちゃんのごくらくごくらく』。好きな本は、『かぶと三十郎』『ねぎぼうずのあさたろう』『くものすおやぶんとりものちょう』…。どれも時代劇調の正義の味方が主人公だ。主人公が「たたかうところがすき」なんだそう。

カンちゃんと入れ替わるように帰宅したのは、シュウト君。

小学2年生で『ハリー・ポッター』を読了した。前述のとおり、受験勉強しつつも、本も、マンガも読む。
理系だそうで、読む科学事典と言われる『サイエンスペディア1000が愛読書だが、『ネシャン・サーガ』『アバラット』などの冒険ファンタジーは今も好きだという。

科学事典も冒険ファンタジーも好きなシュウト君

 

『ネシャン・サーガ』は、実は、アキコさんが知人から勧められたもの。

「私はまだ読めていませんが、シュウトはあっという間に読んでしまいました。『サイエンスペディア1000』のほかには『マスペディア1000 読む数学事典』も読んでましたね。しばらく前は建築の本にもハマっていました。私には、さっぱり分かりませんが…」とアキコさんは苦笑する。

長女はマンガ好きに。だからか読む本もビジュアルが選本の基準となる

じゃあ、カホちゃんは?

「小さいころは、『ロージーのおさんぽ』『はじめてのおつかい』など、絵を見て物語をイメージできるものが多かったように思います。『ルルとララ』のシリーズも好きでしたが、その後はもっぱらマンガコースでした…。絵を描くのが好きで、今もよく描いています」

カホちゃん作「ペロペロキャンディー」。

 

カホちゃんはサッカー女子でもある。小4の頃からクラブチームに所属し、中学では男子と一緒にサッカー部で汗を流す。部活もして、絵も描く。好きなことをめいっぱい楽しんでいるようだ。

そんなカホちゃんも帰ってきた。アキコさんが本の話に水を向ける。

「ねぇ、あの、なんていう映画だったっけ? 本を読んだって言ってたよね。女子高生が身体が光る病気になって、男の子が女の子の願いをかなえる…」
『君は月夜に光り輝く』ね」
「なんで読んだんだっけ?」
「マンガを買いに行ったら、表紙が見えて。かわいい絵だなと思ったから買ったんだよ」

カホちゃん、本を読んでるじゃないですか。

「ライトノベル的なのは、友だちと貸し借りしたりして読んでいるみたいです。…でも、うちにある本はあんまり読んでないんですよね」。

アキコさんが書棚の児童書や単行本を指しながらそう言うと、カホちゃんがすかさず書棚から1冊の本を取り出した。

「ロアルド・ダールはおもしろい!」(カホちゃん)

 

「ロアルド・ダールとか好きだよ。ほら、『魔女がいっぱい』とか。おもしろかったから、ロアルド・ダールの『マチルダ(はちいさな大天才)』『(ガラスの)大エレベーター』は図書館で借りて読んだよ」

電車の時間があって、ここで取材は終了。

ロアルド・ダールの本の挿絵はユーモアがあってシャレたものだ。『君は月夜に光輝く』の時と同じように、表紙や背表紙の絵に惹かれて手にとったのかもしれない。シュウト君とは違う選書の基準を持っている。

読み聞かせで、母の「大切にしたいこと」が伝わっていた

アキコさんが最後に、シュウト君の夏休みの家庭科の宿題を見せてくれた。乳幼児について調べるというレポートでシュウト君は「自分が昔、好きだった絵本」を選び、振り返っていた。

シュウト君は家庭科の宿題で絵本についてまとめた

 

「1歳ぐらいのころ、ほぼ毎日読んでもらって笑っていた」という『もこもこもこ』や、「盗んだお金を使って孤児たちを集めて村をつくったことに、子どもながらほっこりした」と紹介した『すてきな三にんぐみ』など6冊だ。

「大切にしたいことが伝わっていくんだなと思って、すごく嬉しかったです」。アキコさんは目を細めた。

カンちゃんが1人で読まないのもきっと、親子の読み聞かせの時間を楽しみにしているからだろう。小学生だからと言って、年中さん向けの絵本を読んじゃいけないという道理はない。その本を楽しめる時が、その子の“読み時”だ。カンちゃんにもアキコさんの「大切にしたいこと」がきっと伝わっている。

市の広報紙に掲載されたカンちゃんの絵「にじのおはなみ」

▼3きょうだいが夢中だった本はこちら

■カンちゃん(小2)


『おじいちゃんのごくらくごくらく』作/西本鶏介 絵/長谷川 義史 鈴木出版

 


『かぶと三十郎 きみのために生きるの巻』作・絵/宮西達也 教育画劇


『ねぎぼうずのあさたろう』作/飯野和好 福音館書店


『くものすおやぶんとりものちょう』作/秋山あゆ子 福音館書店

■カホちゃん


『ロージーのおさんぽ』さく/パット・ハッチンス やく/わたなべしげお 偕成社


『はじめてのおつかい』さく/筒井頼子 え/林明子 福音館書店


『ルルとララ』作・絵/あんびるやすこ 岩崎書店


『君は月夜に光り輝く』著/佐野徹夜 KADOKAWA


『魔女がいっぱい』作/ロアルド・ダール 絵/クェンティン・ブレイク 訳/清水達也鶴見敏 評論社


『マチルダは小さな大天才』作/ロアルド・ダール 絵/クェンティン・ブレイク 訳/宮下嶺夫 評論社


『ガラスの大エレベーター』作/ロアルド・ダール 絵/クェンティン・ブレイク 訳/柳瀬尚紀 評論社

■シュウト君


『ハリー・ポッターと賢者の石』作/J.K.ローリング 訳/松岡佑子 静山社


『サイエンスペディア1000』著/ポール・パーソンズ 訳/古谷美央 ディスカヴァー・トゥエンティワン


『ネシャン・サーガ』作/ラルフ・イーザウ 訳/酒寄進一 あすなろ書房


『アバラット』著/クライヴ・バーカー 訳/池央耿 ソニー・マガジンズ


『マスペディア1000』著/リチャード・エルウィス 訳/宮本寿代 ディスカヴァー・トゥエンティワン


『もこもこもこ』作/谷川俊太郎 絵/元永定正 文研出版


『すてきな三にんぐみ』さく/トミー・アンゲラー やく/いまえよしとも 偕成社


『バムとケロのおかいもの』作・絵/島田ゆか 文溪堂


『旅の絵本』著/安野光雅 福音館書店


11ぴきのねこ ふくろのなか』著/馬場のぼる こぐま社


『シナの五にんきょうだい』ぶん/クレール・H・ビショップ え/クルト・ヴィーゼ やく/かわもとさぶろう 瑞雲舎

 

取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。

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