読み聞かせはいつまで? 児童書を読めるようになるのかしら…? 文字の多い読み物は敬遠されちゃいそう…。
尽きないこんな親の悩みにお応えすべく、今回はこの連載の書き手、ノンフィクションライター・須藤みかさんの体験談を披露してもらいます。
うんうん、参考になりますよ!
プロ野球の開幕中と終盤とで愛読書は変わる?
今回は我が家の本棚について。
うちの男子は、公立小学校に通う5年生。プロ野球観戦とドラマを見るのが大好き。地域のソフトボールチームに所属していることもあって、ドラマを見ながらエア・キャッチボールをするような野球男子だ。だから、プロ野球開幕中は『プロ野球カラー名鑑2019』が座右の書。誤植を見つけてしまうほど読み込んでいる。
シーズン中の朝の日課は、新聞のスポーツ面を読むこと。次にするのは、前日の試合記録をノートにまとめ、自分なりの寸評を書くことだ。この情熱が勉強に向けばさぞかし…と思わないではないが、ぐっとこらえて口にはしない。
ひいきのチームは、オリックス・バファローズ。ここ数年、日本シリーズとは無縁なこともあって、終盤に近づいていくにしたがって、手にする本は読み物に変わっていく。
自宅で10月から12月にかけて読んでいたのは、友だちから借りた『言の葉の庭』『君の名は』と、自分で買った『天気の子』『秒速5センチメートル』。
映画の話で友だちと盛り上がって以来、新海誠監督の本を読むようになった。『君の膵臓を食べたい』『リアル鬼ごっこ』も読んでいたが、これは彼が通う学童保育所の大好きな指導員さんから貸してもらった。
家庭での姿で決めつけない。学校で実は…
家で本を開いていないと、つい読書しない子だと思いがちだが、意外と学校では休み時間などに本を読んでいたりする。うちの男子も、シーズン中はプロ野球の名鑑以外の本を読むことがないと思っていたが、学校図書館の本は常に読んでいた。
今、読んでいるのは、『5分後に意外な結末1』。ショートストーリー集を選んだのは、その前が『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃』という500ページ以上の本だったからのようだ。
その他、2学期中に読んだのは『坂本龍馬は名探偵!! タイムスリップ探偵団と龍馬暗殺のナゾの巻』と『マジック・ツリーハウス』シリーズ3冊、『パスワード 風浜電子探偵団事件ノート』シリーズ5、6冊…。
ひとりで読める!の声に喜んだ…がその結末は?
今でこそ本を読むことが日常になったが、絵本から児童書への移行期に、不安になったことがある。
絵本の読み聞かせはほぼ毎晩、1才前後から続けてきた。
1年生の3学期のある日、「ぼく、もうひとりでよめるから」と、読み聞かせ終了を宣言された。ここまで来たかと喜び、見守って半年。
私が図書館で借りてきた絵本や幼年童話にも手を伸ばすが、学校図書館で借りてくるのは文字がやたらと多い本ばかりだった。背伸びしたい気持ちはわかるが、どう見ても高学年向け。流し読み、飛ばし読みどころか、1、2行読んで終わりじゃないか!
本の選び方が分からない?
絵本から読み物への移行でつまずいている?
本を読む面白さをまだ知らない?
読み聞かせもしてきたし、本棚はいつも手の届くところにある。親が本を読む姿も見せてきた。なのにどうして?
「絵本をあんなに読み聞かせしたのに、本を読まない子になっちゃって」。
友人たちから聞いた言葉がよみがえる。このまま放っておいていい?
絵本ではなく「児童書」を読み聞かせ
根気はいるが。「ゆる読み聞かせ」スタート!
子どもの読書について書かれた本をあれこれ読むと、絵本から児童書への移行期には、どうやら児童書の読み聞かせが有効だという。そういうわけで、もう一度読み聞かせをすることに。
「ひとりでよめる」と言う息子をなだめすかして、児童書を読み聞かせする毎日が始まった。
最初が肝心だから、とにかく楽しい本を選ぼう。
1冊目に選んだのは、『さかさ町』だ。
なにもかもがさかさまの町では、子どもが楽しく働き、大人はあそぶ。学校へ行くのは休みの日だけで、買い物をすると品物といっしょにその値段のお金がもらえる。野球は三振すると、罰として塁に出る…。文句なしのおもしろさで、作戦成功!読み聞かせを楽しみにするようになった。
絵本と違ってその日のうちに読み切ることはできないが、「つづきは明日のお楽しみ」と引っぱる。90余ページの『さかさ町』は5日かけて読んだ。
無理はしないことにして、お互いが読みたいと思わない日は読み聞かせはナシ。私の仕事が忙しい時や出張の時は休んだし、彼が「今日はパス」という日は読まない、というゆるいルールで、5年の1学期まで続けた。
ズボラですべての記録をつけていなかったのが悔やまれるが、最初の9ヶ月間で読んだのは絵本もあわせて39冊。続けるコツは…。
子どもの興味にあわせること。
その時々の彼の関心事にあわせて本を選んだ。スポーツものは、野球、サッカー、卓球…と、ひととおり読んだし、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にハマっていた時は、タイムスリップものを選書した。だんだん長いもの、シリーズものを読むようにしていった。たぶんこれで本のおもしろさを知り、理解力や想像力を育てていったのではないかと思っている。
今まで読んだなかでおもしろかった本を聞いたら、「4年の時に読んだ『ハリー・ポッター』シリーズかな」。ついでにお母さんと一緒に読んだなかではと聞いたら、『コンチキ号漂流記』だった。
次に読みたいのは映像化された小説だそうで、「映像化されている本は面白いはず」というのがその理由。ネットで「実写化、映画化された小説おすすめ92選」などの記事を探してきては、次はこれが読みたい、あれも読みたいと話す。
しかし、となるとミステリーも多い。本は自由に選ぶべきとは思うものの、「残虐なシーンもあるから、まだ早いと思うよ。こっちはどうかな?」と待ったをかけている。
夢中になった本はこちら
『プロ野球カラー名鑑2018』ベースボールマガジン社
『戦国武将 群雄ビジュアル百科』監修/二木謙一 ポプラ社
『小説 言の葉の庭』著/新海誠 角川文庫
『小説 君の名は。』著/新海誠 角川文庫
『小説 天気の子』著/新海誠 角川文庫
『小説 秒速5センチメートル』著/新海誠 角川文庫
『君の膵臓をたべたい』著/住野よる 双葉文庫
『リアル鬼ごっこ』著/山田悠介 幻冬舎文庫
『5分後に意外な結末1 赤い悪夢』編/学研教育出版 学研プラス
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃』著/リック・リオーダン 訳/金原瑞人 ほるぷ出版
『坂本龍馬は名探偵!! タイムスリップ探偵団と龍馬暗殺のナゾの巻』著/楠木誠一郎 イラスト/岩崎美奈子 講談社青い鳥文庫
『マジック・ツリーハウス』シリーズ メアリー・ポープ・オズボーン/著食野 雅子/訳KADOKAWA
『パスワードは、ひ・み・つnew 風浜電子探偵団事件ノート』シリーズ 作/松原秀行 絵/梶山直美 講談社青い鳥文庫
▼就学前に好きだった絵本と読み物
『ダンプえんちょう やっつけた』さく/ふるたたるひ、たばたせいいち 童心社
『パトカーのピーすけ』さく/さがらあつこ え/やぎゅうげんいちろう 福音館書店
『うちにかえったガラゴ』作・絵/島田ゆか 文溪堂
『チーズ』作/戸渡阿見 絵/ゆめのまこ たちばな出版
『ぼく、仮面ライダーになる! オーズ編』さく/のぶみ 講談社
▼幼稚園年中~低学年期
『ペンギン ぺぺコさん だいかつやく』作/西内ミナミ 絵/西巻茅子 鈴木出版
『しょうぼうねこ』作/エスター・アペリル 訳/藤田圭雄 文化出版局
▼母の読み聞かせ児童書
『さかさ町』作/F.エマーソン・アンドリュース 絵/ルイス・スロボドキン 訳/小宮由 岩波書店
『ハリー・ポッター』シリーズ 作/J.K.ローリング 訳/松岡佑子 静山社
『コンチキ号漂流記』著/トール・ハイエルダール 訳/神宮 輝夫 偕成社文庫
取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。